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連載4回目【CO2回収・利用・貯留技術(CCUS)】山地憲治(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長)

CO2利用(CCU)の現状と課題

今回はCO2利用を取り上げる。現在でもCO2は様々に利用されている。国内でも溶接用ガスやドライアイス製造などで年間約百万トンのCO2需要がある。最近では植物工場などでのCO2施肥も一般的になった。また、世界的には石油の増進回収(EOR)を主体として年間CO2需要は約8000万トンと推定されている。これらは商品としてのCO2の需要だが、その他にも尿素生産など化学品製造工程内で閉じた形態で発生・利用されているCO2は合計すると1億トンを超えている。ただし、これら全てが地球温暖化対策としての有効という訳ではない。温暖化対策としてのCO2利用の現状と課題を考えたい。

温暖化対策としてのCO2利用の意義
回収したCO2を貯留するCCSは廃棄物処分に相当し必ず追加コストがかかるが、CO2を商品として有効利用できれば収入が期待できる。つまり、CO2のリサイクル利用である。耐久性のある素材に変えてCO2を固定すればゼロ排出となるし、燃料に変換して化石燃料を代替して再び燃焼しても、もともと大気に放出される筈だったCO2が出るのだからCO2中立と主張できる。これがビジネスとして成立すれば確かに素晴らしい。

安倍首相は今年1月のダボス会議で、人工光合成技術などを引用して「今こそCCUを、つまり炭素回収に加え、その活用を考えるときなのです」と述べ、持論の「経済成長と環境の好循環」を実現するイノベーションとしてCO2回収・利用(CCU)への意欲を示した。また、この発言を受ける形で、経済産業省はCCU実用化に向けたイノベーション促進を目的に資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室を設置した。

カーボンリサイクルというと響きが良いが、地球温暖化対策として意義あるものにするには高いハードルがある。経済的合理性が求められるのはもちろんのこと、温暖化対策として十分な量のCO2を利用できるか、利用プロセス全体(ライフサイクル)を通して本当にCO2削減になるのか等を見極める必要がある。地球温暖化対策としては世界全体として年間で億トン規模の莫大な量のCO2利用が必要で、現状ではEORを除けば利用規模としては物足りない。ドライアイスや溶接用ガスなどの利用は、他のCO2排出活動を代替することなく、短期間でCO2が大気に放出されるので温暖化対策としての意義は認められない。なお、EOR用にCO2を利用した場合、石油増進生産時に一部は大気に戻るが多くは地中にとどまっている。

CO2利用技術の分類と評価
CO2利用技術は、CO2のまま直接利用する場合と化学的・生物学的変換を行って利用する場合の大きく2つに分類される。網羅性に若干懸念があるが、表1に具体的な技術とその評価例を示す。
表1 CO2利用技術の分類と評価例

出所:小島正彦、The TRC News 201806-04 、(株)東レリサーチセンター

表1に多少補足すると、化学的変換利用としてはCO2と水素からメタンを合成するメタネーションが最近は注目されている。
CO2利用技術については様々な研究開発が進められている。具体的には、水素とCO2からメタンやメタノールを合成して化学品や燃料を製造する技術(人工光合成も含む)、CO2を電解や高温熱で還元して合成ガス(CO+H2)を製造する技術、CaやMgイオンと反応させて炭酸塩を製造してコンクリート材料に利用する技術など様々な研究開発に取り組んでいる。このような化学変換を利用したCO2利用では、水素などの原料調達や化学反応に必要な投入エネルギーに伴うCO2排出を評価する必要がある。

CO2はエネルギー的に極めて安定な物質である(CO2の生成熱(エネルギー的安定度)は394kJ/molでガスの中で最も大きい)。従って、CO2を原料として化学合成をするにはほとんどの場合大きなエネルギー投入が必要になる。再生可能エネルギーや原子力を利用して、エネルギー投入に伴うCO2発生を抑制することが温暖化対策としてのCO2利用には極めて重要である。

また、研究開発中のCO2利用技術の多くで水素を使うが、温暖化対策としての利用のためには水素もCO2フリーで生産しなければならない。CO2フリー水素の製造にも多くの技術経済的課題があるし、水素をそのまま利用する場合との比較も行う必要がある。例えば、CO2と水素からメタンを製造する場合、1モルのメタン生産には1モルのCO2と4モルの水素が必要になる。メタンに変換すれば、既存の都市ガスインフラが使えるというメリットがある一方で、水素の持つエネルギーの20%以上が失われることも考慮しなければならない。

実際上無限にある大気中のCO2を回収して有効利用できれば、CO2利用はポジティブな価値を持つネガティブ排出技術となるなど、CO2利用(CCU)は潜在的には大きな魅力がある。同じような効果を持つBECCS(バイオマスエネルギー+CCS)で懸念されるような生態系への脅威も想定しがたい。このように、CO2利用への期待は高いが、CO2利用システム全体の評価を行って、温暖化対策としての有効性を慎重に検討する必要がある。

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