日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(29)

本シリーズ(17)において電力会社のような巨大組織が大事故を起こしてしまう背景には社員の特別な意識と、目的遂行のための条件確保という手段とも言うべきものが、本来の目的に代わって目的になる、いわゆる手段の目的化があることを指摘した。対策を考えるにあたって、その内容を振り返るとともに、それを踏まえた提言をする。(⇒以下は提言)

(1)
電力会社の原子力部門や原子炉メーカーの社員は、入社した時から国民の生活に必須の電力を原発によって安定的に送り届けるという公益任務を意識している。また、技術系には原子力を専攻した時から原子力エネルギーを人類のために役立てたいという強い思いを持った社員も多い。ここから自らの業務遂行をなによりも崇高な使命と考える傾向が出てくる。そうなると「大義のためには、専門知識を持っている自分たちが独断専行することも許される」という勝手な論理に陥りがちだ。これがエスカレートし規制当局の取り込み、国の財政的支援の引き出し、計画からの少々の逸脱、法令抵触などもやむを得ないことと勝手に判断する。技術的困難に加え、理屈で言っても聞く耳もたぬ反対運動に遭うと、「なおさらやらなくては」と悲壮な決意を固めることになる。戦争中、軍人が国民の財産や有為の人材をすべて戦争遂行のために使ってもよいと思い上がっていたのと似ている。

原発が基準によって他産業の装置や設備と比べて格段に厳しく規制を受けているように、原発を所有する電力会社などの組織は、その運営に関してより厳格なチェックを国民から受けるべきである。そのためには、従来のように推進側の経済産業省が業務監査を行うのではなく、原子力規制委員会のような独立した組織で業務監査を行うようにする必要がある。原発で起こした電気のコストについてもバックエンドまで含めるなど不透明さを払拭する必要がある。また、内部告発制度を請負体制の末端や遠くの外注先まで浸透させ、所管官庁は直ちに情報公開をするようにすべきである。

(2)
原発を安全安定的な主要電源とするためには、必要な人材を確保し、安心して働けるよう職場環境や労働条件を向上することが必要と関係者は考えた。また、原発などの原子力施設を受け入れてくれる地元には十分な恩恵を与えなければならないと考えた。これらはいわば手段であったが、時間の経過とともに前者は高い賃金水準、好処遇、退職後の受け皿の充実した職場を作り上げることとなり、後者は立地自治体を周辺の地域も羨む財政的に豊かな地域となり、雇用、福祉、インフラなどいずれも高いレベルになった。
そうなると、関係者たちはこれを守り、次世代に繋げようとする意識が強くなり、あらゆることに変革を嫌うようになる。内部から原発の安全性に関して異論を唱えるものは押さえ込むか排除するようになった。「寝た子を起こすな」は規制当局まで浸透。既定路線に意義を唱えれば学者も冷や飯。メディアまでも締め上げた。こうしたことを可能にした経済力、政治力の背景には原発の国策民営政策、地域独占、総括原価方式、電源三法交付金制度などがある。

地域独占、総括原価方式であるなら当然、内容の透明化がなくてはならない。交付金についても、負担する納税者に対するしっかりとした説明と基地など他の迷惑施設との公平性が求められる。電力自由化に伴い背景となっていた制度の変革が期待されるが、既得権を守ろうとする動きには十分注意する必要がある。
電気料金の査定は所管官庁だけでなく株主や電気代を支払っている消費者の意見も聞くようにする。賃金水準や処遇はオープンにして社会的に見て妥当か消費者などの納得を得なくてはならない。国策民営という鵺的な地位の利用を制限する必要がある。政治献金や政治活動は昔のように自粛とし、地元や団体などに対する寄付も情報公開を義務付けるべきだ。

このシリーズは次回が最終回に。

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