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水素社会の実現に向けて ~海外での水素・燃料電池の利用動向~ 松本真由美(東京大学教養学部環境エネルギー科学特別部門客員准教授)

「水素社会」の実現近づく!安価な原料で水素を大量製造に続き、本稿では、海外における水素利用の動向について紹介したいと思う。
水素先進国はドイツ
水素エネルギーを積極的に活用する動きを見せているのは、ドイツである。2004年、燃料電池自動車(FCV)と水素ステーションの実証プロジェクト「Clean Energy Project(CEP)」を開始し、2007年より政府は技術開発へ資金投入している。2009年には、FCVと水素ステーションの全国的な普及を目指しインフラ整備を検討する「H2 Mobility」が発足した(図1)。2018年は2週間に1基のスピードで水素ステーションを設置しており、2019年中に国内で100カ所の水素ステーション設置が目標である。2023年までに400カ所の設置を目指す。(参考:H2 Mobility)

図1)ドイツ”H2 Mobility“の事例 出典)資源エネルギー庁

また、ドイツ北部に集中する風力発電(陸上・洋上)など再生可能エネルギーの大量導入に伴い、年間を通じて供給過剰が発生しており、余剰電力を水素で貯蔵する技術が注目されている。再エネの長周期の変動に対して、欧州ではドイツを中心に、数多くのPower-to-gas技術(余剰電力を気体燃料に変換して貯蔵・利用する方法)の実証が行われている。(図2)

図2)ドイツにおけるPower-to-Gas実証状況 出典)資源エネルギー庁

2018年9月18日、フランスの鉄道供給会社アルストム(Alstom)が開発した「Coradia iLint(コラディア・アイリント)が、国内で営業運転を開始した。これは、世界で初めて営業運転した燃料電池鉄道となる。車両の屋根の上に燃料電池と水素タンクを搭載し、床下にリチウムイオン蓄電池を内蔵し、電力を充放電する仕組みで走行する。水素タンクを満タンにした状態で、最大時速140キロメートルで、600~800キロメートルの距離を走ることができる。2両編成で座席数は合計150席あり、立った乗客を含めると300人まで乗車することができる。

コラディア・アイリント(アルストム社HPより)

米国での動向
全米50州の中ではカリフォルニア州が、もっとも水素の利用を進めている。同州では、2009年から自動車に対する排ガス規制「ゼロ・エミッション車(ZEV)規制」を実施。カリフォルニア州と東海岸地区の7州で、燃料電池車を含めたZEVを合計330万台導入するという覚書が交わされている。州内は27カ所のステーションがあり、2023年頃までに100カ所を整備する計画である。カリフォルニア州の助成で設置される水素ステーションで特徴的なのは、33.3%の再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオマス等)由来水素の供給を定めていることだ。 また、全米で燃料電池フォークリフトの導入が積極的に進められており、2万台超が導入されている。飲料メーカーや食品輸入業者など重量のある荷物を扱う業種で拡がりを見せている。

図3)ヴァージニア州の食品輸入業者FVフォークリフト導入 2017年7月6日feet auto news配信

中国での動向
中国では、2017年4月、「エネルギー技術革命のイノベーション行動計画(2016-2030年)」 で、水素・燃料電池を重点的に開発する15の目標の一つに掲げている。2016年10月、FCVの普及に向けたロードマップで、2030年までに燃料電池車(FCV)100万台、水素ステーションを1000カ所整備する目標となっている。政府は、自動車メーカーに対して、2019年以降の次世代自動車の販売比率を一定以上とする義務付けの方針「NEV(New Energy Vehicle:新エネルギー車)規制」を打ち出した。自動車メーカーは中国での生産・輸入量に応じて一定比率のNEVを製造・販売しなければならない。NEVの対象は電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)である。FCVの開発・実証事業の実施も積極的に行われており、海外企業のスタック製造工場の建設や、地方の地元企業のFCVバス製造の動きも活発化している。環境規制を強化する国や自治体において、水素利用技術は存在感を増しつつあり、重要になっている。

※次回は、国内における水素活用の事例について

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