日本エネルギー会議

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フォルクスワーゲン

このところ世界はフォルクスワーゲンの排ガス規制逃れ事件でもちきりだ。同社は、試験走行時に排ガス規制に適合するようにモードを切り替えるソフトウエアが同社のディーゼル車の1100万台に搭載されていたことを認めた。EPAは同社に対し、最大180億ドル(約2兆円)の罰金を科すとしている。米下院が公聴会を開催することになり、アメリカでは集団訴訟も起きている。また、刑事捜査に進む可能性もあり、ウィンターコルンCEOが昨日引責辞任した。ミスではない意図的騙しは、超一流企業の「悪質な知能犯罪」として世界中を驚かせている。

このニュースに接して、私はすぐに東京電力の何回かの不祥事の中で起きた偽装事件を思い出した。1992年、福島第一原発1号機の定期検査で、原子炉格納容器の気密性試験を東京電力と日立が相談し偽装工作をしていた。また、福島第一原発第5号機の放射線測定器は、警報を発する濃度を本来より100倍高い数値に設定し、汚染を発見しにくい状態にしていたこともわかった。この偽装行為は「シュラウドなど一連の自主点検記録改ざん以上に悪質」として、規制当局は1年間の運転停止命令を出した。

2007年には柏崎刈羽原発で、緊急時に使う冷却系のポンプのモーターが故障していたが、中央操作室に起動中と表示されるように偽装工作をして検査官を騙すなどの不正が常態化していたことが明らかになった。そのポンプが修理を終えて工場から戻ってきたのが、なんと原子炉起動から二日後だった。これほどの安全軽視もないだろう。
 
我々は、年代は違うがドイツと日本の大企業で起きたそっくりな事件の示唆するところは何かを考えなくてはならない。
・偽装工作の裏に潜む動機は、厳しすぎる規制基準なのか、無理な販売計画や工事計画なのか、企業の名声に合わない技術力のなさなのか。会社のメンツを保てという本社や上司の無言のプレッシャーなのか。多くの人が利益を得られる実害のない偽装はやっても許されると思っているのか。

・偽装が出来てしまった背景は、いとも簡単に騙される検査官の能力不足なのか。担当セクションだけの秘密に出来る仕組みなのか。表示された数字や印鑑を信じての現場軽視なのか。なんでも出来る計装ソフトのマジックなのか。まともな基準達成より技術的にはるかに簡単な偽装工作なのか。

・幕引きはどのようにされるのか。本社の関与度合いが不明なまま、世間を納得させ、メディアの追求を振り切るための経営陣の総退陣は有効なのか。

これらの疑問はいずれ解明されるべきだが、今の時点で気づいたのは、原発における偽装などの不正の防止には罰則が甘すぎたのではないかということだ。フォルクスワーゲンはアメリカをはじめとして世界中で罰金、訴訟、リコール、売れ行き不振で大きな損害を出すはずだ。大幅な人員削減もしなくてはならないだろう。しかるに、日本の電力会社はせいぜい一年間の停止処分で、改修費用や火力発電の焚き増し費用は総括原価によって電力料金が上がるだけで経済的には無傷だった。処分された人数も限られていた。不祥事のあとも、東京電力はプライドは傷ついたかもしれないが、相変わらず売上も利益もナンバーワンの電力会社だ。偽装を手伝った原子炉メーカーも受注を他社に取られた訳でもなかった。

偽装など意図的な不正については、1年ではなく10年間の運転停止あるいは永久停止処分にすべきだろう。手伝った原子炉メーカーも公共事業入札指名を停止すべきだ。さすがにそこまでリスクを負っての不正は出来ないはずだ。この点では永久追放制度のあるスポーツ界の方がまともだ。

さらにそのことで生じた費用は一切当該電力会社の内部留保から出させて、電力料金には載せてはならないことにすべきだ。不正やミスをした分まで消費者や国民が費用を負担するのでは電力会社は役所と変わらないことになる。

規制当局も電力会社に対する処分については常に弱腰に見えるが、それは電力会社に丸投げしている供給責任と自らの監督責任に後ろめたいところがあるからだろう。

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