日本エネルギー会議

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原子力発電の地位

国は今夏も昨年同様に3年連続で具体的な数字目標付きの電力使用制限令の発令をしないことになった。ここ10年間、経済成長率とは無関係にエネルギー需要は下がる傾向にある。電力消費でみても明らかに弾性値がマイナスだ。この背景には、省エネ、人口減少、工場の海外移転、電力料金の値上りがある。

政府は今月2日に2030年度に温室効果ガス排出量を13年度比で26%削減する温暖化対策目標を決めたが、その前提は徹底した省エネだ。年1.7%の経済成長を続けながら15年後のエネルギー消費量を13%減らし、電力需要も17%減らす目標とした。

電力の完全自由化を前に、新電力は600社を数え、実際に電力会社から奪ったシェアも無視出来ないものになりつつある。東京電力と中部電力が火力発電で手を組み、携帯電話会社やガス会社と電力会社が提携して個人顧客の囲い込みをしようとしている。国内電力市場はパイが少なくなりつつあるのに、その争奪を多くの企業がやろうとしている構図だ。

メガソーラー開発は一段落し、これから風力発電やバイオマスが伸びそうだ。再生可能エネルギーの発電能力は不安定とはいえ着実に最大電力を増やして、各電力会社のエリアの最小電力需要を超えようとしている。再生可能エネルギーに力をいれているカリフォルニア州では、蓄電池の設置を電力会社に義務付け、日本でも東北電力などが変電所に蓄電池を導入するテストをしている。蓄電池の価格はソーラーパネル同様着実に下がる傾向にあり、再生可能エネルギーに蓄電池を併設することで、系統接続量を増やす挑戦が続きそうだ。

こうしてかつてない新しい動きが次々と出ている最中、政府は今月に入って2030年度の電源構成案を決めた。古い原発の稼働延長を前提に原子力の比率は20~22%とし、再生可能エネルギーは22~24%とする。原子力は安価、安定ということでベースロード電源に位置づけられた。原子力は新規制基準により安全性を増し、運転中の二酸化炭素排出もなく、エネルギー安全保障の面でも優れていることが評価された。

しかし、原子力の地位が脅かされる可能性もある。第一にコストだ。新規制基準は新たな知見や開発が行われた場合、それを取り入れることになっている。その適用を受ければ既設の原発でも追加工事が必要となり、発電コストが上がる。今回改造改良に投資をして安全審査を通過した原発は、その投資分の回収が必要なので途中で廃炉にするわけにはいかない。さらなる追加投資も応じざるを得なくなる。ポーカーの賭けのように途中で降りられなくなり、ズルズルと高コストになる恐れがある。大改造による長期停止も痛い。これに対して火力は高効率化が進み、ソーラーバネルや蓄電池は技術進歩や大量生産によるコストダウンがまだまだ期待出来る。皮肉なことに原子力開発の勢いのある中国、インド、途上国で原発が増えることにより、化石燃料の価格上昇に歯止めがかかる効果が出てくる。これはかつて電力会社が主張してきたことであり、火力発電が多い日本には朗報だ。逆にウラン価格が高騰すれば、国内の原子力発電のコストを引き上げる可能性がある。

再生可能エネルギーについては電源構成の検討では低めに抑えられた割合となっているが、まだまだ開発途上の技術であり潜在能力は大きなものがある。忘れてはならないのが、ソーラーや風力は燃料費がタダであることだ。いくら原発の燃料費が少ないといっても、タダにはかなわない。それに海外から燃料を運んでくる必要がなく、エネルギー安全保障という点でも、国際収支という面でも理想的な電源である。最大の欠点である出力の不安定さも蓄電池のコストダウンや電力網の整備によってカバーされるとすれば、ほとんど欠点のない電源となる。問題はそれがどの程度のスピードで行われるかだ。
 原子力業界やこれを支援する経産省は今回の電源構成案が通ったことで、一様に安堵している。これで廃炉分のリプレイスも見えたという声も聞こえるが、原子力のベースロード電源としての地位はそれほど磐石なものではない。原発の維持に執着した電力会社がコスト増に耐えられなくなり国の支援を受けるようになれば、その地位は揺らぎ始める。

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