日本エネルギー会議

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原発は地域を潤すか(3)

[前回までのあらまし]
地元に東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟日報が、 原発は必要か「検証 経済神話」と題する、興味深い特集記事を2月14日から23日まで8回にわたって報じた。特集記事の第1回には、市は原発が来て雇用も所得も増え、これが人口増につながると見込んだが、40年後、柏崎市は新潟県内の他の都市より人口減少が激しく、原発立地による人口増加は神話だったということが書いてある。しかし、福島県浜通りでは明らかに原発誘致による人口増加が見られ福島第一原発の事故直前でもその人口を維持していた。

今回はその違いについて考えてみたい。
人口増加をもたらす、あるいは人口を維持出来る要素はさまざまあるが、原発が立地する地域はもともと僻地で産業は農林水産業が主で人口が少ない所が多い。そこに原発を誘致すれば、建設時の数年間は一日2000~3000人が働く現場が出現する。運転開始後も1基あたり電力会社社員が300人、運転保守を担当する請負企業の社員や下請け作業員が同じく300人の安定した雇用が産まれ、これらはそのまま地域の人口増と考えて良い。年に一回行われる定期検査工事や改造工事などではプラス1000人が働く現場となるが、これは地元ではなく他の地域から来ることが多く、一時的人口増にはなるが、定住はしない。そう考えると、原発が1基ないし2基のサイトではたかだか1000人程度の人口増加でしかない。家電や自動車などの製造工場と違い、原発は運転のために周辺に多くの定住者を必要としない。

福島では第一第二原発あわせて10基があり、さらに広野火力4基も第二原発から南に10キロと近い。これだけの基数があれば、定住者だけでも5000~6000人は必要であり、定期検査工事は年間を通じてこの地域で常時3基程度は行われる。このために定期検査の作業者は常に3000~4000人がいることになり、定期検査の作業者の大半は遠くから来るのではなく、この地域あるいは通勤圏内に居住することが可能となる。
電力会社社員・常駐作業者+定期検査作業員     合計
4000~5000人      + 3000~4000人 = 約7000~9000人
これは図4によってこの区域の原発関係者などが約10000人いることによっても裏付けられている。

図4 福島浜通り地域の原発・火力の従事者数推移

原発・火力の従事者が10000人いることは、夫婦や子どものいる世帯を勘案すれば、人口として20000~30000人を見込める。東京電力の社員は関東地域出身者が多いが、転勤後に地元の女性と結婚するなど福島県浜通り地域に定住するものも多い。また、すでに数十年にわたって地元の高校や高専から採用をしており、地元出身者は年々増加している。

いわき市と南相馬市に南北を挟まれた双葉郡は町村で構成されており、特段に商業施設などがなかった地域にこれだけの人数が増加した影響は大きい。商業施設、公共施設、学校、病院なども増え、これら第三次産業も増え、その比率は第一次産業が1割、第二次産業が三割、第三次産業が6割と、都会なみになっている。商業施設など第三次産業は原発で働く人の家族の働き場ともなっている。この第三次産業には電力会社以外の第三次産業に従事する人が多くいることになり、原発関連の人口増が第三次産業を地域に呼び込み、そこで雇用される人が地域に居住することでさらに人口増の上乗せとなる構造となっている。

福島県浜通りの町はほとんどが原発立地ないし準立地地域であり、電源三法交付金や核燃料税、原発関係者の住民税などにより、財政が豊かであり、図5のようにインフラ整備や行政サービスが行き届いている。これは周囲の町村の人々を惹きつけ、この地域の人口増加に資することになっており、双葉郡周辺からは子育てなら大熊町、介護なら双葉町などと言われている。事実、図6に示すとおり、双葉郡は県内でも人口に占める子どもの割合が高い地域である。また、双葉郡は福島県内でも最も気候が温暖で冬季でも雪がほとんど降らない、さらには地価も安いため人々が定住しやすい。
図5 福島県内の下水道普及率推移

図6 双葉郡8町村の年齢構成

新潟県の柏崎市の場合、7基の原発があり、電力会社社員や構内に常駐する企業で働く3000~4000人は立地地域に定住していると思われる。問題は年間数回行われる定期検査の従事者が定住しているかである。福島県浜通りの原発関係者、特に定期検査工事の従事者は、柏崎刈羽原発の定期検査工事に磐越道を使って長期出張することが多いようだ。この逆はあまり聞かないが、このあたりは定期検査工事関連の企業数や出入りする車両のナンバー確認も含め、さらに両地域の実態調査が必要である。

柏崎市は県内でも中規模の都市であり、原発立地により増加した原発関係者が生活する上での消費に対して、もともとの第三次産業がどの程度拡大出来る余地があったかである。
少し古いデータであるが、表1によれば、全国の原発立地市町村では第一次産業、第二次産業、第三次産業の比率が概ね10%、30%、60%である。福島県浜通りの原発立地町でもその比率であるが、柏崎刈羽原発のある柏崎市は13%、41%、46%となっている。 

表1 原子力発電所立地市町村の産業別就業割合(2005年) 単位:%

出典:国勢調査(2005年)
第三次産業: 電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、卸売・小売業、金融・保険業、不動産業、飲食店,宿泊業、教育,医療,福祉、学習支援業、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、公務。

このようなことから、柏崎市では市の規模の人口があり、原発建設以前から鉱業、建設業、製造業がある程度発展しており、その分、第三次産業の占める地位が低くなっている。他の地域では原発立地による人口増や支出増に応じて第三次産業が発展をして60%の位置を占めたのに対して、柏崎市では原発立地の影響が人口に出にくい状況にあったことが推測される。

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