日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

不正の温床(3)

(不正の裏に多層構造の請負体制の存在)
我が国では産業構造が少数の大企業と大多数の中小企業の組み合わせにより構成されている。特に建設業では伝統的に多層構造と呼ばれるピラミッド型の請負体制が採用されている。問題になっている杭打ちの不正も旭化成建材の社員がやったように報じられていたが、実は下請けの職員が旭化成建材に出向という形で多層構造を隠していたのだ。これは原発の現場でもよく見られる。
 
多層構造の請負体制の長所としては
・必要な時に必要な職種と必要な人数を集められ、規模の小さい企業における安価な労働力を使うことができることと、元請けとなる企業が系列を作り上げることによってその傘下の企業は安定的な受注が期待でき、全体として技術技能の維持、機密保持が可能なことがある。
短所としては
・仕事とともに責任も分散し、管理業務が増加して実際に作業している人が少なくなる。発注者や元請け企業は技術技能を失い、文書や資料が多くなって管理が形式的になる。自らの組織外に対しての指示は徹底しにくい。また、現場に一番近い多層構造の底辺からの情報が途中で止まったり、曲げられたりする。

階層の底辺では企業も人も出入りが多く、技術伝承や蓄積がしにくい。系列企業という集団の中は居心地がよい反面、貸し借り、融通が効く世界であり、甘えの構造になりやすい。そのことから、底辺で不正が行われても上層は見抜けず、逆に上層も絡んでの不正も行われる。上層の指示や意見は絶対的なものにもなりやすい。下層では労働組合もなく、内部告発制度があったとしても機能しにくい。

世の中が不景気になると、景気に左右されにくい電力会社でも世間体を気にして、経営陣から「全体で2割コスト削減」などの号令が発せられる。知識と経験が少ない担当者が仕様書作成にメーカーや工事会社の助けを求めているような状態では、設備や工事の中身についてブラックボックスとなっている。コスト削減の号令がかかれば、発注先に「一律2割コスト削減するように」の指示を出す。その指示はそのまま請負の各階層を降りて行き、結局現場に一番近いところにしわよせされる。そこでは儲けを確保するために人件費や材料費を削らねばならない。拒否すればこれから先の仕事を確保することが難しくなるのは見えている。社員でやっていた部分を臨時雇用の者にやらせるか、安い材料を見つけてくるしかない。ここに不正に手を染めてしまう動機がある。

発注者や元請け企業の経営陣は、社員や発注先の創意工夫を期待したのだろうが、「一律2割削減」の指示はこうして安全を脅かしたり、不正を誘発したりしてしまう。「コスト削減」の指示を出すとともに、どのような工夫をしたのか、不正はなかったのか、安全が損なわれるような手抜きが行われないかを発注者や元請け企業はしっかり監視しなければならない。それこそ安全文化だ。
次回は工期などのプレッシャーについて。
(つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter