日本エネルギー会議

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どこの世界の話か

避難区域の復興を考えるのに参考になると思い、「なぜローカル経済から日本は甦るのか」(冨山和彦著 PHP新書)を読んでいたら、おもしろい話が出てきた。

地方の金融機関はだめな企業の退出と集約化を促すためには、金融庁の金融機関の検査基準の見直しをすべきだというのだ。
従来の金融検査では、たとえ事業収支が赤字でも融資先の貸借対照表がプラスであれば不良債権ではないと判断されていた。決算は黒字で資産内容が良い企業があるとしよう。この企業が現在の好業績を確立したのは女将さんが立派だったからだ。すでに80才を過ぎていて、最近は体調も思わしくない。どんなにひいき目に見ても、息子さんは後継者にふさわしい人物とは思えない。現場も乱れ始めた。この企業はいままでの検査基準では、正常債権に分類される。これを、要注意債権と見るような金融検査に変えるのだ。もともとは金融機関もそうやってお金を貸していた時代があった。「人を見て貸せ」「現場を見て貸せ」昔の金融マンはそうやって教えられていた。

しかし、不動産価格が右肩あがりで急騰し始めてからは、「担保を見て貸せ」になった。人や現場を見て貸すには目利きが必要でリスク管理も難しい。担保依存にすれば、システマティクな融資が可能になり、貸出が伸びやすかった。今の銀行の貸出基準は、ほとんどが金融検査マニュアル、さらにはその背景にある金融行政の反映だ。そう考えると、この三十年間にわたり本来的な与信機能が失われてきたと言える。

思わず、長い引用をしてしまったが、「銀行」をかつての「電力会社」、「金融庁」をかつての「原子力規制当局」と考えてみてはどうか。机の上に何メートルにもなるファイルを並べ、検査をする側も受ける側も、多くの時間を誤字脱字とハンコ漏れ探しに費やしてきた官庁検査。社内監査だけでなく、WANO(世界原子力発電事業者協会)の相互査察も盛んに実施され、多くの時間と労力が投じられてきた。それなのに福島第一原発の事故が起きてしまった。証拠書類を作る能力ではなく、もっと設備に関する深い理解や肝心の現場対応力を問うような検査、監査のあり方、原子力規制行政そのものを変えなければ、ある日突然、業界もろとも奈落の底に落ちる。ローカル経済の話はどこか別の世界の話とは思っていられない。

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