日本エネルギー会議

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住民の帰還促進策(3)

ICRPが「長期的に目指すべき」とした年間1ミリシーベルトを、今すぐの目標にしてしまった民主党政権の方針を自民党政権になってもそのままにした。住民はそこまで除染することを国が帰還条件として約束したと解釈し、「無用な被ばくはするべきでない」というわかりやすい話も住民の間に浸透している。また、年20ミリシーベルト、50ミリシーベルにより区域区分をし、それが賠償の算定にも使われた結果、下手な解除をすると既に支払われた賠償問題を蒸し返すことにもなる。
既に時遅し。原発から遥か離れた郡山市などで、年1ミリシーベルト基準で大規模な除染を行ってしまい、今もまだ除染をしている。それを見ている避難住民は、帰還の前提として当然自分たちの土地や家屋もその基準で除染してもらえると信じている。

対策として、次のようなことを提案する。

(1)帰還後の生活における被ばく線量予測値を知らせる
帰還しようする住民だけでなく、帰還しない住民に対しても本来の考え方の説明を行う。その中で、放射能の自然な減衰があること、現実問題として一日の生活パターンで考えれば被ばく線量は十分に低いものであることを理解してもらう必要がある。帰還後の被ばくは「無用な被ばく」ではなく、帰還して生活するという目的に沿ったものであり、そのメリットを考えれば十分に値する被ばくであることを正面から説明する。

(2)空間線量や汚染の徹底的な測定
航空機モニタリングから地上での綿密な測定に重点を移す。測定地点をよりきめ細かくする。また、土壌や植物などの汚染についても従来より細かにサンプルを取り、頻度も上げる。区域外の測定を減らしてその分の人と金をこれから帰還する区域内の測定にまわす。特に高線量のスポット発見に力を入れる。避難者にとって区域の平均値が問題ではなく、自分の家の周囲や日常の活動範囲の線量が関心事である。

(3)効果的な部分に集中した除染
除染の対象について、都市部からこれから帰還する区域に重点を大きくシフトする。全般的な年間1ミリシーベルトを目標の除染ではなく、帰還後の生活圏においてスポット的に高線量の場所を探索し、これを逐次除染してつぶしていく方針をたて、その成果を住民に示す。

(4)簡易モニタリングポストの配置、線量計の設置協力依頼
公共施設はもちろんのこと、各区域に簡易モニタリングポストを設置してリアルタイムでその場所の線量を住民の目で確認出来るようにする。現在、郡山市など都市部では学校や公民館などに数多く設置されており、住民が毎日その数値を見ることで、「百聞は一見に如かず」で、安心の相場観が住民の間に出来上がり、放射線をほとんど気にせずに生活が送れるようになっている。(逆に道路際などに「ただいま除染作業中」の看板を見ることで、放射線を過剰に気にするという結果が出ている)帰還する区域に大量に配備するために、それ以外に配置してあったポストを帰還する区域に移動することも考えられる。この他、各世帯に協力してもらい、家屋の内外に積算の線量計を取り付け、国や町が定期的に回収したり、記録を取りに巡回したりすることで、その場所の一日あたり、一ヶ月あたりの線量を通知する方法もある。

(5)測定結果の伝え方の工夫
NHK福島放送局ではニュースの時間の最後に天気予報とともに、県内 の放射線量の表示がある。また、双葉郡についてはさらに詳細な地点の表示がされている。これは事故後から継続して現在も行われている。現在の測定結果の伝え方は、NHKだけでなく、新聞や町の広報誌なども含め、どれも例外なく現時点の測定値を並べただけで意図が不明だ。その値がどの程度のものであるかは、日本全国の平均値や各地の値との比較、あるいは諸外国主要都市などとの比較があればこそ素人にもわかるはずだ。双葉郡の数字は最大値と最小値を示しているだけなので、避難者は双葉郡内の最大値を見て、まだ0.23マイクロシーベルト/時間(年換算約1ミリシーベルト)と比べると相当に高いとの印象を持つような表示になっている。除染だけでなく、自然の減衰によっても大きく値は下がっている。帰還困難区域は原則除染をしていないので、自然減衰がどのくらいなのかがよくわかる。その地点の測定値が3.11以降どのような経過を経て下がってきているかについてトレンドで表示するべきだ。従来、こうした表示の仕方は、「意図的に避けているのではないか」と思うくらいに、メディアでは行われていない。
   
(6)個人線量計の着用依頼
地区ごと、職種ごとに個人線量計のモデル着用を住民に手当を支払って依頼し、実際の生活で得られた被ばく線量について、予測した線量との比較も含め、その結果を住民に伝える。北欧などにおいて、同様の着用依頼を試みて比較するのもよい。

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