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放射性廃棄物最終処分地選定の「科学的特性マップ」への疑問 笠井篤(環境技術センター技術顧問/元日本原子力研究所研究室長)2017.12.12

 2017年7月に放射性廃棄物最終処分地選定のための「科学的特性マップ」が国(資源エネルギー庁)と実施体の原子力発電環境整備機構(NUMO)によって公表された。現在この「科学的特性マップ」の説明会が全国都道府県で行われている。
 筆者は第一回説明会(東京)に出席して質問と意見を述べた。が、多くの疑問がありその後のNUMOの不明瞭な対応(参加者動員問題)が明らかになったりしている。
 また、2017年11月24日付け当メールマガジンに北村俊朗氏が「呆れた会見」と、この問題を取り上げている。マスメディアも社説:注)で取り上げるなど社会的にも大きな関心事となっている。こういった点から、「科学的特性マップ」に関して、原子力安全性研究者として考察したいと考える。

 公表された「科学的特性マップ」の説明資料では「放射性廃棄物地層処分地の選定に際してどのような科学的配慮をするのか、そのような場所が日本全国にどのように分布しているかをマップにしたもの」となっている。ところが、国の担当官は「処分地を選定するものではない」と説明しており、一体このマップな何のための資料なのか理解に苦しむ。
 マップで示されているいわゆる「適地」となっているのは国土の2/3である。その大部分が海岸沿いにある。説明では、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の輸送に適している、とある。輸送に適しているというのは、放射性廃棄物処理処分操業上のことであって、処分地選定の優先順位としては低い位置付けであろう。
 
 放射性廃棄物地層処分地選定に不可欠な要因としては、次のことが挙げられる。

1.地質が処分地に適しているか。地質の適否は処分地選定の絶対条件である。ところが、マップではこの地質が全く考慮されていない。
 地層処分を行っている諸外国では、まず地質が処分に適しているか、の科学的検討に多くの時間と労力を費やしている。地層処分された放射性廃棄物は数万年もの長期間にわたって安全性が求められるので、それに適した地質が不可欠になる。

2.活断層に対する考慮が不十分である。マップでは火山の影響はそれなりに考慮されている。しかし、活断層に関しては500ヵ所余りしか考慮の対象としていない。わが国の活断層は約3,000ヵ所が明らかになっている。これでは不適切と言わざるを得ない。

3.地層処分された放射性廃棄物から放射性物質が生活圏へ移行する過程で大きく関わるのが地下水である。その地下水の分布などが全く考慮されていない。

 以上挙げた3条件は地層処分には最低限必要である。それらを科学的に検討し適地として地図にするのが「科学的マップ」ではないかと考える。その観点から、国が策定した「科学的特性マップ」は科学的と云えるのか疑問である。専門家が関わって作成されたと説明されているが、疑問は拭い去れない。このような「科学的特性マップ」がはたして一般市民に理解されて受け入れられるのかも疑問に思う。説明会の開催が市民の声を聴いた、という実績作りにしてはならない点を強調したい。
  
 説明会の後に先方の希望でNUMOの技術陣幹部と話し合いを持った。その中で地質の問題ではNUMOの技術者は「わが国の深部の地質は判っていないから地質を考慮することができない」との説明があり、この認識不足には驚いた。NUMOの幹部技術者がこのようなことで、はたして困難が予想される放射性廃棄物地層処分を担っていけるのか、危惧の念を持ったことを補足しておきたい。

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注)2017年11月26日付け朝日新聞社説で「核ごみの説明会」としてこの問題をとりあげている。その社説の中で『NUMOの説明ビデオについて、参加者から「不適切」との指摘がでた。』とあるのは筆者が会場で指摘したことと推察する。そのような指摘をしているから。

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