日本エネルギー会議

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原発は地域を潤すか(4)

今回は雇用問題を取り上げる。
新潟日報の特集記事によれば、「原発が地域に多くの雇用をもたらすと信じている人は少なくないが、柏崎刈羽原発関連のデータからすれば、東電公表の構内作業員数が地元からの雇用を正確に反映していない」としている。地域経済学の岡田知弘京都大学大学院教授は「月単位で構内作業員数が大きく増減する原発に安定的な雇用を生む効果はない。原発は完成すれば、基本的に保守管理に関する雇用しかない」と指摘している。

対して福島原発のある福島県浜通り地方では明らかに人口、収入、雇用などが建設するにつれて増加し、しかも建設が終了してもそれらが維持されている。構内作業員数は月によって大きく変動することは確かであるが、どの立地地域においても原発が存在しなかった時に比べれば、一定の安定した雇用(1基当たり数百人)は発生し、それが持続する。もちろん家電や自動車の生産工場のような千人単位の雇用にはならないが、その安定性は抜群であり、「安定的雇用は生まない」とするのは正しくない。    

地域に従来からあった産業による雇用が維持されていれば、原発の恩恵はプラスとなるが、地域の産業が衰退するなかでは、雇用が従来の産業から原発に移動しただけで終わってしまう。福島県浜通り地方においても地域経済が不況に突入すれば、原発には地元から雇用を求める人が多くなる。 製造業には恩恵がないのは新潟県も福島県も同じ。少なくとも福島県では原発は建設業やサービス業に大いに恩恵がある。

特集記事では、今年1月の柏崎刈羽原発構内作業員数は5600人であったが、そのうち柏崎市在住者は4割の2400人であったとしている。この数字は少なく感じるが、それは今回の調査対象を柏崎市に限ったことによるものではないか。原発から20から30キロ圏内であれば通勤可能であり、柏崎市在住者以外に近隣の自治体在住者がどのくらいいたかを調べれば、2400人より増える可能性がある。福島原発の場合、図7に示すように、作業者の居住地は図当然に立地町村が中心ではあるが、いわき市、南相馬市からの通勤者も多かった。おそらく柏崎刈羽原発でも同様のことが言えるはずだ。
図7 福島第一原子力発電所関連従事者の常住地

福島第二原子力発電所関連従事者の常住地

では、原発が来てどのような雇用が増加するのだろうか。雇用については三つの形がある。第一は長期に安定した雇用、第二は短期的で人数的に山谷の激しい雇用である。第三は第一と第二の雇用によって増えた人口に対するサービス業を中心とした雇用である。

第一の長期安定雇用は電力会社社員、子会社の社員、いわゆる地元企業であるところの構内常駐会社の従業員である。業種としては原発本体や附帯設備の運転、点検、小修理などの他に、消耗品の補充、廃棄物処理業務、ランドリー業務、建屋内の除染を含む清掃業務、庭園維持管理、放射線管理業務、図面などの資料管理業務、広報業務、警備業務、車両運転業務、寮の管理や給食業務などである。各人の職種としては技術職、事務職、現場作業員であり、この中には高齢者や女性の雇用も多く含まれている。この他に運転中の事故トラブルに対応するために、若干ではあるが現場に即応出来るメーカー技術者なども残すこともある。

第二の短期的な雇用は定期検査工事や改造工事に携わる原子炉メーカー、部品メーカー、工事会社とその下請けの従業員である。短期といっても定期検査工事は1基あたり平均3ヶ月程度。その間工事内容によって企業や人の入れ替わりが行われる。その数は1基あたり最大で千人程度である。電力需要の関係から、定期検査は春と秋に多いが、複数号機がある発電所では夏や冬にもかかって行われる。改造工事は定期検査期間に収まるように計画されるが、その期間に終わらない大規模なものもある。「原発は完成すれば、基本的に保守管理に関する雇用しかない」と指摘は、外れてはいなが、まったくそのとおりであるとは言えない。ただし、雇用主からすれば、構内常駐会社とは異なり大半が県外からの技術者、技能者である。また運搬や技能者の補助業務に従事する作業者は大きな人数を必要とし、またごく短期の雇用であるため、地元ではなく広く全国から集められ地域における安定した雇用とは言えない。

第三の雇用は第一と第二の雇用によって増加した定住者やその家族、あるいは出張者などによる需要に対して、主に生活関連の商品販売やサービス供給を行うための商業活動に従事する人の雇用である。地方自治体や病院などによる雇用も入る。これもその地域に従来からある程度の供給能力がある場合は、増員により対応出来るが、ほとんど産業がなく人口も少なかった地域では新たな雇用となり、それも安定的なものとなる。福島県浜通り地域など各地の原発立地自治体において第三次産業従事者が全体の6割を占めているのはそのためである。第二の短期的雇用が増加し、さらに運送業者、出張者など関連する人々の来訪が増えれば、鉄道、バス、タクシー、ガソリンスタンド、旅館ホテル民宿、飲食店、娯楽施設などが潤い、その雇用が増えるとともに維持される。定期検査は毎年繰り返され、発電所に複数号機があれば、それは年間を通しての雇用に繋がると考えて良い。ここにおいても従来からある程度そのような体制がある地域では第三の雇用は全体として目立った雇用増加とはなりにくい。

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