日本エネルギー会議

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大臣宛の要望書

先月、日本原子力学会シニアネットワークのメンバーなどが除染目標を年5ミリシーベルトに引き上げるよう高木毅復興担当大臣に要望書を提出した。全文はアゴラが運営するGEPR(グローバルエネルギー・ポリシーリサーチ)に掲載されている。http://www.gepr.org/ja/contents/20160523-03/
それを現地の感覚で読むと、いくつか違和感があることを⇒以下で指摘したい。


除染によって福島県の環境放射能は大半の地域で追加被ばく線量が年間1ミリシーベルトを下回るようになった。
⇒除染だけではなく、自然な減衰もかなりあると思うのだが。「除染によって」とすると、除染をやらなければ線量が下がらないという誤解を招く恐れがある。

避難指示が解除された地区でも避難住民の帰還が円滑に進んでいない。その原因は、避難指示解除を考慮しうる現実的な目標線量(ICRP勧告で言う参考レベル)が提示されていないことにあると推察する。
⇒インフラに関する不満や避難が長期間に及んだため、あるいは多額の賠償を得たため移住してしまったなどで帰還が進まないのであり、目標線量が提示されなかったためとは言えない。

従来、避難指示の解除は年間20ミリシーベルトとされていた。このため避難指示解除が出ても住民は疑心暗鬼に囚われた。従って、避難指示解除の条件の目標線量として健康影響上心配する必要がないことが明白な「年間5ミリシーベルト」を提案する。
⇒5年も経って、いまさら5ミリシーベルトと言われてもすぐには頭が切り替わらない。何故最初の解除時にそうしなかったのかと思う。避難している人は5年間を無駄に避難させられた。それはいったい誰のためだったのか。(政治家や役人などがバッシングを避けるため、それとも学者が勇気を持たなかったため?)

年間5ミリシーベルトは、ヨーロッパ諸国、特に花崗岩土壌が多い北欧や東欧諸国の自然放射線による年間被ばく線量とほぼ同等である。この程度の放射線被ばくによって、健康上の問題を引き起こすことが認められないからである。このことで住民は帰還について真剣に考えられるようになろう。
⇒こうした情報は県の広報などで知っている。しかし住民はこの内容を完全には信用していない。母親が子供のために慎重になることは当然だという意見が多い。それなら法律や基準できちんとしろと言いたい。また、20ミリシーベルによる地域区分が賠償の基準になっているので、もしもそれを変えると混乱の原因となる。 

「約5ミリシーベルト」は十分安全側の目標値であるとの関係住民レベルでの認識の共有化を図るため、住民自身の納得感を醸成するための学習の場を積極的かつ戦略的に設ける。上述目安値について、全国広報活動を通じ国民レベルでの認識の拡大共有化をはかる。 
⇒「無用の放射線は出来るだけ浴びない方が良い」という論が解りやすく、住民に深く浸透している。ホルミシス効果の話などはほとんど知られていない。
反対派を中心とした活動、発言、メディアの論調、出版社や本屋の営業戦略に対抗出来るだけのことやれるか。彼らをテレビ討論会や一般紙などでの論戦に引っ張り出すことが出来るのか。

避難住民の多くは、事故直後の自らの被ばく量が不明なために、それ以上の被ばくを避けたいという気持ちがある。従って、各自が事故直後の被ばく量を把握できるシステムを構築し、住民の便に役立てる。
⇒避難住民の多くは事故直後の被ばく量にあまり関心がない。回答を送付すれば、直後の推定被ばく量を通知してもらえる県民調査の回収率は浜通り地区においても高くない。全県では3割にも満たない。従来の県の調査のやり方のまずさもあるが、システム構築をしても住民の側に強いニーズがないので空振りする。一部には白黒はっきりさせたくないという気持ちの人もいる。

青少年が遊び入る居住環境の隣接山野や通学路のホットスポットなどをモニタリングして、結果を地図化して、生活に役立ててもらう。当然、ホットスポット等への対応についての注意書きをつける。 
⇒「現場に表示してほしい」、「柵を設置して立ち入り出来ないようにしてほしい」、「それなら除染してくれ」という要求が出るが対応出来るのか。「注意をしなければならないような状況で帰還させるのか」という声が出る。それが帰還取りやめ、解除反対理由にされる恐れがある。


0.23ミリシーベルト/時間(年換算約1ミリシーベルト)を上回る地域での生活 することに不安解消のため、既に多くの市町村で行われているが、希望者には個人被ばく線量計の全員貸し出しを行う。定期的にその結果を集計することで、放射線影響についての研究の基礎データとして活用できるようにする。
⇒線量計を着用して日常生活することは個人の負担が大きすぎて現実的ではない。負担に対して賠償要求が出る可能性がある。家の内外に置きっぱなしで回収や記録取りに回る方法なら実施出来る可能性はある。

除染終了後も通学路や住環境周辺の里山など、住民が随時立ち入る場所への除染の希望がある。その際の除染については、立ち入り時間が短く累積被ばく量の少なさを考慮して空間線量率が毎時1ミリシーベルトを除染の参考レベルとすることを勧める。これは、追加被ばくとして年間約5ミリシーベルトとなるレベルであ
る。 
⇒希望による追加除染は巨額の費用と労力がかかるが出来るのか。事故後5年経ってから実施している郡山駅前や須賀川市の住宅地などの除染作業を見て、国民負担のもとに喜ぶのは除染業者だけだと虚しさを感じる。これとの整合性はどのように説明するのか。

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