日本エネルギー会議

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住民の選択

富岡町住民意向調査結果(速報版)を眺めながらこの結果の意味するところは何かを考えている。この調査は復興庁、福島県、富岡町が共同で昨年夏に行ったものだ。富岡町の人口は1万5千人。調査対象は7775世帯。回答率51.2パーセント。だが、その基本属性を見て驚いた。なんと一番たくさん回答した住民は70歳以上で全体の28.1パーセント。二番目に多いのが60歳代で24.3バーセントなのだ。50歳代、40歳代は10パーセント台。30歳代、20歳以下にいたっては一桁だ。高齢化社会といっても平成21年の統計で、富岡町には生産年齢人口(15~64歳)が63.7パーセントもいたはずだ。
若い人たちが調査に関心がなかったにせよ、この調査結果をもって住民の全体の意向と捉えることは出来ない。高齢者の意向が大きく表現されているとみるべきだ。

回答者に高齢者が多いことは、各質問項目の回答にも現れている。避難先は「いわき市」が1位で36.8パーセント。現在の住居形態は「応急仮設住宅」が1位で35.8パーセント、職業は「無職で現在職を探していない」が1位で35.7パーセント。ちなみに震災前の住居は一戸建ての持ち家が71.2パーセントと圧倒的である。

建設中の復興公営住宅への入居を「希望しない」が全体で54.7パーセント。いずれの年代でも50パーセントを超え、「希望する」の20パーセントを大きく上回っている。これは一戸建ての持ち家であったために、東電の賠償によって一戸建ての住宅の建設が可能であることを意味している。入居を「希望する」人も条件として「高齢者向けの見回り」「健康相談員の設置」をあげているので、高齢者だということがわかる。

帰還の意向を聞いたところ、「戻らないと決めている」が49.4パーセント。「戻りたいと考えている」は11.9パーセントに過ぎない。これが今から2年後に区域指定解除により帰還を促進しようとしている町の実態だ。ただ、「現時点では判断がつかない」としている住民が30.7パーセントいるので、この人たちに期待するしかない。

何故、このように「戻らないと決めている」が多いのか。それは「戻りたい」と考えている住民が条件としてあげている「医療・介護福祉施設の再開や新設」などについて実現が難しいと思っているからだ。「戻らないと決めている」人たちはその理由に「医療環境に不安があるから」を一番にあげている。

そのほかに今後の生活に関わるものとして「戻らないと決めている」理由には「帰還まで時間がかかるから」をあげている。高齢者にはもう残された時間がなく、それを考えるとこれからさらに何年も待ってはいられないとの判断が見えてくる。避難してから、親戚、友人、知人の訃報に数多く接し、また自分自身も5歳年を取り、身体の不調も感じているから、なおさら帰還まで時間がかかる選択は出来ないのだろう。

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