日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(26)

本シリーズ(14)において巨大組織において監査役や監査部門など内部の監視機能には限界があることを指摘した。対策を考えるにあたって、その内容を振り返ることとする。

1.
監査部門、監査役の役割は、取締役や各部門社員の職務執行を監査すること。法令・定款に反していなければ、たとえ大事故につながる問題があっても看過されやすい。

2.
監査対象とする業務は幅広く、原発の安全性はごく一部に過ぎない。監査対象は過去に対するもので、現在の問題点が将来の大事故などにつながるという観点からではない。法令や社内規定が大事故防止の点で不十分であれば、監査により防げることは期待出来ない。

3.
監査部門の社員や監査役は社長が任命するために、あえて直言せずに任命権者の意思を慮る意識が強い。また、大事故や不祥事の原因を見過ごしたことに対しての責任の取り方が曖昧である。
 
4.
監査役の人数、監査部門の人数は相対的に少ない。このため業務部門に対抗して調査指摘する力が不足している。また、各部門の生の情報が早く十分に届かない。
  
5.
原子炉主任技術者は、所長に次ぐ権限を持つ副所長、次長クラスから選任するため、ライン業務で多忙により課せられている主任者業務を果たしきれない。また立場的に所長や本店幹部に進言し辛い立場に置かれている。
 
6.
労使協調路線の労働組合は労使で手分けをして外部に安全である旨の説明をしてきた。社内の内部告発制度は労働組合の機能と競合する。労働組合は子会社や協力会社を含め内部の苦情、不満を吸収し、問題が外に出ないようにしていた。

7.
事故後設置される特別委員会は、役員や特定の部門との繋がりが強い弁護士、大学教授、学識経験者などで構成され、本当の意味での第三者でないことが多い。また、改善策の具体化や監視活動は委員会ではなく会社側に委ねられる。
   
以上を踏まえて次のような提案をしたい。
1.に関して
監査部門、監査役の役割として、過去の業務に関してだけでなく、将来大事故を起こす恐れのある問題を掘り起こすことを所掌事項に明記する。

2.に関して
法令や社内規定が大事故防止の点で不十分であれば、監査において指摘し、社内規定を是正するよう勧告する権限を監査部門に与える。

3.に関して
監査役や監査部門の社員は半数を損保会社、会計事務所、一般製造業など社外から新たに採用する。社内規定で大事故や不祥事の原因を見過ごしたことに対しての責任、処罰を明確にする。

4.に関して
監査役の人数、監査部門の質と量を強化する。またその選任基準を設ける。各部門の生の情報が早く十分に届かない。

5.に関して
原子炉主任技術者は専任とし、十分な時間を与え本来の働きが出来るようにする。社内外の主任者との交流や定期的に研修の機会を設ける。
 
6.に関して
労働組合は自らが大事故や不祥事を防ぐチェック機能を果せるよう組織変革をする。社内の内部告発制度とは別に労働組合として子会社や協力会社も含めた苦情、不満、疑問を整理して会社側に対応を求めることにする。
 
7.に関して
事故後に設置される特別委員会は、役員や特定の部門との繋がりが強い弁護士、大学教授、学識経験者などは構成員としないことにする。また、会社側の行う改善策の具体化や監視活動を特別委員会が監視して、社員、株主、地元住民などのステークホルダーに報告することにする。

(つづく)

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