日本エネルギー会議

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経世済民の男

NHK(ラジオ)の放送開始から90年が経つことを記念して、日本を代表する経済人3名を取り上げたテレビドラマ「経世済民の男」三部作が放送された。第一部では高橋是清、第二部では小林一三、第三部では「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門が描かれ久しぶりに見ごたえのある内容だった。

福沢諭吉の教えを受け、“独立自尊”と「官」より「民」を重んじる精神を持つ松永安左エ門は、敗戦後の日本再生のため戦時中に国策一社となった電力業界を9つの地域独占の民間会社の体制にしようとした。日本発送電を残そうとする政府や財界の抵抗に遭いながら、最後は池田勇人通産大臣を味方に、GHQを相手に交渉し、戦後日本の復興と高度経済成長の礎となる電気事業の分割民営化を成し遂げるというストーリー。松永安左エ門を俳優の吉田鋼太郎が熱演した。

電力関係者であれば誰もがよく知っている内容だったが、事あるごとに干渉してくる官僚を嫌い、国策会社のコスト意識に疑問を持ち、競争によってこそ創意工夫が起きるという信念を、ドラマを見てあらためて再認識出来た。

松永安左衛門翁は1971年6月16日に95歳で亡くなったが、ちょうどその頃、電力会社は原発開発をはじめた。福島第一原発1号機は翁が亡くなる3ヶ月前の3月26日に営業運転を開始している。翁は「原子力などに手を出せば火傷をする」と言ったという。

原発をどこがやるかについては国会での正力、河野の激しい論戦の後に国策として民間でやることとなり、その方針はその後の日本原燃の再処理事業まで及んでいる。そのため世間から原発は民間が推進してきたように思われているが、実は原子力開発計画づくり、アメリカとの核不拡散についての交渉、原発の立地に伴う地元への交付金制度づくり、原子力研究開発のための巨額の国家予算など国が全面的に絡んできた。

省みるに、電力会社が原発を始めたことによって松永安左衛門翁が目指した民営による電力事業は、その魂を抜かれてしまったようだ。その頃から電力会社は電気事業連合会において護送船団方式による談合をするようになり、各社の独自性は急速に失われていった。天下り官僚の受け入れ、巧みな資金のバラまき、その大きな政治力、経済的影響力を持って官僚や立地地域の首長を意のままに操るなど、民間企業としての健全な事業運営から離れてしまい、同時に緊張感もなくなった。もし、松永安左衛門翁が今の電力会社や原発の状況を見たら、何というだろうか。私の見立てでは、アメリカの電力会社や原発の方がビジネスライクで緊張感も持っており、翁の目指したものに近い。

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