日本エネルギー会議

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不正の温床(1)

旭化成の杭打ちデータ流用などに関連して新事実が次々と明らかになり、業界では「パンドラの箱が開いてしまった」と嘆いている報道されているが、このような不正が今に始まったことではないのは業界内部では常識であり、見て見ぬふりをしてきたということだろう。石川五右衛門の「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」の台詞は現代でも十分通用する。

どの業界でも関係者の本音は「ノーミス、違反ゼロ、不正ゼロはありえない」とした上で「大事にならないようにうまくやっていく」のが大切なこと、今回のように表沙汰になってしまったらひたすら低姿勢を通して嵐の過ぎるのを待つしかないと思っている。役所もそうだが、メディアも日頃から業界を取材していて、いまさら驚いたような対応やメディアの報道ぶりはこれまた噴飯ものだ。

対処療法ではなく根本的治療をしなければならないのは当然だが、それには不正の起きる温床とはどのようなものかを知って、それを少しでも改善するにはどうすれば良いかを考える必要がある。現場の体験をもとに、不正に至る原因をいくつかのパターンで示してみたい。

(不正の裏に資材方の存在)
今回の横浜のマンションの場合、杭が固い地盤まで届いていないのにあたかも届いたように見せた偽装である。杭打ちがうまくいかなかったら杭を打ち直す必要があるが、その杭はすぐには手配出来ないものだった可能性が高い。

建設現場では材料が不足することがしばしばだ。工場で製作したものを取り付けるような場合、失敗すればもう後がない。建設資材や消耗品についても不足すれば、なんとかやりくりをしようと不正をしがちだ。これが致命的な結果になることもある。かつて原発建設現場にいた時に、単管で作った足場が壊れて作業員が転落して重傷を負った事故の原因調査をしたことがある。単管足場は単管をクランプというやはり鉄製の金具で止めて組み立てるものだが、その足場は急遽決まった翌日のコンクリート打設用のものだった。

とび職は命じられて急いで足場の組立をした。単管は足りたがクランプが途中で足りなくなった。翌日のコンクリート打設に間に合わせなくてはならないので、とび職はやむを得ず番線(太い針金)で単管を結束しておいた。単管も鉄製なのできつく結束しても大きな荷重がかかれば当然滑ってしまうので、やってはいけないことだった。翌日、コンクリート打設の作業員が足場場でコンクリート圧送用の重いパイプを取り外し、足場にドスンと置いた瞬間に足場が変形して圧送用パイプとともに作業員は転落したことがわかった。足場の上を走り回る作業で安全帯使用は困難だと思われた。

とび職に何故そのような危険なことをしたのかと詰問すると、「資材方にクランプを要請したがその日のうちに入荷出来なかった。そこで仕方なしに番線を使った。」と答えた。翌日のコンクリート打設は工程上必至だったので折れたようだ。資材方の手配が出来ず、結果的にとび職が不正をすることになった。バッチャープラントからミキサー車で生コンを輸送する場合も、タイミングよく切れ目のない配送が必要で、ここでも資材方が裏方として重要な役割を果たす。

現場の不正は追い込まれてやむを得ずやることがほとんどであり、その裏に資材方の不手際もあリうることを知って置く必要がある。現場の工事方が無理なことを言って資材方が振り回されることもあるが、一般的に事務所にいる資材方の方が立場が上のことが多い。本社の資材方ともなれば絶大な権力を持っている。現場を支えるために質、量、タイミングについて適切な資材調達をしているかについて、事故防止の観点からメスを入れる必要がある。

次回は経理方が予算の査定をやりすぎたケースについて。

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