日本エネルギー会議

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COP24の成果をどのように考えればよいであろうか? 小川芳樹(東洋大学 経済学部 学部長)

気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)は、2018年12月初めから2週間の予定でポーランドのカトヴィツェで開催された。様々な対立によって議論は難航したものの、会議期間を丸1日強延長して当座のゴールは何とか潜り抜けることができたといえる。2020年から始まるパリ協定の実施期間を滞りなく迎えるため、今回のCOP24は同協定の詳細ルール(実施方針)に関して最終的な合意に達することを待ったなしの目標とする重要会合であった。

2015年12月のパリ協定採択にあたっては、米国と途上国を主導する中国の連携が非常に強い牽引車となったといえる。しかしながら、オバマ政権を引き継いだ米国のトランプ政権は2017年6月に早々とパリ協定から離脱してしまった。この米国トランプ政権と貿易戦争の対立を深める中国は、気候変動問題に主導力を割ける大きな余裕を持てない状況へと陥った。今回も多様な利害を抱える途上国と先進国の対立が交渉を長引かせる中心的な要因となった。

詳細ルール(実施方針)の議論で第一の障壁となったのは、先進国・途上国の二分論へ引き込みたい途上国とあくまで共通ルールの採択を通したい先進国の対立であった。途上国は、国別目標の対象範囲に適応や資金支援を加え、国別目標の補足情報提出を差別化し、報告・レビューの透明性ルールを途上国全体に柔軟化することなどを求めた。結果は、途上国の主張も一部は通ったが、基本的には先進国に軍配が上がり、共通ルールの採択という決着に落ち着いた。

第二の障壁となったのは、資金支援に関する見通し情報の提供を巡る対立であった。途上国はこの手続をルール化してレビュー・プロセスに入れることを要求したが、先進国は今回の交渉の権限枠外の問題であると主張して反対した。レビュー・プロセスへの導入こそ回避されたが、最終的には、事務局が報告書を作成してワークショップ等を開催すること、2020年に新資金目標の検討を開始することなどが合意された。この点では途上国に軍配が上がったといえる。

最後に第三の障壁となったのは、パリ協定で設けられた2つの市場メカニズムに関する詳細ルールを巡る対立であった。特定の途上国が京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)からパリ協定の後継メカニズムへ早期移管およびその例外適用を強く迫ったため、両市場メカニズムに関する詳細ルールの決定全体が次のCOP25へ先送りされる結果となった。この問題は必ずしも先進国・途上国間で大きく対立したものではないが、両者にとっては痛み分けの結果となった。

COP24の成果を整理すると、米国と中国というパリ協定の合意を主導した両国の影響力が相当程度弱まる中で、詳細ルール(実施方針)の採択に最終的に合意できた点はやはり高く評価すべきと考える。しかしながら、資金支援の取り扱いが途上国の思い描く方向へ進んだことは将来に禍根を残す結果と考えるべきであろう。途上国への資金移転は、CDMのように、途上国での削減に対応して実施される仕組みをパリ協定でも構築してそれを基本とすべきであると考える。

COP24の開催に先立って気候変動政府間パネル(IPCC)による「1.5℃特別報告書」が発表された。開催まで短期間であったため歓迎と警戒の両論が渦巻く中で、COP24でこの報告書に対する特定の判断は下されなかったといえる。しかしながら、近年、わが国でも世界全体でも異常気象による深刻な影響がすこぶる目立つ事態に至っている点を考慮すると、一般の人々がこの状況を回避すべきであると強い叫び声を真剣に上げる時期はもうそれほど遠くないように思われる。

この点を考慮すると、わが国は、先進国と途上国の対立に対するお付き合いをほどほどに留めて、むしろ気候変動問題に抜本的に対処できる革新的なイノベーションの追究と実現にこそその力を大きく注ぐべきである。最近の例を挙げるとすれば、LEDやリチウム電池等の開発と普及はそのことを如実に物語っているといえよう。革新的なイノベーションは今後も大きなポテンシャルが期待できるが、それを引き出す組織・制度のイノベーションも決して忘れてはならない。

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