日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

原発は地域を潤すか(5)

今回は原発と地域産業について。
新潟日報の特集記事によれば、「原発が地域に多くの産業を興した形跡はない」とされている。原発建設による特需のあとも発展できるような産業を育てられなかった。自治体は「地元の製造業に原発の定期検査の仕事に参入するよう呼びかけたが、乗ってこなかった」とあり、地元企業側は「原発には冷たくされた」「原発の仕事は手続きが煩雑で、小さな会社には無理」という反応だった。特集記事は、地元の期待に反して、高度な技術と管理が求められる原発は、地域産業の持続的な発展に貢献する存在ではなかったと結論づけている。

私が勤務した経験のある原発では、敦賀市とその周辺、福島浜通り地域でも状況はほとんど同じだ。東海第二原発のある東海村は日立市、ひたちなか市(かつての勝田市)があって日立製作所の工場やその下請け企業がもともと存在し、原発関連の部品を供給していたので例外と考えられる。かつて日本原電敦賀事務所では福井県商工会議所を通して福井県内の製造業に原発産業への参入を呼びかけ、その一環として説明会や敦賀発電所内部の見学会を開催したことがあるが、その結果は思わしくなかった。

原発に部品などを納入する場合、原発の要求する仕様は一般の産業より厳しいもので使った材料に至るまで多くの品質保証証明書を必要とする。しっかりした品質保証の体制がなければ到底対応出来ない。部品のほとんどが原子炉メーカーの系列企業や日本有数の専門企業によって作られていたためにノウハウが開示されない。万一、製品の不具合で事故や停止をした場合、中小企業では損害賠償するだけの資力もない。原発の購入する物品でも汎用品で通用するものもある。例えば重油、軽油など。しかし、これらは漁業補償の絡みで世話になった全漁連などが独占的に供給する権利を主張して原発がこれを受け入れる。そのほかの消耗品は地元の経済団体あるいは政治家が押す地元業者が建設時代から入り込んでその利権を離そうとはしない。よほど独自性のある商品であれば購入してもらえる可能性があるが、そのような物が地元産であることはまずありえない。私の知るかぎりでは、いらなくなった設備を壊した際に発生する放射性廃棄物を入れる鉄の箱を敦賀の鉄工所が製造して敦賀原発に納品し、これが六ヶ所でも採用になったことくらいである。

定期検査工事などに参入するには直接電力会社との契約ではなく、原子炉メーカーあるいは電力の子会社である工事会社などの下に入ってもらうようになる。現場の作業も放射線下であり、人についても工具などについても厳重な放射線管理、汚染管理が必要であり、そのために放射線管理スタッフを自前で揃えるには相当の投資と勉強が必要だ。原発参入が叶えば、利益の多い長期的に安定した商売になることは解っていても、よほどの経営的な余裕がなければ原発に参入するのは二の足を踏むことになる。事故やトラブルの際に人手も含めて、どのくらい迅速に対応出来るかも問題だ。

原発と地域産業について新潟日報の特集記事の「原発が地域に多くの産業を興した形跡はない」という結論はほぼ納得のいくものだが、全国どこの原発でも、地元企業で地元住民を雇用し、しっかり利益を上げて長続きしている分野がある。それは原子炉やタービンのような主要な設備以外の設備のメンテナンスと、構内のサービス業務においてであるが、これについては次回に。 

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter