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中国の原子力発電は今 松岡豊人(一般社団法人 海外電力調査会 調査部門 調査第一部長) 2017.12.6

 中国が世界最大の電力大国であることは皆様ご存知ですね?電力産業の規模を表す単位に発電電力量(kWh)と発電設備容量(kW)がありますが、中国は2009年にkWhで、2012年にはkWでも米国を追い抜き世界一になりました。2016年末時点では中国の発電設備容量は16億4千万kWとすでに米国の1.4倍に達し、その差は年々拡大しています。

 中国の発電量の7割は石炭火力発電に依存しており、発電設備の6割が石炭火力です。一方、再生可能エネルギーの発電でも中国は世界一です。たとえば水力は3.2億kWで米国の3倍、風力は1.8億kWで米国の2倍、太陽光も0.8億kWでドイツや日本の2倍で、中国はダントツです。このように中国の発電設備の1/3が水力を含む再エネが占めていることは日本では知られておらず、中国は石炭火力だけでPM2.5の汚染国というイメージが定着しています。

 ところが、「何でも世界一」の中国が一番でないのが原子力発電で、発電量の3%、発電設備のわずか2%です。中国が核反応の軍事利用を開始した時期は早く、核実験は1964年に成功しましたが、原子力発電技術開発は非常に遅れ、初めての原子力発電所、浙江省の秦山1期発電所1号機が臨界に達したのは1991年でした。秦山1期は国産技術100%で建設する予定でしたが、結局技術的な問題を克服できず、原子炉格納容器を含む重要な部品を日本などの外国企業から輸入して、完成に漕ぎつけました。秦山1期の建設と運転を担当したのは当時の中国政府機関である核工業部でしたが、その原子力発電部門は国営事業を企業化(公司化)するという政策の下で、中国核工業集団公司(中核集団、CNNC)に引き継がれました。

 また広東省でも大亜湾発電所の1・2号機が1994年に運転を開始しました。こちらはフランス電力公社(EDF)が中心になりフランス製の原子炉を導入したプロジェクトで、その中国側の受け皿として設立された会社が現在の中国広東核電集団公司(中広核、CGN)です。

 中国で80年代に着工した原子炉は秦山1期の1基と大亜湾の2基の合計3基でしたが、90年代の着工は8基でした。うち4基はカナダのCANDU(秦山3期)とロシアのVVER(田湾)であり、中国は外国の技術を学習する時期でした。韓国の原子炉とともに日本のABWRも導入の協議が行われましたが、90年代末のアジア経済危機の影響で電力需要が伸び悩み、話は立ち消えになりました。

 2000年代に入ると中国の経済成長が一転して加速、突然に電力不足に陥り、発電所の建設ブームが起りました。原子力も重要なオプションとして国産化が強力に推進され、中核集団と中広核が次々に標準設計のPWR(CP1000、CPR1000等)を開発し、2010年までの10年間に30基もの原子炉を着工しました。この中には世界初の運転開始を目指す、米国ウェスチングハウス社製の新型炉AP1000(浙江省三門、山東省海陽各2基)とフランスのアレバ社製のEPR(広東省台山2基)も含まれます。

 2010年ごろには新規原子力発電所の建設許可申請がさらに急増、中国では将来100基の原子力が建設されると言われていた中で、2011年3月、福島第一原子力発電所事故が発生しました。中国政府は、ただちに運転中・建設中の原子炉の安全点検を実施するとともに新規の建設許可審査を中止しました。その後運転中の原子炉は安全上の問題はないと発表し、建設中サイトも工事再開を許可、2012年11月には新規着工許可も発給されて、広東省の陽江4号機、福建省の福清4号機の工事が開始されました。福島原子力事故後、2017年10月までに16基の原子炉が新規に着工されました。

 2017年10月時点では、中国で運転中の原子炉は37基、合計出力3,579万kW、建設中の原子炉は海上浮遊式実証炉を含め20基、2,192万kWです。中国の運転中の原子力発電設備容量は米国、フランス、日本に次いで世界第4位ですが、このまま建設が進めば、まもなく日本を追い抜きます。

 ただ、今後については課題があります。中国の電力需要の伸びは一段落し、当面は発電所建設の必要性はありません。また新規原子力の多くは内陸を候補地にしているため、万一の事故による河川の汚染を懸念する意見もあり、中国政府は内陸原子力の建設許可を棚上げしたままです。昨年と比べ2017年に運転を開始した原子炉は急減しています。

 一方で、中国は安全性を高めた国産新型炉の開発にも力を入れており、「華龍一号」と呼ばれる原子炉を福建省福清5・6号機、広西壮族自治区防城港3・4号機に導入し、2019年~20年の運転開始に向け建設中です。華龍一号は、フランスの設計を元に中国独自の改良を加えたもので、現在は中広核と中核集団がそれぞれ多少異なる設計で製作していますが、中国政府は両社の設計を統合し海外への原子炉輸出の目玉商品にする方針です。輸出先としてすでにパキスタンでは華龍一号の初の海外案件の建設が進んでおり、さらに英国、アルゼンチンへの輸出に着手するなど、世界の原子力産業界が動向を注目しています。

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