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実用化の道遠し、新技術の原子力発電 石井孝明(経済・環境ジャーナリスト) 2017.6.19


(写真)建設中のITER

 福島原発事故の後で、安全な原子力発電への期待が高まった。核融合発電、新型原子炉などだ。しかしこうした原発は期待が何十年も述べられ続けている。今はどうなっているのか。

■ 足踏み、核融合発電の夢

 「いつになったら実用化できるのやら。お金が続くのだろうか」。ある日本の大学の名誉教授は、自分がかかわった核融合研究について語った。この人の構想や設計が、現在の日本と世界の核融合研究に影響を与えた。「そんなこと言っていいのですか」と心配すると、「問題になるので言わないようにしている。この分野には90年代まで研究費が支援されやすかったために研究したが、先が見通せなかった。建設費がかかりすぎるので、活用方法が発電だけでは、この種のプラントではなかなか採算がとれないだろう」と、述べた。

 「地上の太陽」——。太陽などの燃え続ける原理である核融合反応を形容する印象的な言葉だ。核種が融合して別の核種になる際に解放される巨大なエネルギーを活用する。水素など、普通に存在する資源を利用できるため、放射性物質による危険はなく、数億度の熱を作り出せる。しかし理論と実用化は別の話だ。発電の実用化には巨大な設備が必要になる。

 そのために各国が負担を限定しようと今、国際熱核融合実験炉(ITER、ラテン語で「道」の意味)がフランス南部で建設中だ。始まりは1985年の米ソ首脳会談で、核融合研究の協力の必要が合意され、各国に呼びかけたもの。総費用は2兆円(当初予定)の国際協力による巨大プロジェクト。費用の分担は、欧州の参加国が合同で45・5%、日、米、露、中、韓、印がそれぞれ9・1%ずつ分担し、成果を分ける構想だ。

 日本は既に、核融合炉の建設で実績があり、ITERでは中心部分となる磁場コイルの作成などを担い、量子科学技術研究機構が中心になって研究に参加している。

■ 各国が渋る負担

 ところが計画は遅れている。ITERは2020年の運転開始を目指したが、昨年末に運転開始を2025年、本格稼働を2035年に設定した。それに伴い、当面の追加負担が約6500億円増え、その日本負担分は570億円になった。

 文部科学省は外部有識者によるこの研究レビューチームを作った。そこで「7極が対等の立場にあり責任の所在が不明確」「マネジメントの姿勢が未成熟」と指摘している。ITER理事会は一昨年
幹部を刷新し、新体制で事業を再構築しようとしている。

 昨年の機構理事会での追加負担決定は暫定とされた。各国がその負担の引き受け案を、国内でまとめられるか未定であるためだ。日本はお金をしっかり払い、担当機器を予定通り作る「優等生」だ。しかし日本も資金提供を安易にできない。

 文部科学省研究開発局の松浦重和研究開発戦略官は、「正直に言うと、日本の公的な研究支援が厳しい予算制約の中にある中で、この研究はそれを支えようという応援はそれほど強くない。情報を公開して透明性を高め、将来の可能性について理解を深めたいが、難しい状況にある」と、行政の厳しい立場を明かす。

 研究の支援を生むには、未来に価値を生み出さなければならない。しかし核融合炉の実用化は「21世紀半ば」という目標しかつくれず、実用化は不透明だ。米ソ首脳が語り合った、約30年前の核融合発電の夢は、今でも夢のままのようだ。

■新型原子炉も先行き見通せず

 新型原子炉の実用化もなかなか見通せない。新型原子炉の形については、2030年代の商業導入を目指し、13ヵ国1機関の参加する「第4世代原子力国際フォーラム」が2001年に設立。2006年に6種類のシステムを推奨することを決めた。

 ①超高温ガス炉、②ナトリウム冷却高速炉、③超臨界圧水冷却炉、④ガス冷却高速炉、⑤鉛冷却高速炉、⑥溶融塩炉だ。当時、日本は①の実験炉、②の原型炉もんじゅを持っていた。また国内で開発力を持つ東芝、三菱重工、日立があり、その貢献が期待されていた。

 ところが、日本での開発は今でもなかなか進まない。原子力施設の建設は時間がかかる。さらに先進国では原子力の逆風が起き、日本は福島原発事故以降、研究が停滞した。

 開発の遅れはITERと同様に、新型炉の商業化への道筋が見えず、研究投資が進まないことだ。既存技術の軽水炉型の原発がすでにある。ある公的機関の元研究者は次のように語った。「事故の可能性はあっても、その技術を捨てて、新技術に飛びつく動機が、原発を作る側にも、使う側にもない」。

 一方で、新型原子炉開発の進んでいる国がある。高速炉では、中国、インドは高速炉で実験炉を作り、ロシアはその次の段階の実証炉を稼動させている。また中露は高温ガス炉の実験も行っている。両国とも、原子力を事実上国営で行い、研究費を国が支援している。

 「先立つものは金。設備のできたもんじゅでさえ、誰もが追加の負担を渋り、つぶされた。50年後の高速炉の次の原子力技術のために支援する人はいない。税金を出し続けられる時代でもない。核融合発電も、新型原子炉も、先が見通せない」と、ある研究者は語った。

 日本では、今秋をめどに、エネルギー基本計画の見直しが行われる。そこでは既存の原子力発電所の新増設が明記されると6月に一部メディアが報じた。世耕弘成経産大臣は、「これからの有識者の議論に委ねられる」と明言を避けたが、政治的に原子力の活用をなかなか言い出せない状況がある。新型炉に加えて、既存技術の原子炉の建設、技術継承さえ難しくなっている。

 最終的に新しい原子力の活用が、どのような形になるかは現時点では見通せない。しかし中露が世界の原子力産業を制する次の新技術を獲得してしまう可能性がある。軍事的に危険な拡張政策をとる両国が、軍事面でも民生面でも、巨大なエネルギーを作る原子力で新たな力を手に入れる。それは日本にとっても、世界にとっても、恐ろしいことだろう。

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