日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

気になる若者達のエネルギー意識 日景弥生(弘前大学教授)

先日、打合せのためにエネルギー関連団体の方がみえた。いろいろお話するなかで「若者は何から情報を入手しているか、エネルギーについてはどのように考えているのかについて知りたいと思います」と言われたことが気になった。
早速、調べたところ日本原子力文化財団(以下、財団)などの調査結果があることがわかった。財団の調査は、全国規模の世論調査で、かつ定点的、経年的に実施されている貴重なデータである。それや他の調査も参考に、これから行う講義に反映させるために、受講者である学部2年生100名(男性45名、女性55名)に簡単なアンケートを行った。興味ある結果が得られたのでお知らせしたい。

学生達の情報入手手段は、「スマートフォン」が98%でほぼ全員、次いで「パソコンやタブレット端末など」が77%となり、それ以外の手段はなかった。持ち運びが可能でかつ扱いが簡単な機器を使用していた。エネルギーや環境問題についての情報入手先(複数回答)の上位3位は、「テレビ」82%、「SNS(ツイッター、フェイスブックやミクシィなど)」74%、「友人や家族」28%となった。「テレビ」と「SNS」からの入手が非常に多かったが、「友人や家族」は第4位の「新聞(21%)」を上回っていることがわかった。また、「メディア(テレビ、新聞、雑誌など)に触れる時に、エネルギーや環境問題に関する記事や情報の意識」では、「あまり意識していない」が67%(男性は約64%、女性は約69%)と最も多く、次いで「意識している」21%、「全く意識していない」7%、「とても意識している」5%となり、意識していない者が74%と高率になった。この結果は、財団の調査結果「男女ともに若年層(10~20代)の関心が低い」と同様だった。「環境問題や原子力発電、放射能の問題について、最も信頼できる情報源はなにか(複数回答)」では、「国、地方公共団体、その外郭団体」70%、「国連などの国際的な機関」64%、「大学や研究機関の研究者」40%となった。思いのほか多かったのが第5位の「メディアなどに出演し発言するジャーナリスト・評論家」21%となり、上記のように情報入手先の第1位がテレビだったことから、テレビを通してジャーナリストや評論家の説明や意見等をそのまま取り込んでいることがうかがえた。

次に、エネルギーに関わる8つの項目について4つの選択肢から1つを回答させた。8項目とも肯定的な意見が半数以上だった。なかでも「エネルギーは安定的に供給されるべきだ」「エネルギーは誰もが使える値段で供給されないといけない」は「そう思う+どちらかといえばそう思う」がいずれも99%となり、そのうちの「そう思う」も順に68%、63%と高率だった。また、「環境問題の解決には、一人ひとりの行動が大切」も高率で、「そう思う+どちらかといえばそう思う」は94%、そのうちの「そう思う」も62%となり、「行動する市民」(本HPに2017.7.14掲載)の重要性を意識していた。

性別による違いがみられたのは、ただひとつ「日本は原子力発電を続けた方がよい」であった。上記のように肯定的な意見が半数以上(この項目の肯定的意見は65%)だったが、性別でみると男性は約73%、女性は約58%となり、女性の方が低かった。そこで、原子力発電の継続に肯定的なグループと否定的なグループに分類し、他の項目をみたところ、原子力発電の継続に否定的なグループは「他国からの輸入に依存しない方がよい」が高い傾向を示した。これは、日本のエネルギー自給率等についての知識がないことが背景にあると思われる。そのため、「原子力発電を継続しない」で、かつ「他国からの輸入もしない」回答は、“願望”は理解するが、現時点では実現は困難であり、両者は矛盾することを学生達は理解していない。ご存じのように、2012年度から中学3年生を対象に「放射線の性質と利用」の学習内容が新たに組み込まれた。その学習指導要領で学んだ学生達ではあるが、残念なことにエネルギーの知識は必ずしも定着していないように思われた。

また、「現代の技術は、環境問題をうまく解決してくれる」は、8項目中最も肯定的な意見が少なかった項目(全体で54%)だった。学生達は、環境問題解決には一人ひとりの行動が大切であり、現代の技術では不十分と思っているようだ。ここでも同様に、環境問題の解決には、個人レベルの努力はとても、そしていつも大切だが、省エネ・省資源等の技術なしには、現時点では困難であることを学生達は理解していない。

これらの結果から、学生達はある程度の知識をもっているが必ずしも十分ではなく、またそれらの知識は断片的で、関連性や発展性がみられないことがうかがえた。2021年度から実施される新学習指導要領でも、中学生に対する放射線教育は継続される。指導者は知識の伝達に留まらず、知識を他の事象等と関連させて基礎的な知識を応用・深化させる手立てが必要である。基礎的教育の継続と論理的・批判的に思考する場面を設定し、エネルギーに関心をもたせる学習が、資源に乏しい日本における将来のエネルギーについて考える市民を育成するであろう。これらの結果を踏まえ、これから行う講義を充実させたい。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter