日本エネルギー会議

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原発の安全確保に向けて何をすべきか

(この原稿は8月6日付けでご寄稿頂きました。)
川内原発の再稼働が秒読み段階になり、メディアは再び原発の安全問題を取り上げはじめた。ほとんどの論調は「リスクはゼロにならない。重要なのは重大事故の発生確率を最小化し、もし事故が起きた際の被害を最小限に食い止めることが重要だ」というもの。

ここで抜けているのは、重大事故の発生確率を最小化することに加え、いつ発生するかについて予測することだ。どのような条件で重大事故が発生しやすいかを知ることと言ってもよい。過酷事故は百万年に一回と言っても、「その百万年に一回が明日起きたらどうするのか」という素朴な質問に我々は答える義務がある。大地震や火山の噴火の予知を研究する学者もいる一方、隕石が都市を直撃するのが何時かについて、小惑星の軌道や宇宙空間の浮遊物の探査が行われており、いつ巨大隕石が落下するのかを予測するのはまったく不可能というわけでもないようだ。古典的な安全理論「ハインリッヒの法則」でも、重大事故の背景には複数の普通の事故や大量のヒヤリハットの存在があるとされている。突然重大事故というのはあまりないようだ。過酷事故そのものがいつ起きるか予測することは困難であるが、その誘因となるものがどのようなもので、何時それが発生するかを知る努力がなされるべきだ。

次に、「事故が起きた際の被害を最小限に食い止めること」についても、非常用電源車や水源を準備したり、避難ルートの確保をしたりとさまざまなことが行われている。それはそれで必要なことではあるが、ありとあらゆる可能性について対応出来るかといえば無理である。それではどうすればよいのか。答えはケイパビリティー(Capability)を養うことだ。辞書では「力,才能,手腕」とあるが、ここでは準備が出来ていなくても、とっさの判断で行動する、驚くほどのよいアイデアを出し、見事にやってみせる力という意味で使いたい。

福島第一原発の事故でも、全電源喪失で計器が全部スケールダウンしてしまったが、一所員の機転で駐車場のマイカーのバッテリーを外してそれを何台も直列にして使うことを思いつきすぐに実行した。すばらしいケイパビリティーだ。すぐに助けにいけない宇宙飛行士にも要求される能力であるし、大相撲の白鵬は相手の出方に直ちに対応する優れたケイパビリティーの持ち主だ。

これを養うにはシナリオをなぞる訓練をするのではなく、シナリオなしの訓練や出題者によるアドリブ的な課題付加が必要となる。以前JR東日本の事故訓練で常磐線の駅でけが人を運ぶ担架を係員が取りにいくと、定位置にあるはずの担架が隠してあった。係員はとっさにドアを外して担架代わりにしてけが人を搬送していた。フランスの原発技術者の訓練では、わざと誤ったデータを与えて、その数値が偽数値であると気づくかどうかのテストをやっていた。NASAのように後方支援部隊に対しても同じような訓練が有効だ。

頭の回転も大事だが、いざ事故対応となると体力、気力、胆力も大切。それらもケイパビリティーの一つと考えてもよい。そのために一日を超す長期訓練体力増強もやるべきだ。事前に想定しきれない部分、想定できても対策準備が間に合わない部分に即時対処出来るケイパビリティを原発関係者に養うことがハードの安全対策以上に必要だと思う。

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