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再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題(2) 松本 真由美(東京大学教養学部客員准教授) 2017.7.24

 2012年7月のFIT制度開始以降、再生可能エネルギーの普及が急拡大する中、様々な問題も顕在化している。筆者は、経済産業省が今年度設置した「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題についての研究会」のメンバーとして議論に参加する機会をいただいた。
 研究会は5月25日の第1回以降、7月4日まで5回開催され、検討すべき論点整理を行った。時間軸での整理はせず、論点をできるだけ洗い出すことを目的とした。
 「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題(1)」では、日本が直面している再生可能エネルギー(以下、再エネ)の現状や全体的な問題意識について触れたが、本稿では、研究会で活発に議論された「系統への円滑な受け入れのための施策」について紹介したいと思う。

◆既存系統の最大限の活用
 現在、日本では再エネの普及拡大に伴い、全国各地で系統制約の問題が生じている。国は電力システム改革を進める中で、一般送配電事業者の系統に公平にアクセスし、利用することができる環境整備を図っており、研究会でも系統制約をできるだけ緩和・解消するためにはどうすべきか議論を行った。
 系統制約は、主に「容量面での系統制約」と「変動面での系統制約」に大別される。(図1)日本では系統に新たな電源をつなぐ場合、系統の空き容量の範囲内で先着順に受け入れを行い、空き容量がなくなった場合には系統を増強した上で追加的な受け入れを行っている。
 他方、変動面での系統制約については、太陽光や風力の出力変動に対して需給バランスを一致させることが難しくなっており、適切な調整力を確保する必要がある。調整力の確保については後述する。


(図1)「系統制約の種類について」再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題について 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部

 まず容量面での系統制約については、系統を増強する場合には多額の費用がかかり、期間も長期化するケースが多いという問題がある。
 現在、大規模な系統増強については、電力広域的運営推進機関が策定する広域系統整備計画に基づく地域間連系線の増強や、電源接続案件募集プロセスによって地内系統(ローカル線)の増強が行われており、その費用負担については、費用負担ガイドラインに基づき決められている。
 地内系統の増強は、再エネ発電事業者の負担となる場合が多く、予想外の費用負担増に発電事業計画を諦めるケースも少なくない。
 そこで、研究会では、系統増強を一定期間しなくても、既存の系統で最大限に再エネを受け入れるイギリスの「コネクト&マネージ(Connect & Manage)」という手法に注目した。

 この手法は、必要な系統増強を待たずに、接続点までの連系を行った発電設備の早期接続を認めるというもので、イギリスでは2010年8月から開始され、2011年2月より本格的な運用が行われている。
 早期接続を認めて、その後に発電実績をもとに送電会社は系統増強を行うことになる。(図2)再エネ発電事業者は、系統増強までの間は、出力抑制を受ける可能性が高くなることを許容しなくてはならないが、この手法が系統への円滑な受け入れのための施策として日本でも有効ではないか。


(図2)「欧州における接続・抑制の取り組み〜イギリスConnect & Manage」日本エネルギー経済研究所・小笠原潤一氏資料より抜粋

◆「日本版コネクト&マネージ」の具体化へ
 系統増強の前に、既存系統の最大限の活用ができる「日本版コネクト&マネージ」の仕組みを具体化していくために、今後次の点について検討を進めていく。原則として、系統混雑が発生しない範囲で新規連系を認める、いわゆる「B基準」について早期に具体化を図っていく。
 B基準では、想定される範囲内でのリスク事象、例えば、必要な予備率で対応しうるリスクは見込んで設備の増強を行う。したがって、前日までの計画段階で、恒常的な混雑処理は不要な範囲の系統利用とする。このB基準の具体化を目指すことになるが、併せて、系統混雑の発生を許容する、いわゆる「C基準」についても検討を進めていくこととした。
 (図3)この日本版コネクト&マネージの具体化と併せて、出力制御に関わる制度も考えなくてはならない。現状は、エリア毎に30日等の出力制御枠を設け、これを境として「30日以内」の事業者とそれ以外の事業者を区分する仕組みになっているが、公平性、効率性などの観点から制度を再検討する。


(図3)「各基準における混雑発生頻度イメージ」電力広域的運営推進機関・佐藤悦緒氏資料より抜粋

◆適切な調整力の確保
 太陽光や風力といった変動電源が大量に系統につながれていくと、系統の需給調整が難しくなってくる。出力変動を調整し、需給バランスを一致させる上で、調整力を効率的、かつ効果的に確保することが重要である。
 日本では、調整力の確保は一般送配電事業者がその責任を担っているが、今後、エリアを越えた広域的な調整力の調整・運用や、電力システム改革に伴う容量市場や需給調整市場といった市場を設計し、調整力を確保していく予定である。併せて、VPP(バーチャルパワープラント:仮想発電所)、蓄電地、水素エネルギーなど多様な調整力の活用方策も検討していく。

             ※次回は、本研究会で議論された洋上風力発電の可能性について

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