日本エネルギー会議

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“行動する市民”の育成に挑む -「環境家計簿」の活用- 日景弥生(弘前大学教授) 2017.7.14

 大学生達に環境にかかわる講義をしている。将来、環境やエネルギーを専門とするわけではない学生が大部分のため、受講者達がこれらに関心をもち、日常生活で実践したいと思うような講義を目指している。内容は一般教養に近く、誰でもそれほど知識がなくても受講できるようにしている。
 しかし、最初は関心が低く“苦戦”の連続である。そのような状況ではあるが、講義のなかで学生達が“乗ってきた”内容を例に示し、学生達の実態をお知らせしたいと思う。
 今までの経験で最も手応えがあったのは「環境家計簿」である。「環境家計簿」をご存じの方は多いと思うが、これは家庭で使用した電気・ガス・水道などの使用量からCO2排出量を計算するものである。
 筆者はそれに使用料金を加えて、数ヶ月にわたって記録・計算させる。学生達のライフスタイルは一人ひとり異なるため、ほぼ全員が使用すると思われる電気・ガス・水道の3項目のみを対象としている。それでも、学生寮のように居住者全員の使用量が一括請求されるため個人の使用量は不明な者、アパートの年間契約により環境家計簿の対象である3項目は賃貸料に含まれ使用量も使用料金も不明な者、さらには自営業のため生活と事業との分割が困難な者など、何人かはデータを確保できない者がおり、これらに請求書の紛失者を含め、全員が足並みを揃えるのはいつも苦労している。
 表1と表2にその一例として学生Aを示す。この学生は、「環境家計簿」をつけることで1カ月後には、CO2排出量を8.88kg減少させ、家計の節約も4,326円となった。この状況が1年間続くならば(弘前市の平均気温は、1月が1.5℃、8月が28.9℃と寒暖差が大きく、冬は暖房機器が不可欠なため継続的な効果は期待できにくいが)、順に106.56kg、51,480円になる。その学生は次のようにコメントし、環境家計簿を高く評価している。

 全員の受講者の意識が改革され、かつ生活行動が伴う「行動する市民」(筆者の造語。講義のなかで筆者が多用する)になるならば申し分ないが、必ずしもそのようにはならないのが現実である。しかし、この講義を通して、意識も行動も変わる受講者が一人でも二人でも増えるならば、この講義を続ける意義があると思っている。また、受講生が学んだことを家族や友人などに働きかけ、その人たちの意識や行動を変えるような波及効果も期待している。
 「行動する市民」育成のポイントは、①意識改革にとどまらず生活行動に移せるような内容であること、②生活行動が生活者(自分自身)に何らかの利益をもたらすこと、③その利益を生活者が実感できること、④継続しようとする/継続できる生活行動であること、⑤生活者自身にとどまらず他の人への波及効果が期待できること、と考えている。特に、①~③は④や⑤の基盤になると推察される。「行動する市民」の育成は、案外身近なところにあるように思う。

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