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再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワークの在り方(4) 〜中間整理〜 松本真由美(東京大学教養学部客員准教授) 2018.6.1

 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の第5回(4月17日)、第6回(5月15日)会合で約5カ月間にわたる検討内容を整理し、その中間整理が5月22日に公表された。今夏の閣議決定を目指し策定が進められている第5次エネルギー基本計画の再生可能エネルギー政策に反映されることになる。中間整理の柱は、次の4つである。(1)再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組、(2)再エネ大量導入を支える次世代電力ネットワークの構築、(3)主力電源化に向けた電源ごとの対応、(4)包括的な取組、である。本稿では、中間整理の各要点をまとめたい。

(1)再生可能エネルギーの主力電源化に向けて
 再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化に向けた主な取組は、「コスト競争力の強化」と「長期安定的な発電を支える事業環境の整備」である。(図1)世界的には再エネの発電コストは大幅に低下してきているが、日本は海外に比べると発電コストが高い水準にある。固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2012年7月移行、太陽光発電を中心に再エネの導入拡大が進み、2016年度の再エネの電源構成比率は約15%となった。2016年度のFIT制度による買い取り費用総額は2.3兆円となり、そのうち賦課金は1.8兆円となっている。FIT制度のもと5%程度の再エネが増えたが、2030年度の再エネ電源比率の目標22〜24%における買取費用総額は3.7〜4、0兆円(賦課金は約3兆円)の前提を踏まえると、あと7〜9%の追加の再エネ導入は、できるだけ買取金額(賦課金)を抑えていく必要がある。

 コスト低減への政府のアクションプランとして、入札制度の導入、洋上風力発電を想定した一般海域利用法案(通常国会に提出中)、ペロブスカイト太陽電池やスマートインバーターといった革新技術の開発を進めていく。また、自立化に向けたFIT制度の在り方を見直し、入札制や卸電力市場への直接販売等の手法を組み合わせながら、自立化への橋渡しとなる仕組みをつくっていく。


図1)「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」資料

 「長期安定的な発電を支える事業環境の整備」については、FIT制度のもと、太陽光発電に偏重した導入が進んできた現状に対して、次の5つの施策を進めていく。①FIT制度の運用ルール見直し、②太陽光パネルの廃棄対策、③FIT制度から自立した再エネの新たな活用法、④住宅用太陽光発電に係わる2019年以降のFIT買取期間終了を契機とした対応、⑤立地制約のある電源の導入促進、である。

① FIT制度の運用ルールについては、改正FIT法が2017年4月に施行され、未稼働案件の設備認定取消などの措置が実施されている。太陽光の以外の風力、バイオマス、中小水力、地熱についても、2018年度以降に認定する案件は運転開始期限を設けるとともに、運転開始後に発電出力を増加させる場合は、調達価格をその変更時点の価格に変更する。

② 太陽光発電設備は2040年頃に太陽廃棄時代が予想される。発電事業者には廃棄費用の積立てが課せられているが、それを担保するための施策の検討を開始する。

③ FIT制度からの自立した再エネの新たな活用法として、自家消費を中心とした需要家側の再エネ活用モデルへの補助金等の支援。非FIT電源を対象とした非化石価値の市場取引を進める。(初入札は2018年5月18日、以降は3カ月毎)

④ 住宅用太陽光発電の2019年問題については、自家消費、または相対・自由契約による売電についての広報・周知を徹底する。

⑤ 立地制約のある電源である風力や地熱について、環境アセスメントの迅速化を関係省庁と連携していく。洋上風力は、海域利用のルール整備や入札制等を組み合わせた「セントラル方式」により導入促進。

(2)再エネの大量導入を支える次世代電力ネットワークの構築
 日本の電力ネットワーク(NW)は、これまで主に火力や原子力等の大規模電源と需要地を結ぶ形で形成されてきた。今後、分散する再エネの大量導入を支えるためには、再エネ事業者から「つなげない」「高い」「遅い」といった声が挙げられる系統接続問題を解決する必要があり、次世代電力ネットワークの構築が求められる。(図2)


図2)「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」資料

 系統制約の克服策として、次の7つの施策を進めていく。①日本版コネクト&マネージ、②需給バランス制約による出力制御における経済的調整、③出力制御の予見可能性を高めるための情報公開・開示、④系統アクセス業務等の改善、⑤再エネ大量導入時代におけるNWコスト改革、⑥ルール整備を補完する仕組み、⑦2030年以降を見据えた次世代電力NWシステム、である。

① 日本版コネクト&マネージは、想定潮流の合理化、N-1(エヌマイナスイチ)電制、ノンファーム型接続から成るが、2018年度から、一般送配電事業者が想定潮流の合理化の考え方に基づき、送電線の空き容量の算定を行う。

② 需給バランス制約による出力制御については、直前であっても出力制御が可能な大規模の再エネ設備に対して指令を行う等の手法を活用する。

③ 出力制御の予見可能性を高めるための情報公開・開示については、九州や東北など必要性の高いエリアから、出力制御のシミュレーションの精度を高めるために必要となる電源の情報公開・開示を進め、利用者が情報にアクセスできるようにする。

④ 系統アクセス業務の改善については、再エネ事業者が支払う系統増強の工事負担金について、分割払いが認められる場合の基準のルール化を進める。また工事が長期化する背景に、工事現場の人材不足の問題があることから、全国大での限られた人材を最大限に活用する方策を検討する。

⑤ 再エネ大量導入時代のNWコスト改革については、系統接続費用を抑えていくため、既存NWを最大限に利用し徹底的なコスト削減を図る。次世代NW投資を確保するため、託送料金の見直しや費用回収するための仕組み等を検討する。

⑥ ルール整備を補完する仕組みとして、再エネの接続問題等の事例集をつくり、相談・紛争処理機能を強化していく。

⑦ 2030年以降を見据えた次世代電力NWシステムのイメージは、図3に示す。この将来像を構築するためのコストを誰が、どのように負担していくのか、継続的に議論する。


図3)「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」資料

(3)主力電源化に向けた電源ごとの対応
 主力電源化に向けた電源ごとの対応については、「急速なコストダウンが見込まれる電源」として太陽光と風力、「地域との共生を図りつつ緩やかに自立化に向かう電源」として地熱、中小水力、バイオマスを位置付けた。現時点で行うべき主な対応と将来像を示した。

● 太陽光発電は、小規模太陽光(10-50kW)は、太陽光発電協会(JPEA)で検討中の「評価ガイド」の活用によるメンテナンスの適正化、セカンダリー取引環境の整備を進める。小規模の将来像は、地産地消電源としての活用。大規模の将来像はコスト競争力が特に高い大型電源として市場売買で活用する。

● 風力発電は一般海域ルールの整備を進め、洋上風力の技術開発・実証を進める。将来像は、コスト競争力が高い大型電源として市場売買で活用する。

● 地熱発電は、国立・国定公園等でのポテンシャル調査を引き続き実施し、地熱資源の探査精度の向上など技術開発を進める。将来像は、中規模のベースロード電源として市場売買で活用。

● 中小水力発電は、新規地点の開発のための流量等の立地調査への支援を行う。将来像は、地元の治水目的などと合わせて地域密着で事業推進。

● バイオマス発電は、2018年度から大規模を対象に入札制の運用開始。将来像は、地域の農林業と合わせて多面的に推進する。

(4)包括的な取組
 成長する海外の再エネ市場に目を向けると、日本企業は高い技術力を持つにもかかわらず、ヴェスタス(デンマークの風力発電機メーカー)やイベルドローラ(スペインの多国籍電力公益事業)のような世界で競争できるグローバル企業が不足している。再エネの主力電源化に向けた取組を着実に進めながら、再エネを活用した新たなビジネス、系統運用技術や蓄電技術、水素貯蔵技術などにおけるグローバル・プレーヤーの育成を経済政策として推進し、国の経済成長につなげていく。

 以上が中間整理の要点である。各課題への解決策へのアプローチとアクションプランが提示され、法整備も含め、いつ結論を出すのか等の具体的なスケジュールも示された。一方、継続して検討されるべき課題も多く、第5次エネルギー基本計画の閣議決定後、時間をおいて同小委員会で議論されることになるだろう。

■中間整理の参照先

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
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