日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(17)

巨大組織の集団的私物化

巨大組織が大事故を起こしてしまう背景には組織の集団的私物化がある。東京電力などの電力会社や原子炉メーカーの社員は、人々の生活に欠かすことの出来ない電力を全国民に安定的に送り届けるという公益的事業に自分の職業人生を賭けてみようと入社してくる。好処遇や社会的地位、あるいは一生の生活の安定を受験動機とする者もいるが、電力会社を受験しようとする者であれば、同程度かさらに良い処遇や地位を保証する他の業界のトップクラスの企業にも入社が可能である。それにもかかわらず電力会社などを目指す若者は「電力供給を通じて世の中の役に立ちたい」という思いがより強い。これは入社試験の面接を何年もやった経験からすれば確かなことだ。

電力会社や原子炉メーカーで原子力部門を希望する者は、公益性志向に加えて原子力エネルギーの素晴らしさに魅せられ、これを人々の生活の維持向上のために役立てたいという考えを持っている。そもそも大学で原子力を専攻した時にすでにその考えをしっかり持った者もいる。入社後は、自分も含めた「原子力を人々のために」という仲間の夢を実現することをずっと心がけている。そのためにも人材を確保し、自分も後輩も安心して働けるように職場環境や労働条件の向上に努めることが必要だと考える。 

そのためには何をするか。会社の経営状況をよくすること、原子力事業を隆盛に導かねばならず、原子力開発路線は破綻させてはならない。入社時の大義は国家の発展、大衆、消費者のためであったが、入社後は自分も含めた同志の夢と希望を叶えることがより身近な目標となってくる。

問題は、これが行き過ぎて大義のためには、専門知識を持っている自分たちが独断専行することも許されるべきだという甚だ自分勝手、唯我独尊の考えに変化することだ。これが次第にエスカレートして、我々には規制当局との癒着、過大な国の財政支援要求、法律抵触なども許させるという傲慢な意識になる恐れがある。特に技術的困難に加えて一般大衆の反対運動に遭うと、反対があるからこそやらねばならないとますます頑なになる。このような苦しい仕事を国の将来のためにやっているからには、自分たちは護られて当然であるという気持ちにもなる。

組織の上層部になれば、強大な経済力をバックにした政治力を使って、先輩の作り上げてくれた仕組みを守っていくことに全力を尽くす。それに従う社員も同じ価値観を持った人々の集団の一員として、一致して現状を守ることに精を出す。何をするにしても自らが属する集団の利益に反することはやってはいけない雰囲気が出来上がる。そのなかで抵抗することは内部に幽閉されるか集団から追放されることを意味するが、外に出れば集団の強大さを思い知るだけだ。こうして巨大組織の集団による「少しも悪気のない」私物化が進み、結果的に大事故、不祥事が発生し巨大組織の崩壊につながっていく。

これらは作家山崎豊子が描く小説の世界のようであるが、現実は外部からはそれがさまざまな障害で見えなくなっており、内部にいる者は感覚が麻痺して見えなくなっている。これが「少しも悪気のない」集団的私物化である。

このシリーズもそろそろ折り返し。これからは、対策をどう考えるかについて書かねばならない。

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