日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(2)

このシリーズの題名を「巨大組織は何故大事故を起こすのか」とした。主語を東京電力にせず巨大組織とした理由は、電力業界以外にも大事故を起こす可能性のある業界があり、そこにも今回の事故と共通した問題点が存在すると考えたからだ。他の業界とは航空、鉄道、化学、薬品・バイオ、石油、宇宙開発、医療、情報通信などの業界で、大量破壊兵器を持つ軍隊もだ。

「原発推進者の無念」(平凡社新書)の出版に際して編集者に電力会社、原子力界の体質が事故の遠因だと話したら「それはどの業界にもある話」と言われた。また、本の中で太平洋戦争中の日本軍にも行動様式が似ていると書いたが、これを読んだ多くの方が共感を示された。今回の福島第
一原発の事故の原因を解明し対策が打ち出せれば、それはほぼ他の大組織にも当てはまるだろう。

巨大組織は必ず大事故を起こすかといえば、日本の新幹線を運用するJRはどうなのだという疑問も起きる。だが、いかに新幹線でも巨大な直下型地震で高架橋が崩落すれば、一度に千人の犠牲者を伴う大事故は不可避だろう。あるいはハッカーが新幹線の管理システムに入り込み、制御システムを狂わせれば時速300キロの新幹線による正面衝突事故もありうる。

巨大組織でないと運営できない巨大科学技術システムそのものが、大事故を起こすポテンシャルを持っているということだ。市電は路線、乗客数が少なく、速度も遅いので、事故を起こしても何百人もの犠牲者や何千人もの避難者を出す大事故とはならない。その元をたどれば、人間が筋肉と五感で操作出来る道具から進歩を遂げて、とてつもないパワーを持ったシステムを造ったときから、事故の大きなポテンシャルを抱えたということだ。この認識は次のように原子力業界内部でも早くから認識されていた。

日本の原子力の総本山ともいえる日本原産会議の初代事務局長であった橋本清之助(1894年 -1981年 日本の政治運動家。元翼賛政治体制協議会事務局長)は、黎明期の日本の原子力産業界において隠然たる力を発揮した人物として知られる。その一方で、「われわれ原子力関係者は社会とファウスト的契約を結んだ。すなわち、われわれは社会に原子力という豊富なエネルギー源を与え、それと引きかえに、これが制御されないときに、恐るべき災害を招くという潜在的副作用を与えたのである」との言葉を残したと伝えられている。
(つづく)

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