日本エネルギー会議

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指摘は的を得ているか(2)

国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第一原発事故を総括し、加盟国に配布した最終報告書の全容が24日判明したというニュースが共同通信で流れた。警告があったにもかかわらず大津波に対する備えを怠った東京電力とそれを許した規制当局の体質の問題についてIAEAは報告書では踏み込んでいない。その結果、IAEAの指摘に基づく提案を実行したとしても、原発を運営する組織とそれを監督する組織の体質を変えなければ、再び福島第一原発のような過酷事故の発生を根本から防ぐことは出来ない。

IAEAがそこまで踏み込まなかった理由はいくつか考えられる。一つはあくまで科学技術的な視点で事故を捉えたことである。しかし、報告書で福島第一原発の事故の背景として、当事者たちが、「原発は安全との思い込みがあった」としているところを見ると、彼らは日本の原子力界の組織体質についていささか疎いのではないかと思われる。そのことを裏付けるような体験をしたことがあるので紹介したい。

2007年6月、ウィーンのIAEA本部で開かれたNKM(原子力におけるナレッジマネージメント)の会議で、我が国におけるNKMの状況報告を行う機会があった。日本特有のメンテナンス分野における多層構造の請負体制がNKMに与える影響などについて述べたが、その中で日本の原発の稼働率が低い原因として大地震による長期停止以外に、事故隠しなど不祥事による長期停止が影響していることをデータで示した。発表が終了して質疑となったが、スロバキアの委員から「日本では、何故不祥事が多いのか。それをどのように減らすのか」という質問を受けた。

私の答は「日本において、電力会社の職員は組織を守ることを第一に考えるので、不都合な情報を外に出すことを躊躇する傾向があるからだと思う」であった。この質問を受けて、私はアメリカのような競争社会をはじめとする諸外国に比べて、地域独占の長い歴史を持ち、監督官庁とも一心同体の感覚を持つ日本の電力会社の組織体質はかなり違うものだと再認識した。

私は自分の英語力の限界も感じつつ、次のような回答の付け足しをした。
「不祥事をどのように減らすのかはとてつもない難問。もし、IAEAがこの解決策を見つけることが出来たなら、IAEAはすぐに、もう1つのノーベル賞を獲得するだろう」(この会議の前、IAEAは核疑惑に対する執拗な査察でエルバラダイ事務局長が代表でノーベル賞を貰っていた)

会場は笑いにつつまれ、私は無事発表を終え降壇することが出来た。
三省堂国語辞典では、「指摘は的を得ているか」は誤用とされ、世間ではそう思っていたが、最近になって昔から使われていた正しい用法であることが明らかになった。いずれの世界でも権威の影響は大きいことを示す例だ。IAEAが今回の福島第一原発の事故の総括で、組織の体質問題まで踏み込まなかったことは残念な気がする。

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