日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(21)

シリーズ(6)では巨大組織の置かれた立場がリスク管理にどのように影響するか。そして(7) では原子力開発を国策民営方式にしたことの影響について論じた。国策民営とは国が推進すべき国家事業を民間会社であるが地域独占を許された電力会社が肩代わりすることだ。旧規制当局が通産省内に置かれたことでマッチポンプとなり、電力会社にとって規制当局は不倶戴天の敵ではなくなった。また、総括原価方式による豊富な資金と国の研究費や三法交付金という立地対策費と、法制度の整備も加わり、反対の多い困難な状況でも開発に突進出来るよう環境が整えられた。電力会社の原発建設・運転は常に国という母親の庇護の下にあった。そのために役所と電力会社の緊張感が失われた。コスト削減意欲のなさはもとより、繰り返される事故、過酷事故への備えやバックエンド先送りなどに対して、取引先や金融機関も含め誰も咎めるものはなかった。

こうした状況を踏まえて提案する対策は、第一に原発間に競争の導入。第二に真の第三者的チェック機関の創設。第三に原発を所有する電力会社と政治家・官僚との関係遮断。第四は電力会社株式の所有と議決権の切り離しだ。

(競争の導入)
電力業界は完全自由化が目前に迫っている。原発に関しては既に電事連会長が、原発を継続するのであれば何らかの経済的な配慮が必要であると表明しており、国によってそのような措置が取られる公算が強い。その場合でも、原発間で稼働率、発電コスト、設備事故と労働災害の度数率・強度率、労働災害、平均被ばく線量、放射性物質排出量、発生廃棄物量などについて競争させることは可能である。また、競争の結果を年度ごとと累積に分けて公表することを提案したい。これは既にアメリカで行われ成果を上げている方法である。成績を各項目毎に色分けして国民が理解しやすく表示することも模倣したい。 

実施機関としては原子力安全推進協会が考えられる。従来、比較することさえ嫌がっていた電力・原子力業界の体質改善のために競争が最も有効であると思える。国民や地元住民にも結果を示すことでより、当事者に安全な運営に関する緊張感や発電コスト意識の高まりを期待出来る。

(真の第三者的チェック)
福島第一原発の事故後、原子力規制委員会、原子力規制庁が発足したことにより、規制は抜本的に改善されたとしているが、これはあくまでも国の機関であり原子力の専門集団であることに違いはない。規制も含め原子力行政が適切であるかどうかは、国民の代表である国会があるいは自治体の議会が国、県をチェックするのが本筋であるが、利害関係もあって上手く行っていない。

そこで裁判員裁判のような発想で、原発の恩恵に浴さない一般の人の中からアットランダムに選んだ委員と学術会議の推薦した委員によって構成するチェック機関を創設することを提案したい。委員会には原子力開発にかかわる計画をはじめ、あらゆる事柄についての調査権を与えられるものとし、公募によって集められた一般国民の持つ疑問点、不安に関して、委員と当事者とのやり取りを含め毎年意見書付きの調査報告を発表する役割を担わせる。

(原発を所有する電力会社と政治家・官僚の遮断)
従来、金融機関などを迂回して行われてきた原発を所有する電力会社への政治家や官僚の天下りを一は切禁止することを提案したい。広く行われている自治体の管理職の天下り、地元政治家による紹介採用も禁止する。電力会社は政治資金などの支出をかつての木川田時代のように自粛する。会社に代わって行う役員・役職者の個人的支援も自粛対象とする。

電源三法交付金、核燃料への課税を見直し、原発立地自治体が原発による財政面の恩恵と住民の安全確保のバランスを失わないようにする。地元自治体への寄付も限度額を設け、その都度公表する。

(電力会社株式の所有と議決権の切り離し)
原発を所有する電力会社の株式を利害関係のある法人が持つ場合は、議決権を持たない株式とすることを提案したい。従来、電力会社に出資や融資をして利益を上げてきた金融機関、電力会社と原発の建設や運転に関わる受注によって利益を上げてきた原子炉メーカーや工事会社が大量の電力会社株式を保有し、株主総会で自らの権益を護るために議決権を行使してきた。これがあるために電力の経営は一般企業に比べて緊張感のないものとなっていた。身内の利害関係者による株主総会での議決権の行使は、国策を実施する公益事業に相応しいものとは言えないことから、今後は議決権を与えない形での株式の保有とする。

(つづく)
 

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