日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

巨大組織は何故大事故を起こすのか(24)

本シリーズ(12)においては、巨大組織におけるトップの選び方と経営判断への影響について論じた。そこから導かれる対策を考えるためにシリーズ(12)の内容を振り返りたい。

電力会社、原子炉メーカーにおいて社長はプロパー役員の中から選出される。そして多くの場合、社長が新会長職に就き会長は相談役になる。現在の相談役は特別顧問などになる。電力会社を取り巻く外部環境が大きく変化した時代などにおいては何代かに一人、中興の祖と呼ばれるような傑出した社長が出るが、その人は相談役や顧問で長い間大きな影響力を持つことになる。

取締役会で社長が選任され、その後の株主総会に諮られるがそれは形式的で、実際に次期社長に誰を指名するかを発案するのは現社長だ。電力会社には株主、社員、消費者、地元といったステークホルダーが存在するが、社長はほぼ社内で決めてしまっている。

組織が巨大化し安定すれば自ずと保守化し経営判断は慎重になる。トップになった者には、先輩から引き継いだ既得権などを次の世代にそのまま渡すことが求められる。電力会社の場合、次期社長候補の条件は巨大組織を護っていける管理能力などいくつかあるが、大切なのは従来の会長、社長が採ってきた方針を継続してくれること、自分等の意見をこれからも尊重してくれることだ。これを歴代社長がやると、世代が代わっても従来の経営方針や長期経営計画を頑なに変えない組織となる。これは伝統的な巨大組織にしばしば見られることだが、特に電力会社ではその傾向が強い。原発関連で言えば、交付金制度の維持や地元対策、挫折しそうな核燃料サイクル事業の推進、プルサーマル計画など、たとえ負の遺産であったとしても大きな方向転換は出来ない。

対策を考えるにあたって参考となるのが、日本原子力発電(原電)と電源開発だ。原電の場合は、大株主の電力会社である東京電力か関西電力が副社長あるいは常務クラスを社長として交互に送ってくるため、プロパー社員の最高位は副社長である。同じく電源開発は長い間、監督官庁の天下り官僚が社長になっていた。(近年はプロパー役員より社長が選出されている)私がいた頃、原電の社内の雰囲気は電力会社のそれとは違うと多くの人に言われた。プロパーの役員も社員も4年ごとに外部から新しい社長を迎えて異質の文化に触れて触発されたように思う。就任挨拶では「方針を引き継ぎ云々」と言われるが、考え方や方針がガラッと変わることがしばしばで、独自のカラーを出された人が多かった。

福島第一原発の事故後、東京電力は異業種から会長を迎え、会長になった方も東京電力の社員も大いにカルチャーショックを受けたが、これは東京電力が立ち直るために絶対に必要なことであり、大成功だった。実は事故の前に、東京電力は一色に染め上げられた組織の問題に気づいていたようだ。原子力部門が閉鎖的にならないよう他部門のカルチャーに触れさせる試みとして、福島第一原発の次長に火力部門出身者を任命していた。また、福島第二原発の所長には文系で広報の経験者を当てるという異例の人事も行っていた。

以上のようなことから、トップの選び方の問題の解決策として、電力会社のような巨大組織では会長、社長いずれかは異業種から招くこと、決定に際してはより広く外部の意見を求めるようにすることを提案したい。

電気事業や原子力に関する経験や知識も必要であるが、社会の中で電力会社がどのようにあるべきかをより広い視野で考えて判断出来ることの方が電力会社のトップとして必要なことであり、電力自由化を迎えることを考えればなおさらだ。諸外国の巨大企業のトップの多くが異業種から迎えられており、それを株主も社員も納得しているのを見れば、日本の大企業のトップの選び方がひどく硬直的であることがわかる。ただし、発電所長については、緊急時のことを考えて技術系にこだわることにした方がよさそうである。                                       
(つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter