日本エネルギー会議

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対策にかかる時間

日本原電の東海第二原発は、事前に冷却用設備に防護壁を設置するなどの対策を行ったおかげで東日本大震災の大津波によって電源が失われることなく大事故にならずに済んだ。東海第二原発は周辺地域に対してほとんど実害は起こさなかったのであまり話題にならないようだが、その経過をしっかり検証することで、原発の安全対策の実態がどのようなものであるかを知ることが必要だ。 

茨城新聞の報道内容などから推察される県の対策要請から日本原電による対策の実施までの経過は次の通りだ。
1.
日本原電東海第二原発での想定津波は、当初2.35メートルで、2002年に日本原電は4.86メートルに見直していた。
2.
国交省がスマトラ沖地震(2004年12月26日)を契機に、津波対策検討委員会を2005年2月に設置、これまで進めてきたわが国の津波対策の現状と課題について再点検を開始した。2005年3月には第3回で提言を取りまとめて委員会を終了している。委員会には三重県尾鷲市長と岩手県釜石市長が参加しており、津波の原因である地震として、三陸沖と東南海の地震に注目していた。
3.
国土交通省は2005年に提言を都道府県に連絡した。
4.
茨城県庁は、国土交通省の委員会提言を受けて茨城沿岸津波浸水想定検討委員会を2005年12月から2007年1月まで開催し、津波の高さの再評価を行った。
5.
その結果、延宝房総沖地震を想定すると、東海第二原発付近で6~7メートルになるという結果を得たため、日本原電に対し、非常用ディーゼル発電機の冷却水ポンプ周囲の防潮壁をかさ上げするように2007年10月に口頭で要請した。
6.
これを受けて、日本原電は独自に津波の高さを再評価し、最大津波の想定高さを5.72メートルに引き上げ、防潮壁の高さを6.1メートルにかさ上げする工事をすることにした。
7.
日本原電は2009年7月からかさ上げ工事を開始した。
8.
2011年3月11日の東日本大震災当日までに、工事は完成していなかったが、それまでに行ったかさ上げで非常用電源設備の3分の2を守ることができ、原子炉を冷却し続けることが出来た。
9.
国の原子力安全委員会は、2006年9月に「耐震設計審査指針」を改定し(きっかけは2000年10月に起きた鳥取県西部地震)、耐震基準を強化。津波についても「極めてまれだが発生する可能性があると想定される」レベルに備えるよう定めた。
10.
東京電力福島第一原発では2009年から津波による被害の再評価を進めていたが、地震による揺れの対策を優先し、津波対策は後回しにしていた。
福島県庁が国土交通省の委員会提言を受けて何らかの対応した痕跡は今のところ見つかっていない。

以上からわかることは、2005年の国交省が津波対策検討委員会の提言をとりまとめから2007年の茨城県の日本原電に対する要請まで2年かかっている。そこから日本原電が2009年7月の工事着工まで2年かかっている。工事着工から2011年3月の完成まで2年弱かかっている。国交省の提言伝達から6年もかかっていることだ。

日本原電が茨城県の要請が口頭によるものであったにもかかわらず直ちに対応したことに注目したい。文書による要請でなくては受け付けないという硬直した姿勢であれば着工や完成はさらに遅れたはずだ。

このように、対策実施に至る経過を検証すると、「自然災害による事故発生を防止するための対策は大規模工事となり計画づくり、資金確保、施工などで月日がかかること」を認識する必要があることがわかる。また、警告があった場合に、福島第一原発の事故後に各電力会社が採用したような非常用電源車の高台設置など「費用も少なく、素早く出来る事故拡大防止策」をすぐに着手することの大切さも教えている。

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