日本エネルギー会議

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廃炉計画はどこまで達成出来るのか

事故を起こした福島第一原発、運転終了した浜岡原発などの廃炉計画が進んでいるが、果たして廃炉は計画通りに進むのか大いに疑問だ。福島第一原発では高い放射線のために原子炉に近づけないなど技術的困難さに注目が集まっているが、無事に運転を終了した原発の廃炉計画も絵に描いた餅になる可能性が高い。そう考えざるを得ないのは次のような理由だ。
 
(1)放射性廃棄物の処分問題
使用済み燃料を処理したあとに出るガラス固化体にした高レベル放射性廃棄物(いわゆる核のゴミ)の処分場とは別に、原発廃炉で今後大量に出る放射性廃棄物の処分場を確保しなくてはならないが、どの原発でも現在のところまったく見通しが立っていない。このため、既に廃炉工程がある程度まで進んだ日本原子力発電の東海原発では、これ以上放射線レベルの高い機器を含む設備の解体に手をつけるわけにもいかず、廃炉計画は大幅に遅れることで見直しをされた。最近、最もレベルの低い放射性廃棄物(L3)について東海原発の構内に埋設することの許可申請が日本原子力発電より原子力規制委員会に提出され、安全協定に基づいて地元自治体に通知されたが、さらに放射線の高いレベルの放射性廃棄物(L1,L2)の処分先についてはいまだに見通しがたっていない。東海以外の原発についてもこれと同じ問題が立ちはだかることが予想される。

(2)廃炉引当金不足の問題
廃炉引当金は廃炉工事の費用分が中心で、放射性廃棄物の処分費用が十分に入っていない。また、計画がさまざまな理由で遅れた場合、追加費用が発生する。解体したコンクリートや鉄材を産業廃棄物にするか放射性廃棄物にするかの裾きりが、我が国の場合、国際的に見ても大変厳しく決められているため、もともと費用がかかるようになっている。電力自由化を目前にして、電力各社とも収支が厳しくなる状況下で果たして廃炉のための十分な資金手当が出来るか疑問だ。 
ブルームバーグによれば、ドイツの主要な電力会社は、原発解体などに必要な資金の引き当ての課題に直面している。そのコストは電力業界の昨年末の試算で380億ユーロ(約5兆円)を超える。これが判って独電力会社上位1、2位のエーオンとRWEの株価は急落した。
廃炉事業は電力会社にとって何ら収益源とはならず、料金値下げ競争の際の足かせになる可能性がある。原発を持たない新電力にも廃炉費用の負担をさせようとすれば、大きな抵抗があることが予想される。
  
(3)廃炉にあたる人材不足の問題
電力会社のなかで、実際に商業炉の廃炉をした経験のあるのは日本原子力発電だけであり、他の電力会社は初めてのことである。まずは、人材の育成が必要となるが、新基準による既存炉の再稼働もしなくてはならず、電力会社の原子力部門の人材はいずれも逼迫した状況が続く。そのため、新たに原子力部門に人を採用し育成するとともに、廃炉した原発の運転員(一基当たり数十人)をいかに廃炉に活用するかなどの課題がある。

(4)使用済み燃料処理処分の問題
廃炉で出る使用済み燃料は青森県六ケ所村の日本原燃に送られ処理することになっているが、廃炉が始まれば全国各地で一度に大量の使用済み燃料が発生する。それらを搬入しようにも六ヶ所村には十分な置き場がない。各原発のサイトなどに乾式のキャスクに入れて仮貯蔵するための施設を確保しなくてはならないが、その計画はまだ明らかになっていない。

このような問題を抱えたまま、国は廃炉を行っている東海原発、浜岡原発1号機、2号機や福島第一原発の廃炉計画を認可している。それらの廃炉はこれから本格化するが、先々計画の見直しは必至だ。先に述べたように東海原発の廃炉作業は事実上ストップしている。

また、国と東京電力は今年6月に福島第一原発の廃炉に関する工程表を2年ぶりに改定し、1―3号機の核燃料プールから燃料を取り出す作業を2、3年遅らせて2017年度に開始することにするとともに、原子炉格納容器内で溶け落ちた燃料デブリの回収作業は2021年に始めるとした。 

日本原子力発電の敦賀原発1号機など5基の原発が、今後、廃止措置の手順や工程などの実施計画をまとめて国に認可を求める。これらの計画についても国は、さまざまな問題を先送りしたまま認可するのだろうか。

我が国の原発導入の際、国と電力会社は国策の大義名分の下に将来問題となることを棚上や先送りして強引に推進してきたが、再びこれと同じことが繰り返されようとしている。廃炉と聞くと何か安心してしまい注目されなくなるが、原発推進をしてきたことによる大きな課題がすべてここに集中することに気づかなければならない。

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