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再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワークの在り方(3)〜系統制約、調整力、洋上風力〜 松本真由美(東京大学教養学部客員准教授)2018.4.12

 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会が2018年2月22日に第3回、3月22日に第4回が開催された。第3回の論点は大きく分けて「系統制約の克服に向けた具体策」と「海域ルールの整備」について、第4回の論点は、「調整力の確保」、「入札の活用等による価格低減と再エネ自立化」、「2030年以降の次世代電力ネットワークの構築」等である。本稿では、この2回の委員会でのいくつかの論点について解説したい。

◆系統制約の克服策
 まず、系統制約の克服に向けた対応の全体像をご覧いただきたい。(図1)発電事業者の声として、系統に「つなげない」、接続コストが「高い」、接続に要する時間が「遅い」の3点が課題として出されている。これに対して「日本版コネクト&マネージ」(※再エネ・次世代NWの在り方(2)を参照ください)や「費用負担の見直し、コスト削減徹底」、「情報公開・開示の徹底」などが系統制約への克服策として示された。


図1)再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 第3回配布資料

 欧州においても再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及拡大などを背景に、電力ネットワークへの投資は拡大しており、欧州全体で送電単価は上昇傾向にある。日本においても新たなネットワークの構築が必要となるが、その一方、既存ネットワークをフル活用することも重要である。各電力会社には、想定潮流の合理化、日本版コネクト&マネージの検討を促すとともに、電線やスマートメーターなどの仕様を標準化し、徹底的なコスト削減と効率的な送電網の構築を求めている。

 しかし、新規のネットワークの構築については、①人口減少に伴う構造的な需要減少に向かい、現行の制度では中長期の投資に対して回収が困難になること、②系統増強の必要な地域の電力会社が大部分の増強コストを負担し、その結果再エネの入る地域の電気料金だけが上昇する懸念、といった課題への対処が必要となる。
 新規のネットワークへの確実な投資回収の方法については、託送料金制度の見直しなど実務面の論点を議論している。合意に至った論点の一つが、発電事業者に託送料金の一部を負担させる「発電側基本料金」を導入することである。再エネを含めて電源の区別なく発電側基本料金をkW一律で課金することを原則とするが、FIT買取期間中の再エネへの調整措置については、調達価格等算定委員会で議論される見込みである。

 「電源情報の公開・開示」については、再エネの余剰電力発生時の出力制御量の予見可能性を高めることやファイナンスの観点などから、進めていくべきとの委員の意見が多数を占めた。しかし、発電事業者側から情報開示による入札時の競争力低下など懸念が示された。一方、欧米では30分〜1時間単位で電源の出力実績が公開されている。(図2)欧米ではできて、なぜ日本ではできないのか、その背景を整理して検討を進めるべきとして、議論は次回に持ち越された。


図2)再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 第4回配布資料

◆調整力確保の具体策
 太陽光や風力など変動電源が増大していく中、調整力の確保について、第3回、第4回の委員会で活発に議論された。電力自由化による発送電分離が進む欧州や米国の一部の州では「需給調整市場」が導入され、周波数調整や需給調整といった、さまざまなアンシラリーサービスが系統事業者に提供され、電力需給の安定化に貢献している。日本でも2020年を目途に需給調整市場が創設される予定で、市場を通して、電力会社間のエリアを超えて調整力を確保できる見通しである。

 「ディマンドレスポンス(DR=需要応答)」も調整力として期待されている。DRとは、電力卸市場の価格高騰時や電力需給の逼迫が予想される時に、需要家側の電力使用を抑制するなど、電力の供給状況に応じて電力需要(消費パターン)を変化させ、需給を安定化させる手法のことである。ネガワット取引が2017年度からスタートしているが、これはDR事業者が需要家である工場などに数時間の節電を要請し、その節電した電力(ネガワット)の対価を得る仕組みである。ネガワットは「下げDR」の手法だが、晴天時の太陽光発電など再エネの余剰電力を吸収する「上げDR」の活用も検討されている。(図3)


図3)再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 第3回配布資料

 現在、再エネの余剰電力を吸収する調整力として利用の頻度が高くなっているのが、揚水発電である。揚水の発電コストが高いことから経済性の確保が厳しい設備もあるが、調整力確保の観点から、今後も一定量の設備を維持していく必要がある。また電力会社の地域間連系線についても、広域的な調達運用を確実にするため、一定の枠を調整力として確保することについて議論された。一律に5%の枠を調整力としてとっておくというのではなく、その割合は各電力会社の運用実績に基づいて検討されることになる。

◆海域ルールの整備の新法案を閣議決定
 欧州では英国、デンマーク、ドイツ、ベルギー、オランダを中心に、洋上風力発電は年1〜2GW(100万〜200万kW)規模で成長している。政府が主導して開発可能地域を指定し、環境アセスメントを進め、地元との調整を図り、事業者の開発リスクを低減させる環境を整備していることが背景にある。あわせて入札制度を導入し、発電コストを大幅に低減させることにも成功している。第3回委員会では、日本でも洋上風力発電を促進していくために海域ルールの整備に関する法案を提出したとの報告があった。

 政府は2018年3月9日、洋上風力発電などを実施する際の一般海域の占用ルールを定める「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」を閣議決定した。「促進区域」を国が指定し、先行利用者との調整の枠組みを設定することになる。公募により事業者を選定した上で、最長30年間の占用を可能にするものだ。現在は統一的なルールが整備されておらず、一般海域の占用許可は都道府県により異なり、3〜5年程度である。
 2030年度までに5区域での事業化を目標に掲げ、今国会での成立を目指す。日本の洋上浮力発電の現在の導入量は約2万kWだが、環境アセスメント手続き中の案件は430万kWとなっている。日本でも促進区域を国が指定するなど環境を整備し、入札制度を導入することにより、洋上風力発電の普及拡大を目指すことになる。

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