日本エネルギー会議

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原発は地域を潤すか(7)

原発と地域産業について新潟日報の特集記事の「産業育たず地域は停滞」「巨額財源は役立ったか」「借金と施設維持に苦悩」という見出しは、原発による税収などを活かして原発以外に持続的な産業を作り出すのがいかに難しいかを示している。

これまで6回にわたって原発と地域産業について論じてきたが、原発の設備を構成する製品の製造については品質管理の問題などからどの地域も成功していない。かつて福井県は原発立地の条件に核燃料製造工場を福井港の臨海工業団地につくることを考えたが実現はしなかった。

原発がもたらす巨額の財源をもとに原発とは異なる新たな産業育成をすることも、立地条件からすれば容易ではない。その理由は原発立地の多くが僻地であり、かつ平坦な場所ではないところが多いからだ。工場を建設するにしても流通面から良好な港、高速道路、水の供給などの条件が満たされ、近くから多くの従業員を集められる場所である必要がある。我が国は経済の高度成長期以後、各県がこうした条件を考慮して工業団地を造成して企業誘致しようとしてもなかなか成功しなかったことを考えれば、原発立地地域での企業誘致が出来なかったことは当然であった。こうしたことが、原発立地地域においては、原発運転にかかる地域密着型の常駐作業者と定期検査工事などの作業者による臨時の消費の受け皿としての地域におけるサービス業の発展にとどまった理由であろう。

産業育成に困った自治体は、電源三法交付金、固定資産税、寄付金など原発立地によりもたらされた巨額の資金を、工場型の産業育成より観光産業の育成と住民サービスの充実に使う傾向になった。ところが、観光産業も伝統的な観光地がしのぎを削っており、歴史や文化に裏打ちされた寺社などの文化財や世界文化遺産に登録されるような優れた宝を持っていない場合は、テーマパークのようなものに向かうことになる。しかし、交通や宿泊の利便性や企画の斬新性が求められ、これまた失敗の山を築いていくことになる。ハードはなんとか作れても、ソフトがついていかず、ハードがただのハコになってしまう。スタート一年目にしてすでに計画で見込んだ来客を大きく割り込むケースも見られた。原発に関する理解活動を兼ねて、原発そのものを集客に使おうという試みもあったが、テロ対策の強化などでこれも出来なくなった。

住民サービスの充実は新潟日報が書いているように、道路、上下水道、体育館、野球場、博物館、文化会館、図書館、コミュニティセンターなど、どこでも近隣の自治体が目を剥くような金がかかったものが作られた。福島県においては原発の立地している町村の庁舎は県の平均的な町村の庁舎の5倍もの広さがあるとのデータもある。古くからの住民はこれこそ原発の恩恵と歓迎するが、若い世代には生まれた時からそうであり、何も変わっていない風景と映る。なによりこれらのハコモノはその運営維持に巨額の費用が毎年かかるようになり、そのため借金をしたり次の原発建設を電力会社に促したりするようになるのは新潟日報が指摘しているとおりだ。これらの施設は産業とは呼べない。清掃、点検、光熱費などのほか、多くの職員を雇うわりには利用対象者が少なく費用対効果は低い。

三法交付金が原発建設の初期に集中すること、使途に制限があることもあって、十分な検討のされないままにアイデア倒れの企画や自治体の規模に不似合いなハコモノが作られて資金が浪費されてしまいがちだ。将来についてじっくりと構想を練ることもなく、短期間で巨額の資金を使わねばならないシステムが改められることもなく続いた。特集記事で地元経済界の一人が、「あれだけの金があったのだ。新しい産業を興せればよかった」と悔やんでいることが紹介されていたが無理もない。

原発による豊かな資金は全国の立地県において東西問題、南北問題を引き起こしている。例えば福井県では嶺北と呼ばれる県の北の部分には大きな人口(票と言い換えても良い)の福井市や鯖江市があり、原発のある嶺南と呼ばれる敦賀若狭地域は互いに原発の交付金などの使い方について互いに相手が使い過ぎていると非難し合う南北問題になっている。嶺南の住人から言わせれば実際に原発があって不安を抱えて生活しているのは自分たちなのに県は大票田の嶺北にばかりその金を使っている。嶺北の住人から言わせれば、原発の風評被害は福井ということで自分たちも迷惑するのに、雇用などうまい汁は全部嶺南が吸っていると。福島県においても然り。県の中心である福島市、郡山市のある中通り地域と原発の立ち並ぶ浜通り地域は東西問題を抱え続けてきた。

最後に、もともと工業立地、観光立地に向いていないところで何をすればよかったのかを考えてみたい。県は工業団地などを条件の良い土地で展開して成果をあげるようにすべきであり、原発の地元自治体では無理矢理に第二次産業などを狙わず、その状況に応じた策を考えるべきだ。原発は他の産業と比較すると建物の面積は少なく、自然破壊も最小限で済む。また構内の広い敷地の自然が開発から守られる部分が大きい。立地町村は農林水産業の技術向上や伝統文化を活かすことを考えた方がよい。

原発の近くでは出稼ぎや若者の流出が少なく、伝統芸能、伝統行事、伝統工芸などが守りやすい。電力会社は地元の文化、伝統を守ることにどの企業より熱心であり、祭りでは発電所長が先頭で踊っている。地元の人たちも「夜になると灯りがなく寂しい」とは言うものの、不夜城のようなネオン街が田舎に出現することを願っている人は少なく、昔からの静かな生活を続けたいと願っている人の方が多いのだ。都会の人々が憧れるような田舎が残っている事の方がこれからは貴重だ。それが今後の都会からの移住者呼び込みと観光客誘致につながると考えるべきである。
このシリーズおわり

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