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「核燃料サイクル」の値段 此村守(福井大学附属国際原子力工学研究所 客員教授) 2018.6.13

 現在の軽水炉発電ではウランの約5%しか電気にできず、残り95%を捨てています。「核燃料サイクル」とは、この捨てているウランをリサイクルして、新たな資源にしようとする技術です。その結果として、90%以上のウランを電気に変えることができるようになります。

 普通、リサイクルするとその結果としての製品は、原料から直接作った製品に比べて、高くなります。リサイクルするために分別・回収という手間が余計にかかるからです。「核燃料サイクル」もリサイクルの一種ですから、当然その分値段は高くなります。それではなぜ原子力の場合、「核燃料サイクル」の値段と、リサイクルせず直接捨ててしまう「直接処分」の値段とが議論になるのでしょうか。

 普通のゴミの場合は、回収して焼却炉で燃焼させて焼却灰に変え、埋立地に埋設するということになります。使用済み核燃料をこのような簡便な方法で捨てられれば、そうではない「核燃料サイクル」の方が値段ははるかに高くなるのは明らかです。しかし、残念ながら、強烈な放射線を出す放射能があるため、使用済み核燃料をこのような簡便な方法で捨てることはできません。

 もう一つ「直接処分」を難しくする要因は、熱を出していることです。この熱をうまく除いてやらないと、使用済みであっても核燃料が溶けてしまいます。この熱は100年後に最初の量の半分に、1000年後に10分の1になります。

 そのため、取り出し時の核燃料集合体の形状のまま「収納容器」に入れた後、長い間冷やす必要があります。その後、別な「堅固な容器」に入れて捨てることになります。問題は、この長い間という時間がどの程度になるのか、その間使用済み核燃料に破損は起こらないのか、起こったとしても大丈夫なように作られている「収納容器」の健全性はこの期間保証されているのかという点です。
 さらに、処分後の「堅固な容器」の寿命が、使用済み核燃料の放射能レベルが天然ウラン並みになる約10万年あるのかということも問題です。つまり、「直接処分」では容器の健全性を長い間にわたり保証できることが肝になります。

 このように、使用済み核燃料の場合は、普通のゴミのようにほとんど何も処理をせず直接に処分するという概念は取り得ません。「直接処分」と言っても、その中身は化学プロセスを用いないだけで、放射能を超長期にわたって閉じ込め続けるという機能を維持させる必要があります。そのため、容器の材料の値段、処分期間途中での容器の詰め替えに必要な値段というものを考えなければなりません。つまり、普通のゴミで使われている直接処分の考え方とは全く異なるということです。

 「直接処分」が、化学プロセスを使わずに捨てる方法であるのに対し、「核燃料サイクル」は、使用済み核燃料を化学プロセスにかけます。そして、役に立つ物質を取り出した後の残りを、熱除去できる程度に薄めてガラスに閉じ込めて捨てるという方法を取ります。実は、役に立つ物質を取り出すということは、その分の熱を取り出すということでもあり、残りの捨てられる物質の熱も減らしているのです。

 ところで、この気の遠くなるような長い間にわたり、健全性を維持できる容器の材料はあるのでしょうか。今の私たちは原子力発電を使い始めてから50年程度です。使用済み核燃料の保管経験もこの程度です。「直接処分」では、千年、十万年と容器の健全性を保証しなければなりません。これはまだできていません。では「核燃料サイクル」はどうか?

 「核燃料サイクル」ではガラスに放射性物質を溶かし込んで捨てます。その際の放射性物質の量はガラスに影響を与えない程度です。なぜガラスを選択したのか。エジプトや今のイラクに相当するメソポタミアで、今から6000年前ごろの紀元前4000年以前のものと思われるビーズ様のガラスが発見されました。つまり、6000年の間、ガラスは変質しなかったのです。長期にわたり安定であるという物的証拠が提供された唯一の材料と言えます。「核燃料サイクル」の方が「直接処分」よりも格段に信頼性があるのではないでしょうか。

 さて、「核燃料サイクル」の値段は「直接処分」の値段よりも5割くらい高くなります。この5割り増しの部分で、有用な核燃料を取り出し「エネルギーの長期持続性」を維持でき、さらに捨てた後長い間にわたり安定であることが確かめられている材料があるため、「安全」の信頼性を高めることができます。
 別の見方をすると、「直接処分」では、単なる廃棄物でしかないプルトニウムを処分してもらうために、お金を払わなければなりません。一方、「核燃料サイクル」では、原子爆弾の製造ができない形にしたプルトニウムを核燃料とする事で、お金を稼ぐことができます。「直接処分」ではできないことが、もう半分お金を増やすことで、できるようになるのです。この技術開発を将来の世代のために継続しないのは、とても勿体無いと思いませんか。

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