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再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題(3)〜洋上風力の可能性〜 松本真由美(東京大学教養学部客員准教授)2017.10.6

 経済産業省「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題についての研究会」のメンバーとして議論に参加する機会をいただいた。研究会は5月25日の第1回以降5回開催され、検討すべき論点整理を行った。本稿では、研究会で注目された洋上風力発電の可能性について、議論のポイントを解説する。

◆欧州では発電コストが大幅に低下
 洋上風力発電の導入量は欧州が世界の9割を占めており、年1−2GW規模で成長している。(図1)英国、デンマーク、ドイツ、ベルギー、オランダの5カ国が欧州の96%のシェアを占めており、1位の英国は50GW(500万kW)以上が導入され、世界の約36%を占めている。


(図1)「欧州洋上風力発電事業入札価格の動向・背景とそこから日本が学べること」(MHIヴェスタス社調査) 再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会第3回より抜粋

 欧州ではこの5年くらいで洋上風力発電の技術開発が進展し、発電コスト(COE: Cost of Energy)が大きく低下した。その要因は主に3つ挙げられる。1つ目は制度的な要因である。大規模な導入目標の打ち出しと周到な「セントラル方式」の入札を行うことにより事業者の開発リスクを低減し、価格競争が活発化している。
 (図2)なおセントラル方式については後述する。2つ目は技術的要因。プロジェクト条件の困難化(水深・離岸距離大)に伴い、風車や建設インフラの大型化がなされ、発電量が飛躍的に増加した。
 現在7−8MWの大型の風車が主流になり、最近では9.5MWのものまでつくられている。例えばローター径が90mから137mになると2倍以上の発電量となり、ハブの高さが80mから130mになることで〜20%の発電量が増加する。
 また発電設備をできるだけ陸上で組み立て、それを専用の船で運び、洋上に据え付けるという工法が確立され、1日に最大2基の洋上風力据え付けができるようになった。設備の信頼性の向上により稼働率が向上し、北海の案件の多くは50%程度の設備稼働率を誇る。3つ目は経済的要因で、ファイナンススキームの確立により完工リスクを低下させている。


(図2)「欧州洋上風力発電事業入札価格の動向・背景とそこから日本が学べること」(MHIヴェスタス社) 再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会第3回より抜粋

 洋上風力発電設備は大きく分けて、風車の基礎部分を海底に直接設置する「着床式」と、風車を海中に浮かべて海底に係留する「浮体式」がある。欧州は着床式が中心で、以前は水深20mくらいの場所に設置していたが、モノパイルと呼ばれる海底に固定する基礎や風車の大型化が進み、水深40mにも対応可能な大口径のものが開発されている。これならば日本でも有望ではないかと注目された。

◆イギリス、オランダの洋上風力発電
 イギリスでは、大陸棚の海域の所有権は王室にある。洋上風力発電開発にあたり、国王の不動産や海域の資産管理を行う政府系機関のThe Crown Estate(CE)が戦略的環境アセスメントを実施し、開発可能な海域を指定する。
 この環境アセスメント費用は20年かけて事業者がCEに返済していく。CEは、洋上風力発電事業者向けに入札を行い、事業者は用地のリース料を支払い、開発を行っていく。入札は2001年に導入されて以降、同年4月「ラウンド1」では13プロジェクト、2003年からの「ラウンド2」では12プロジェクト、2009年末から「ラウンド3」が始まり、2017年4月末時点で、ランド1〜3の合計で28プロジェクトが行われている。(図3)


(図3)出典:再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題について 省エネルギー・新エネルギー部

 オランダは2020年までに4.45GW(445万kW)の洋上風力計画があり、公平で競争効果がある「セントラル方式」の入札を導入。2016年7月の第1回の入札以降、大幅に発電コストが低下している。
 これは、開発にあたり政府が責任をもち、環境アセスメントを実施し、かつ洋上風力発電設備を設置してよい領域をゾーニングするなど環境を整備し、事業者の開発リスクを最小化した上で入札を実施する方式である。
 各入札は350MW×2の5年計画のプロジェクトで、水深約16m、離岸距離22㎞と現在の技術で十分対応できる条件でプロジェクトを推進している。先行する大型洋上風力発電プロジェクトと同じモデルをそのまま別の開発エリアでも使っていき、プロジェクトを標準化することで、余分にお金がかからないようにしている。
 事業者にとって最も好ましい条件を周到に政府が用意することで、低価格での落札につなげている。落札発電価格と市場価格との差分は政府が最大15年間補填する。(図4)研究会では、今後の日本の洋上風力はこのセントラル方式を検討していくべきだという声は強かった。


(図4)出典:再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題について 省エネルギー・新エネルギー部

◆日本における洋上風力の可能性
 国内の風力発電の2017年3月末の推定累積導入量は337.8万kW(2,245基453発電所)である。そのうち洋上風力発電の導入量は、6.0万kWで、この内の74%、4.4万kW(23基)は護岸近傍に設置されている。2016年4月時点、日本の洋上風力の発電量は、まだ世界の約0.4%に過ぎない。(図5)


(図5)出典:日本風力発電協会

 日本で風力発電(陸上)がなかなか進まない理由は、主に4つある。
 一つは、騒音や低周波の影響などから地域の住民の理解がなかなか得られないこと。
 2つ目は、環境アセスメント(影響評価)に2〜3年かかること。
 3つ目は風況。風力発電は強い風が安定的に吹く平らな土地が適しているが、日本にはそうした適地が少なく、陸上風力は尾根伝いになる場合が多い。
 4つ目は建設費が高価であることが挙げられる。
 しかし洋上風力は、一般に陸上風力に比べて風況が良く、洋上風力発電ならば住民が心配する騒音などの問題から解放され、また土地の制約が非常に少ないというメリットがある。(図6)


(図6)出典:Neo Winds(洋上風力マップ) NEDO:新エネルギー産業技術総合開発機構)

 洋上風力は、建設・運転保守とも洋上での作業は困難であることからコストが高く、天候に左右されるため、これをいかに克服するかがコスト低下のカギとなる。系統制約の解消に向けた対策も進める必要がある。
 欧州では政府の大規模な導入目標の打ち出しを行い、プロジェクトの事前調査や環境アセスメント、地元調整などを政府が主導しており、全体のプロセスが明確化されている。また、系統連係に必要な費用も送電系統運用者が負担した上で、入札が行われている。これにより事業者の開発リスクが低減され、価格競争が活発化している。

 日本においても欧州での先行事例を参考に、風車の大型化や建設用の船舶の建造などを進め、政府主導で開発エリアの選定・入札を行っていくのが望ましいのではないか。また日本特有の課題として漁業権の問題があるが、洋上風力開発にあたり漁業関係者の理解を得ることが大前提となる。
 2016年7月改正港湾法により、港湾区域における長期間占用を可能とする措置がなされたが、一般海域においては許認可等のルールが明確化されていない。相応の時間はかかると思われるが、ルールを明確化し、事業者に対して情報提供を行うことが求められる。

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