日本エネルギー会議

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新エネルギー基本計画のメッセージ 豊田正和(一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 理事長)2018.6.8

 5月中旬に、総合エネルギー調査会基本政策分科会において、第五次エネルギー基本計画(以下エネ基)案が了承され、パブリックコメントを求めるプロセスに入った。
 小生も、委員の一人として参画したが、2つの大きな論点があった。
 第一に、3年前に作成されたエネルギーミックスを維持すべきか否か。第二に、気候変動に係るパリ合意を踏まえ、2050年におけるあるべき姿から見て、今の段階から留意すべきことは何か。
 前者については、「2030年のエネルギーミックスの確実な実現を目指す。」とされた。石油危機直後の20年間並みの省エネルギー努力(35%の原単位改善)を前提にして、電源構成においては、再生可能エネルギー(以下再エネ)22~24%、原子力20~22%、天然ガス27%、石炭26%、石油3%とされていた。
 一部の委員から、原子力については、「国民の信頼が得られていない」、あるいは、「進展スピードが遅く実現は困難であり目標を引き下げるべき」との声もあったが、多くの委員は、「決して早くは無く課題もあるが、進展は着実であり目標は維持すべき」として委員長一任となった。
 それでは課題は、何か。
 第一に、「主力電源化に向けた取り組みが必要」とされた再エネにおける太陽光発電への偏重とコストの増大だ。2012年に全量買取制度が導入されて以降、(昨年3月時点の)認定量は、90ギガ・ワット近いが、その約8割が、太陽光発電であり、夜間に発電しないため、系統への統合が容易ではない。また、買取価格が高い太陽光発電がゆえに、既に、認定済の計画がすべて実現すると、今後20年間で、ユーザーは累積凡そ51兆円(電気料金で2.9円/kWh)の負担を負うこととなる。
 このため、電気代は、家庭用では12%上昇、産業用では18%上昇となる。メガソーラーには、オークションを導入し買取価格の低減を図り、風力など進展の遅いものの買取価格をできるだけ維持するなどの扱いを講じている。しかし、高コスト問題については、これだけでは不十分であり、発電コストの安い原子力の再稼働を急ぐ必要がある。既に、4基の原子炉が再稼働しつつある関西電力は、電気代の引き下げを宣言した。再エネと原子力を対立するものととらえる向きもあるが、共に気候変動対策と安全保障に優れ、コスト面では補完関係にあるとの理解を共有したい。
 一方、2030年以降の再エネの主力電源化のためには、再エネの導入コスト自身を他の先進国並みに下げる努力は不可欠であろう。日本では、太陽光発電の稼働率は、中東のドバイなどと比べ半分であり、倍のコストになるのはやむを得ないが、独と比べても、2倍近いコストとなっているのは、残念である。パネルコストというよりは、工事費の低減が必要である。国土が山がちであること、細長い島国であり、他国との系統連結が無いのみならず、国内連系も弱いことにも原因がある。海外からの企業の参入などによる新しい競争が望まれる。
 第二に、「原子力の再稼働の加速化」である。5月末時点で、原子力規制委員会(以下規制委)の使用前検査に合格した原子炉は、7基。そのうち、1基は、広島高裁の仮処分により、稼働停止している。エネルギーミックスの目標を達成するには、80%の稼働率実現を前提にして30基程度の再稼働が必要である。福島の復興を急ぎ、国民の信頼回復を図りつつ、安全性を害することなく、加速化を図る必要がある。このためには、国際原子力機関(IAEA)の指摘する規制委の規制の「最適化」と、企業の「迅速な対応」が求められる。
 第三に、「2050年を見据えた取り組み」としては、何をなすべきなのか。
 今回のエネ基では、2050年に向けた複数のシナリオを念頭に、日本の技術自給率を上げる必要があり、今すぐにも、脱炭素化に向けて、世界をリードしている蓄電池や、ゼロカーボン水素の開発を加速すると共に、原子力については、「安全性、経済性、機動性に優れた炉」を追求すべきとしている。残念ながら、太陽光パネルや風力設備分野では、日本より、比較優位性のある国々が少なくない。日本は、むしろ、比較優位のある分野でリードすべきとしている。エネルギー政策に、産業政策的視点を入れたわけだが、重要な視点だ。日本のみならず、世界への貢献にもつながろう。
 蓄電池や水素は、間欠性のある太陽光や風力の脱炭素化したバックアップとしても期待されるであろうし、蓄電池は電気自動車、水素は化石燃料とCCS(炭素捕獲技術)を組み合わせれば、化石燃料の座礁資産化を防止し、中東など化石燃料産出国の経済安定化にも資するであろう。
 一方、原子力設備の新増設については想定していないとしされているが、より国民の支持を得やすい新型炉を追求して準備運動を進めるべきとしていると理解したい、第二の論点については、並行して審議が進められたエネルギー情勢懇談会の「2050年までに、温室効果ガスの80%の排出削減」のために、何をすべきか、欧米の有識者を招いて行われたエネルギー情勢懇談会の議論を踏まえて行われたことを申し添えたい。

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