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連載3回目【CO2回収・利用・貯留技術(CCUS)】山地憲治(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長)

CO2回収の現状と課題

今回はCO2回収を取り上げる。なお多くの場合、CO2回収は混合物からのCO2分離と分離後の回収の2つのプロセスから構成されるので、専門家はCO2分離・回収と呼ぶことが多いが、ここでは簡略化してCO2回収とする。

現在世界で行われているCO2回収事業
 温暖化対策が主目的ではないが、CO2回収は現在でも世界全体で年間約4000万トン規模で行われている。このうち半分以上は天然ガス精製に伴って回収されており、回収されたCO2の多くは、前回のCO2貯留の解説でも述べたように、石油の増進回収(EOR)に使われている。また、わが国でも溶接のシールドガスやドライアイス生産、野菜工場でのCO2施肥などのために年間約100万トンのCO2が回収・利用されている。なお、回収というプロセスを経ることなく化学品製造工程で発生するCO2利用も含めれば、尿素などの生産に伴い世界全体では年間1億トンを超えるCO2利用があると推定されている。
 このような現在の工業用CO2は、排ガスからのCO2回収と天然ガス(CO2を随伴することが多い)・プロセスガス(化学工場の副生ガスなど)からの回収によって生産されている。排ガスからのCO2回収については、三菱重工エンジニアリング社の化学吸収法による回収設備が世界市場の半分以上を占めている。

CO2回収技術
 現在商用化されているCO2回収技術は、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着分離法の4種類に大別される。CO2原料ガスの温度、圧力、不純物等の特性により適切な回収技術が選定される。商業化以前の技術も含めてNEDOが整理したわが国の各種回収技術の概要等を表1に示す。

表1 現状のCO2回収技術の概要・特徴(コスト目標・技術開発段階含む)

 なお、膜分離法に使う分離膜には無機膜と有機膜がある。無機膜は膜の孔のサイズによって物理的にガス分離を行う。RITEが開発中の分離膜は有機膜であり、孔にCO2との化学的親和性を持たせてCO2を選択的に透過させる技術で分子ゲート膜と呼ばれている。
現在利用されているCO2回収技術の主体は化学吸収法であるが、化学吸収法ではアミン系の吸収液とCO2との化学反応を利用してCO2分離を行う。その後、加熱して吸収液からCO2を再生・回収する。温暖化対策として大量のCO2回収を行う場合には再生・回収に要するエネルギーを小さくすることが求められる。RITEが新日鐵住金とともに開発した吸収液は、再生温度100℃以下、回収エネルギー2.0GJ/t-CO2で、工業用CO2生産向けではあるが既に商用化している。また、表1で固体吸収として整理されている固体吸収材によるCO2回収もRITEが開発中の技術で、これはアミンを多孔質担体に担持して使用するので再生時に比熱の大きい水を加熱する必要がなく、CO2回収エネルギーを1.5GJ/t-CO2以下にできる見込みを得ている。
 表1に示した分類以外のCO2回収技術として、純酸素燃焼とケミカルルーピングがある。純酸素燃焼では燃焼生成物がCO2と水蒸気なので気水分離が使える。ただし、酸素製造に追加コストとエネルギーが必要になる。純酸素燃焼の中にはクローズドIGCC(石炭ガス化複合サイクル)という形態もある。クローズドIGCCではガス化炉でも空気を使わず酸素を使い、石炭搬送にも回収CO2を使う。また、ケミカルルーピングとは、例えば鉄のように酸化物が複数ある化学物質を使って石炭を燃やし、酸素が減った酸化物に再び酸素を付加して繰り返し利用するシステムのことで、このプロセスでも生成物はCO2と水蒸気だけになるので容易にCO2を回収できる。ケミカルルーピングには、他にもセメント工場でのカルシウムルーピングなど種々のアイデアがあるが、まだ実用化には遠いと思われる。

CO2回収の課題
 今まで説明したように、CO2回収は市場価値がある工業用CO2生産向けにはすでに実用化している。しかし、CCUSに適用するには更なるコスト削減が必要である。そのためには、CO2回収エネルギー低減をはじめ、ガス源の特性(温度、圧力、不純物)に適した種々の技術の開発を並行して進めることも大切である。一方では、回収するCO2の純度に厳しい要件が求められる工業用CO2生産とは異なり、CO2を地中に隔離するCCSでは回収CO2の濃度や不純物に対する要件は緩和できると考えられるのでコスト低減の可能性もある。
 最近ではネガティブ排出技術として大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)も注目されている。毎年10月に東京で開催されている国際会議ICEF(Innovation for Cool Earth Forum)では注目すべき革新的温暖化対策技術についてロードマップを作成しているが、2018年にはDACが取り上げられている。DACでの回収技術は化学吸収法など従来の回収法の適用も試みられているが、イオン交換樹脂やカルシウムイオンなどの利用も検討されている。
 CO2回収技術は既に実用化しているといえるが、地球温暖化対策として大量の回収を経済的に行うためには課題も多い。

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