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原発は地域を潤すか(1)

地元に東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟日報が、 原発は必要か「検証 経済神話」と題する、興味深い特集記事を2月14日から23日まで8回にわたって報じた。その見出しは、柏崎市に原発が来たことで、「人口は増えたのか」「雇用は生まれたのか」「産業に貢献したか」「波及効果はあったか」「再稼働効果はあるのか」「巨額財源は役立ったか」「財政は潤ったのか」「事故が起きたらどうなるか」で、内容は「恩恵は広がらず」「期待外れ」「地域は停滞」など概ね原発の経済効果は安全と同じく神話であったようだと結論づけている。

切り口が社会科学的であることに加え、再稼働を控えての絶好のタイミングでの力の入った企画で、この意欲的な記事が新潟県内でしか読まれないのは残念だ。通信社が中央のニュースを各地方紙に配信するように、地方紙のすぐれた記事を他の地方(例えば他の原発立地を抱えている地方)の読者でも見ることが出来るようにするしくみはないものかと考えてしまう。新聞がネットと連携する時代なのだから、その可能性はあるだろう。

私は現役時代に茨城県の東海原発、福井県の敦賀原発に勤務し、その後福井県の敦賀市や福井市で電力会社の一員として地域対応を経験して、さらに福島第一原発の事故前、約10年にわたって東京電力福島原発のお膝元で立地地域住民としての経験をしている。原発の地域経済や社会に及ぼす影響については常に大きな関心事であり、業界誌にも原発と地域の問題について記事を連載したり、講演をしたりしたこともある。

新潟日報の特集記事を読み、福島県や福井県のいわば第一期の原発建設時代とその後は状況が変わってしまったのか、あるいは地域の歴史や風土、産業構造など地域特性によって原発の経済効果や社会に与える影響は変わるものなのかという疑問が私の中に生じた。私が経験した地域の状況は、地域の個人、企業などが恩恵を受ける際の公平性や、地域の人々や経営者、それに県や町の自主性をなくさせ他力に期待する傾向を強めるという点で問題があったにせよ、明らかに原発の地域経済、社会に対する影響はプラスのものといってよかった。それについても特集記事のように柏崎刈羽原発は、もともと恩恵が少なかったというのならそうした問題も起きようがない。

全国の原発立地地域でメディアがどの程度、この問題について取り上げ、調査分析をした実績があるのか不明だが、それらを是非とも見たいし、新たな調査も必要であると思う。時代、地域によって原発の経済的恩恵がどのように違いがあるのか、その違いは何によって決まってくるのかなど、地域を比較することでいくつかの普遍的なメカニズムが見いだせるかもしれない。

新潟日報は新潟大学の研究者と共同の分析を行っており、地元の行政の元幹部や企業の経営者にも質問をしているが、何故そのような結果になったのかについては十分に説明がついているとは思えず、今後のさらなる取り組みに期待したい。

新潟日報の特集記事は「地域経済を活性化させるためには再稼働が必要」との一般論に対して、事実はそうではないと数字を挙げて反論しており、私が先日書いたエッセイ「怪しい民意」に通じる問題意識を感じる。原発再稼働に対する民意を明らかにする上で、メディアの役割を果たそうとする地方紙の意欲が見て取れる。
特集記事に書かれた内容についての私の見解は次回以降に述べることとする。

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