日本エネルギー会議

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高レベル放射性廃棄物処分地選定の説明会再開の問題点 笠井篤(環境技術センター技術顧問/元日本原子力研究所研究室長)2018.3.5

はじめに
 原発稼働に伴って発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分地を選定するための「科学的特性マップ」が昨年、経済産業省資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)によって公表された。その説明会が福島県を除く各都道府県で始まり昨年末で約半数が終えた。その間に、説明会へ謝金を約束した参加者動員が社会問題になった。それだけでなく、NUMOの親元ともいえる電力会社社員がNUMOからの依頼で一般参加者として、80名を超える人数が参加していたことが明らかになっている。
 このような不明朗な事柄によって、説明会は昨年12月に中断した。NIMOでは内部に調査チームを作り、これら一連の問題を明らかにした(注1)。その結果を受けて部外者も参加している評議員会が「再発の防止及び組織の改革に向けた提言」を公表した(注2)。これらによって国とNUMOは、参加者動員問題には一応けりがついたとして、説明会を「対話型全国説明会」と銘打って2月21日に東京で再開した。筆者はこの説明会に参加し意見を述べてきたので、その様子と共に問題点を述べる。

参加者の意見を無視
 再開した説明会に参加してまず驚いたのは、会場の酷さである。スライドの映写画面が参加者の頭で隠れるような極めて狭い会場は、参加者不在のやり方でしかない。こういったNUMOの不適切さが随所に現れている。
 説明会の冒頭に映写された放射性廃棄物地層処分PRのVTRは、昨年来の説明会と同じである。そのVTRの内容が不適切である点が昨年来指摘されているのに、改まっていない。例えば、破綻していることが明らかな核燃料サイクルが依然として中心に位置づけられて説明されている。地震による高レベル放射性廃棄物処分施設の安全性は、地下では揺れが地上より小さいので施設への影響は小さい、との説明に終始している。地下施設の地震による影響は揺れではなく、地下断層亀裂による破壊が大きい、というのが地震専門家の常識であるのに、その説明がない。
 このPR用のVTRは10年以上も前に作られたもので、背景や状況が変わっているのに改良されないままである。昨年の説明会でも、不適切な点が指摘され修正の意見があったにもかかわらず、変わっていない。こういったことは、参加者の意見を無視していることであって、何のために参加者の意見を聞くのか、大きな疑問である。不適切と指摘されているPRのVTRが修正しないまま使い続けるNUMOの姿勢がここでも問われる。

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注1、注2、NUMOのHP https://www.numo.or.jp/ に二つの報告書全文が掲載されている。

「提言」とNUMOの対応 
 評議員会が公表した「再発の防止及び組織の改革に向けた提言」は、今後のNUMOを改革して行くための重要な事柄を指摘している。その一部を次に紹介する。
 提言では、
 【地層処分事業は長期にわたる事業である。その間、社会から信頼される事業主体であり続けるためには、NUMOは組織文化や職場風土を改善すべきである。組織の運営が縦割りになっていないか、出向元の電力会社に依存した運営になっていないか等、組織・運営体制の問題点を洗い出し、職員一丸となって事業を進めるチーム意識を向上させるべきである。】
 NUMOの根本的な改善が指摘されている。さらに提言は電力会社との関係を次のよ
うに指摘している。
 【高レベル放射性廃棄物の発生者である電力関係者の参加が必要と認められる場合が当然にあるが、会合の公正性確保の観点から、その参加についての原則とルールを予め確認し、社会に対して明確にすべきである。】
 と、電力会社との関係を透明にすることを明示している。ところが、2月21日の説明会には、東京電力社員が「リスク・コミュニケーション」に関しての説明者として登壇している。3.11福島第一原発事故を引き起こした当事者である東京電力社員が「リスク・コミュニケーション」を解説するのは、どうみても抵抗感がある。つまり3.11福島原発事故以前は、原発リスク0(ゼロ)を唱えていた東電だからである。
 住民の気持を逆なでするものであることと、無神経であることに本人とNUMOの企画担当者は気が付かないのだろうか? 
 NUMOは「提言」を全く無視しているとしか考えられない。昨年来の説明会を改善することもなく同じ説明会の再開である。このようなことで、住民の理解を得られるとは到底考えられない。

処分地の放射性安全と基準値
  去る1月31日に原子力規制庁主催で放射線防護・安全性を主題にしている4学会の会員が一堂に会して「ネットワーク合同報告会」が開催され筆者も出席した。その中で、放射性廃棄物処理処分に伴う放射線防護・安全性が問題になった。が、放射性廃棄物処理処分に伴う放射線防護・安全性をテーマにしているのが1学会しかなく、しかも小テーマ扱いである。放射性廃棄物処分の基準値も含め、これらの点がどうなっているのかが問われた。
 この点について原子力規制庁担当官は「放射性廃棄物に関する事柄は資源エネルギー庁が主体で行っている」との説明であったので、今回説明者として出席している資源エネルギー庁担当官にこの点を質問したが、明快な回答はなかった。
 資源エネルギー庁はエネルギー開発には積極的であるが、放射性廃棄物処理処分などのいわゆる原子力バックエンドの問題には先送りや消極的としか考えられない。
放射性廃棄物処理処分に伴う放射線防護や基準値の設定などは、マイナー部分として重要視されてこなかった。NUMOが行っている地層処分の検討でも地質や水理の専門家は多く関わっているが、放射線防護や安全性の専門家はほとんど関わっていない。
 このような状況で、はたして高レベル放射性廃棄物地層処分は処分地選定や安全性も含め、さらに住民の理解の基にうまく進むのか、大きな疑問がある。ここにも原子力の下流側が疎かになっている現状が浮彫になっている。

おわりに
 昨年、参加者動員不祥事を引き起こした後を受けて再開された「説明会」は、それまでの不適切な事柄を改革して再出発する旨が謳われている。ところが、再開した説明会は昨年と内容はほとんど同じであった。変わったのは説明時間を短くして、参加者からの質問時間を多くしたくらいである。
 前記したように、「改革の提言」が評議員会から出されている。が、提言は無視された状態で従来の繰り返しである。これでは、国民を欺く結果と言わざるを得ない。参加者からも厳しい批判が続出した。このような状況を国、NUMOは謙虚に受け止めて職員の意識改革も含めた「提言」にある改革を進めて行くことがNUMOに課せられた最大の課題と考える。

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