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原子力の光と影:原子力の特異性と“重大事故” 内山洋司 【筑波大学 名誉教授 (一社)日本エレクトロヒートセンター会長、(公社)茨城原子力協議会会長】 2017.10.16

 どのような科学技術にも光と影がある。ここでは原子力の影の部分について考えていくことにする。原子力は他のエネルギーに比べて、社会でコンセンサスを得ることが最も難しいエネルギーである。その理由として原子力が持つ特異性が考えられる。表は、その特異性を示したものである。

     表 原子力が持つ特異性

 表に掲げた特異性には、原子力が持つ本質的なリスクとリスクに対する認識バイアスの問題が内在されている。前者の本質的なリスクとは、“重大事故”“放射線影響”“最終処分”“核セキュリティ”へのリスクである。ここでは“重大事故”について、何が批判されているかを説明する。
 福島第一原子力事故以降、原子力の安全性をリスク評価で説明することが難しくなっている。安全性には自信を持っていた日本の原子炉が地震、そして津波によって重大事故を発生し、放射性物質を外部に放出してしまった。
 一般に、原子力の安全性は、確率論的安全評価(PSA)で説明される。それは事故による事象被害の大きさに確率を乗じたリスクで表される。原子力事故リスクは、重大事故の場合、事象被害が大きいが確率が小さく、結果としてリスクが小さいと判断されている。
 しかし、実際に重大事故を起こしてしまった今、確率が小さいのでリスクは小さいと説明しても説得力がない。まして、4基がほぼ同時に爆発事故で建屋を崩壊し、放射性物質を外部に放出したという事実がある。そのうち、一基は原子炉が停止し燃料が取り出されていた炉である。
 事故後、事故発生原因は究明されてはいるが、国民の多くが、何故、事故を事前に想定できなかったのか、そして対策を講じていなかったのか憤りを感じている。原子炉の重大事故は、比較的起こり易く、確率は小さくないのではないか。中には、重大事故のリスクがある以上、そのような原子力技術を今後とも使うことは倫理的に許されないという厳しい批判もある。
 また、国民が必要とする軽水炉の安全情報やレベル3への対策、事故炉の廃炉対策や汚染水問題などすべてが電力会社任せで、国や専門家が積極的に関与しているとは言えない。原子力委員会は沈黙。
 規制委員会は「規制基準に合格したが安全とは申し上げていない」、政府は「世界一厳しい安全基準に合格すれば再稼動できる」との見解だ。安全工学の専門家や制度を策定する立場にある政策決定者も責任を回避している。国民とのコンセンサスづくりは絵空事になっている。
 このような状況では、原子力に対する国民の信頼回復は得られないし、マスメディアによる批判は高まる一方である。解決の方向として、原子力発電所の安全対策を徹底して国民に説明していく努力が必要だが、理解が得られるまでにはかなりの時間がかかる。
 次回は、“放射線影響”“最終処分”“核セキュリティ”へのリスクについての批判を説明したい。

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