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再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワークの在り方(2)〜系統制約の克服に向けた動きが加速〜 松本真由美(東京大学教養学部客員准教授) 2018.2.13

 総合資源エネルギー調査会「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」の委員として筆者は議論に参加する機会をいただいた。第2回の会合が2018年1月24日に開催され、主に二つの論点について議論を行った。一つは「系統制約の緩和に向けた対応」で、もう一つは「FIT発電事業の適性化」である。本稿では、前者の系統制約の緩和に向けた対応として議論されている「日本版コネクト&マネージ」について解説したい。

◆ 「日本版コネクト&マネージ」の仕組みの具体化へ
 現在の日本では、新規に電源を系統に接続する際、系統の空き容量の範囲内で先着順に受入れを行い、空き容量がなくなった場合は系統を増強した上で追加的な受入を行う「先着優先」の考え方となっている。しかし、系統の増強には工事費用の負担や工事に時間がかかり、大量に電源を連系する場合は工事の規模が大きくなり、多額の費用と工期の長期化が課題となっている。接続に要する時間が長すぎて、これでは事業の見通しが立たないと諦める発電事業者も少なくない。

 一方、イギリスやアイルランドなど一部の国では、既存系統の容量を最大限活用し、系統の増強工事が完了する前に、一定の条件下で系統への接続を認める制度を導入している。この既存系統を最大限活用する手法を取り入れ、国は「日本版コネクト&マネージ」の仕組みの具体化を検討している。

 送電線は、日本に限らず国際的にも、1回線が故障した場合でも送電できる状態を維持する原則の下、系統が2回線の場合は原則1回線分の容量の50%が、平常時に流せる最大値となる。もう1回線は緊急時用に確保しておく。そのため通常2回線の系統では、平常時に利用率が50%を超えることはなく、電源の運転状況(稼働率)によって送電線の平均利用率はさらに低くなる。

 現状では、送電線は電源がフル稼働し需要は最小の潮流を想定しているが、国はこれを見直す方針を打ち出した。日本版コネクト&マネージの具体的な取組として、送配電事業者は蓋然性(がいぜんせい)のある潮流想定により生じた空き容量を新規電源の連系に活用する「想定潮流の合理化」を行う(図1の①に相当)。そして事故時に瞬時遮断する装置を新規の発電設備に設置することにより、緊急時に確保している1回線50%の枠を解放し、運用容量を拡大する「N−1電制」(図1の②に相当)の適用を行う。さらに系統が空いている時期のすき間の利用を可能とする「ノンファーム型接続(図1の③に相当)の適用を行い、既存系統への新規の発電設備の接続を可能にするというものだ。


(図1)「再生可能エネルギーの大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」第2回配付資料より

 今後再エネ大量導入を図るためには、より柔軟な電力ネットワークが不可欠となる。国は現状の送電枠のすき間をもっと活用することで、より早く効率的に再エネの導入を図っていきたい考えだ(図2)。想定潮流の合理化については、2018年度から本格適用を開始する予定で、N-1電制については、特別高圧において2018年度早々から先行適用していくことを検討している(後述の東北北部電源募集プロセス)。ノンファーム型接続については2020年度を目途に運用システムの開発を行う見通しである。


(図2)「再生可能エネルギーの大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」第2回配付資料より

◆共同負担の系統増強スキーム
 系統増強の費用負担についても国がルール化している。大規模な系統増強工事が必要になる場合は、一社では負担が大きくなることから、工事費負担金を複数の発電事業者で共同負担する「電源接続案件募集プロセス」が電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)により2015年4月ルール化された。2017年12月現在で、12エリアで完了、23エリアで実施中である。

 工事費負担金は契約時に一括して支払うのが原則だが、一部の地域では入札後に辞退者が出て募集プロセスが長期化する問題が生じている。工事が長期にわたる場合は分割払いなど支払い条件の変更について協議を求めることはできるが、どのような場合に実際に分割払いが可能になるのか、送配電事業者により対応が異なるという指摘もある。募集プロセスの早期完了を目指すため、審議会では、広域機関で送配電など業務指針の内容を明確にするための検討を行うべきとの意見で一致した。


(図3)「再生可能エネルギーの大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」第2回配付資料より

◆ 注目される東北北部電源募集プロセス
 日本版コネクト&マネージ導入の第1号の有力候補は、広域機関と東北電力が共同で進める「東北北部電源募集プロセス」である。現在空き容量がゼロとなっている東北北部エリアでの系統制約を解消するため、当該エリアでの募集プロセスを2016年10月13日に開始している。入札対象工事は、秋田地区から西仙台変電所までの50万Vルートを構築するものだ(図4)。


図4)第2回会合配付資料「東北北部電源募集案件プロセスにおける入札対象工事の概要」

 約280万kWの募集容量に対して、2017年8月にプロセス参加の継続の意思表明をした応募容量は1,545万kWと募集容量を大きく超えた。東北電力は、日本版コネクト&マネージの検討を踏まえ、基幹系統で想定潮流の合理化の考え方を拡大適用することにより、当初の280万kWから約350万kW〜450万kW程度の連系可能量を算出している。
 東北北部募集プロセスでは、系統増強工事完了までの期間は11〜13年となるが、広域機関は、2018年度早期を目途に、工事完了までの間、系統事故等の必要時には電源制限(出力の抑制)を受け入れることを条件に暫定的に電源の接続を認める措置を導入する考えだ。さらに連系可能量を超える応募があることから、希望者については、ノンファーム型接続のルール化の検討を踏まえ、当該エリアへの適用に取り組んでいくことを表明している。

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