日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(3)

システム巨大化の理由は「規模の利益追求」

産業革命以来、科学技術を活用したシステムはどんどん巨大化した。その原因は企業間あるいは国家間での競争に打ち勝つための経済性向上にある。システムを大型化することでアウトプットを増大し、単位あたりのコストを下げる。このことで経済性を高めることが可能だ。近代はあらゆる面で規模の利益を追求した時代とも言えるのであり、交易に使う船舶が大型化したのは良い例だ。

発電設備の場合、アウトプットである電気出力を決める鍵は原子炉の熱出力だ。軽水炉は開発当初、原子力潜水艦用に設計されたが、陸上で発電炉となった後は、出力増大のため炉心に装荷する燃料が増えて発生する蒸気が増え、タービン翼も大きくなった。これにより運転に携わる要員やメンテナンス費用も出力の増大ほどには増やさずに発電単価を下げることが可能となった。出力増大は経済の高度成長に伴う旺盛な需要、電気料金の安定化、値下げという要求にも応えるためでもあった。

我が国の原発の場合、なによりも断層問題、人口密度の問題から建設地点を見つけることが難しく、ようやく手に入れた敷地を最大源有効に利用することを重視した。その結果、建設にあたってはその時代に最も大きな出力にすることが通例である。大間原発はフルМОXの新型炉であるが、いきなり138.3万キロワットと最大級の出力だ。

だが、大出力にしたことは運転管理上のプレッシャーも発生させる。1基100万キロの原発ともなれば、突然の故障による停止は電力供給に与える影響がとてつもなく大きい。いかなる場合にも電力の安定供給をすることが唯一最大の責務となっている電力会社としては、いつ原発が停まっても消費地を停電させないようにバックアップ電源として水力や火力を準備しなくてはならない。また、収支に与える影響も大きいので、大型原発を1日でも1時間でも長く運転したい。安全最優先とは言うものの、電力会社の経営にとっては原発を停止させるかどうかは大きな判断にならざるをえない。

福島第一原発の事故以前の10年間、日本の原発は欧米、韓国などトップクラス国の原発稼働率に10から20ポイントも水を開けられており、これに追いつくことが関係者の共通の悲願であった。低稼働率は大地震の発生、規制当局の怠慢、一連の不祥事などが原因だったが、これ以上稼働率を下げる長期停止だけはなんとか避けたいというのが東京電力のみならず原発関係者に共通した想いであった。

停めたくないという想いは、小さなトラブル発生が報告された時に原発の幹部に特に強くなる。発生を電力会社の収支には関心がない官庁や自治体に告げれば、停止するよう求められる。幹部が真っ先にやることはこのトラブルが官庁に報告すべき対象になるかどうかを原子炉等規制法の施行令や前例にあたることだ。そこで明確に決められている場合は、すぐに報告することが後々面倒なことにならないために大切なことだが、その解釈が微妙な場合は本社との相談になる。この場合、会社の需給状況と原発の出力の兼ね合いが気になるのは当然だ。停止しなくてはならない時に頭に浮かぶのは、連続運転記録、今年の稼働率、予定されている定期検査がいつから始まるか(近ければ停止しても、定期検査に入っても体制がある程度整っているから問題がないが、まだ遠ければすぐに手当しなくてはならない)。失われる電力は停止期間に出力を掛けたものなので、大出力の原発の停止は会社の収支に与える影響が大である。

トラブル発生で停止するかどうか原発の幹部が痺れる判断をする原発。まして津波の研究者が1000年前に大津波に襲われた跡が見つかったというだけで、直ぐに停止して津波対策をすることはなかなか考えにくい。ただし、移動式の非常用電源を準備するなど簡単で費用もあまりかからない対策をとりあえずこっそりとやっておくという知恵が何故出なかったという疑問は残る。15メートルもの大津波が来たらそのくらいやっておいても意味はないと考えたのかもしれない。あるいはそのような提言は組織内で権限のある者に一蹴されたのかもしれない。
(つづく)

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