日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(11)

組織の置かれた立場や社風による経営判断の違い

電力会社の共同組織であり、東京電力の子会社であった日本原子力発電(原電)の東海第二原発が、緊急の津波対策を行っていたため、あの大津波による過酷事故を辛うじて免れた。どのようにして原電の経営陣は津波対策を実行するという決断をしたのか、その理由を考えることによって、東京電力のナンバーワンの地位がいかに経営の自由を奪ってしまったかをさらによく理解出来るはずだ。

東京電力が電力業界のガリバーであったのに対して、小規模の原電は東京電力の実質子会社でありながら、組織として東京電力とは違う側面を持っていた。まず、東京電力が原子力以外に火力、水力の電源を有し、大規模な送配電部門を持つ会社であるのに対して、原電は原子力専業の発電会社で茨城県の東海原発と福井県の敦賀原発合計4基を運営し4電力会社に売電している。それだけ原子力発電に全社を挙げて取り組んでいる。
売上高や設備規模など公表されているデータ以外での両社の違いは、次のようなものがある。それが経営判断に影響したと見るべきだ。

(1)
発電所の基数が東京電力の17基に対して3基(東海原発は廃炉中で、運転中は東海第二の1基のみ)であり、本社と二箇所の現場はほぼ人数が同数。したがって対策も「東海第二」のみであり、本社と現場との関係において現場の意見が通りやすい状況にあった。
(2)
原電は東京電力ほどには政治的な力がなく、地元の茨城県の指示や要望に抵抗する力は弱い。現場は地元自治体の要請に従うことを本社に強く求めざるを得ない。本社としては津波対策にかかる費用や東京電力など他電力に対する影響を心配しただろうが、現場の地元自治体の要望に応えなければ、今後の運用が極めて厳しくなるという強い危機感を共有していた。
(3)
原子力発電のパイオニアとして、会社設立から社内に技術的課題に対しては、上下関係を超えて自由な議論をする社風があり、電力会社の先陣を切って難しいこと、新たなことをやることが会社の使命であるとする考えが根底にあった。対策についてもメーカーやゼネコン任せにせず自らも考える傾向がある。東京電力のように電力界のリーダーというプレッシャーもなく、小回りの効く立場にあった。
(4)
地元の東海村は東海が日本の原子力のメッカであるとの自負があり、当時の村上村長はJCOの被ばく事故以降、原子力施設の安全に対して厳しい姿勢で臨んでいた。茨城県としても、安全に関しては電力会社の説明をそのまま受け入れることは出来ない地元状況となっていた。JCOの被ばく事故のインパクトは茨城県では決定的であった。
(5)
福島の場合と比べ東海は津波の想定が低く、比較的短期間に防潮堤のかさ上げを済ませることが出来た。卸電力であった原電に対する電力料金引き下げ圧力は間接的であり、電力会社に対する基本契約で財政的に守られた存在であった。(設立以来配当をしていない)

巨大組織が国や自治体を操るまでに政治力を持つことや、社内に強大なヒエラルキーを構築することで下部組織からの声が遮断されること、業界で圧倒的な地位を築くことで社員の危機感が薄れること、電力料金引き下げ圧力などが、大事故を起こす経営の判断ミスにつながるのではないか。東京電力と原電の組織体質の比較からそういったことが推測出来る。

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