日本エネルギー会議

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前後賞

福島第一原発の事故にかかる賠償は県民の間に冷たい関係をもたらした。
事故前、浜通りの持ち家率は80パーセントを超えていたのだから、総額で一億円以上の賠償金を得た世帯も決して珍しくはない。支払いを受けるには、あらたに家を買ったときの領収証が必要なので、限度額いっぱいを使おうとするのは当然だ。(領収証は必要だが、登記簿謄本は提出する必要はないという抜け穴があるが、何故そこまで求めないかは不明) そのためか、昨年あたりは、郡山市やいわき市にあるハウスメーカーや住宅設備メーカーの展示場が連日盛況だった。「東電宝くじ」という言葉が囁かれ、豪邸に暮らすバブルな生活をしている避難住民がいるという話は、対象とならなかった県民の間で格好の噂ばなしになった。

自分の家が住めなくなって、それが現金化されたと考えれば、持ち主にとっては当然だが、親から相続したものなど建築後相当な年数を経た物件も、ほぼ新築すると同程度の金額が支払われたことは事実。また、精神的損害の月10万円は5年分どころか先々の分まで支払われたので、大熊町、双葉町などの住民は一人あたり1450万円を一時に手にした。これに対して県内で一番少ない賠償を受けたのは避難区域以外の人で8万円が一度支払われただけ。もちろん家の損害賠償はない。それにも該当しない福島県の南や西の県境に近い地区の住民に対しては、県がかわりに4万円を一度支払っただけだ。

近頃、中間貯蔵施設を造る大熊町、双葉町に対して国から今年の分としてそれぞれ約33億円、約17億円の計50億円(数年に及ぶ両町への国の交付金の総額は150億円にのぼる)を地権者の生活再建支援策である「立地町地域振興交付金」として交付することが決まった。大熊町、双葉町はこの交付金を地権者だけでなく、広く住民一人あたり年に10万円を10年間支給することにした。今後、両町の住民は「東電宝くじ」の前後賞のように、子どもから高齢者まで一人100万円、4人家族であれば400万円を追加で貰え、またもや対象とならない地域の住民の反感を買いそうだ。

支給の条件は使ったことを証明する領収書を出すことで、要は何かに使用したという実績が必要だ。避難住民は支給を受けるために、また金を使うことになる。福島第一原発の事故当時、両町に住民票があった住民だけが対象であるが、すでに帰還を諦めて賠償金であらたに移住先などに家を確保した住民も対象となる。
双葉町は、想定される使い方として
(1)住民の行き来などで要した交通・宿泊費
(2)高齢者の通院などに伴う一定額以上のタクシー料金
(3)福島県産品の購入費
(4)子どもの塾やスポーツ教室の授業料
(5)就業に向けて資格を取るための受講料-
などを挙げている。

住民はこの前後賞でいまさら何をしたらよいのか戸惑っている人もいる。町はこの支給事務のために係を一つ作らねばならないようだ。こうした措置が次々と発せられるため、住民は移住しても住民票を移すことをためらってしまう。

一方、町では住民が移住を決めてしまい、存続の危機にさらされている。帰還する住民、新たな企業等を町内で立ち上げようとする人に対する支援こそ必要だが、今回の交付金はあくまでも避難した元住民への生活支援が目的だということらしい。国はいったい何をしたいのか。県民の間の溝をますます大きくすることになる宝くじの前後賞ではなく、もっと町の再生、存続に資するような税金の使い方をするのが交付金の主旨だろう。町も住民の目を意識してか、広く住民全体に分け前を配るという安易なことをしようとしているが、もつと交付金の主旨に合ったやり方をするべきだ。

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