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帰還困難区域が見捨てられる

中間貯蔵施設用地、売却契約7人のみ 地権者2365人 面積0・1%満たず (産経新聞 2015.8.29)
帰還困難から避難している人たちはこの記事を読んで、「これで帰還困難区域は見捨てられたも同然だ」と感じたに違いない。ここでいう中間貯蔵施設とは福島第一原発の事故に伴う除染で出た汚染土壌などを最長30年間保管する施設だ。環境省が福島県の復興のために、福島県内で発生した汚染土壌などに限って県外の最終処分に搬出するまで汚染土壌などをここに保管するとしている。施設は大熊町、双葉町にまたがり約16平方キロあり、最大2200万立方メートルの汚染土を貯蔵出来る。昨年8月、当時の知事が建設の受け入れを表明し、大熊、双葉両町長も容認した。

最近では旧避難指示区域であった楢葉町で除染が終わり、避難指示を全面解除したとのニュースが流れ、また、富岡町などの避難解除準備区域や居住制限区域では再来年春の解除を目指して除染が進み、同町の役場近くに国際廃炉研修施設の建設が決まったなど、復興への足取りが順調であるかのごとき情報がもっぱら伝えられている。

しかし、全体の状況はそのようなものではない。使用済み燃料の処理処分の問題に見通しのないままの原発の2年ぶりの原発再稼働が行われたように、除染により発生した汚染土壌などについても最終処分場はもとより中間貯蔵施設の建設すら実施の見通しがたたないまま、除染作業やインフラの復旧作業が行われている。解除になった地域へ戻る住民にとって汚染土壌は邪魔で目障りなものでしかない。環境省はそれらを中間貯蔵に搬入する前に、帰還困難区域にとりあえず集約しようとしているが、そのスケジュールは冒頭で紹介したニュースのように大幅に遅れようとしている。

結局、帰還困難区域は除染により発生する放射性のゴミの広大な集積場になろうとしているのだ。住民対象のアンケート調査によれば帰還困難区域に家がある人の場合、帰還を希望するのは現在1割程度。すでに不動産の賠償はほぼ終了し、避難先などの住宅取得も進んでいる。精神的損害賠償も事故から10年分まとめて先払いされている。住民は完全に帰還を諦めるはずで、不満は出ないだろうと国は読んでいるのかもしれない。中間貯蔵建設用地だけでなく、双葉郡の富岡町、大熊町、双葉町、浪江町にまたがる広大な帰還困難区域全体が完全に見捨てられそうだが、それでは約束が違う。

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