日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

【事務局】 福島事故対応にはオールジャパン体制の確立が不可欠

福島第1原発における汚染水漏れが判明し、これまでのタンク貯蔵方式を抜本的に見直した本格的な対策が求められている。安倍晋三首相は「東京電力ばかりに任せておくのではなく、国がしっかりと責任を持って対応する」と表明、対策費用に国の予備費を投入する意向を明らかにした。様々な場面で批判の矢面に立たされ、経営体力も底をつきながら、電力の安定供給を維持し続けている東電に対応を求めてきた、これまでの政策に無理があると各方面から指摘が出されていたが、今回の「国が前面に立つ」との決断は大きな進展と評価するべきであろう。

汚染水問題は原子力関連のみならず、土木、化学、地下水など多様な専門家の参加が欠かせない。まさに、「オールジャパン体制」で取り組む必要がある。ここには、原発容認も反原発もない、広範な技術、知識、経験の集積が求められる。政府の各省庁の壁も取り払い、民間企業、研究機関、大学なども積極的に参加して「目の前にある危機」を突破していかなければならないといえよう。

当初から、福島事故問題には国を挙げての対応が求められていると私どもは主張してきたが、やっとその段階に一歩踏み出したといえる。日本経済再生は、福島復興、福島事故収束を同時進行で進めなければ実現しないという認識の大切さを改めて表明しておきたい。

◆高まる「3つの対応」への期待
汚染水問題解決への大きな課題は3つある。まず、原子炉建屋に1日400トンの地下水が流れ込むとされるが、この地下水を建屋に流入する前にくみ上げて海に流す地下水バイパスの建設。このためには、どの地点にどのくらいの井戸を掘り、どういうルートで海に流せば問題がないのか専門家による慎重な事前調査が必要になる。

次は、汚染水から放射性物質を除去する多核種浄化システム「アルプス」による処理だ。現段階の技術では、62種類の放射性物質は回収されるが、化学的性質が水とほとんど同じトリチウムだけが残る。このため、「アルプス」を通した水を通常の水で希釈して海に放出するか、「アルプス」の性能を高めてトリチウムも回収できるシステムにできるかがポイントとなる。この際も、仮に処理水を薄めて放出する場合に地元、国際社会に受け入れられるか。ここでも、国が前面に立たなければ対応できるものではない。

さらに、原子炉建屋周囲の土を凍らせて地下水を流入させないようにする「凍土遮水壁」を作る作業。建設期間と有効性などで課題は残るが、政府は今年度予算の予備費を費用にあてる方針だ。この3点が対策のポイントとなるが、他にも必要とされる取り組みは山ほどある。
汚染水問題は経済産業省が中心になっているが、原子力規制委員会はもちろん、復興庁、文部科学省、国土交通省なども積極的に関わる必要があり、省庁の壁を取り払った政府一体の対応が求められている。

◆全面協力こそ民主党の責務である
 こうした対応は、本来、事故直後から指摘されていたものであり、前民主党政権でしっかりとした具体的な対策が実行に移されてしかるべきであった。しかし、「2030年代の原発ゼロ」をエネルギー・環境戦略とした前政権は、東電に全ての責任を“丸投げ”してしまったのが現実である。

福島事故から約2カ月を経た、2011年5月17日。政府は、原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相=当時)で福島事故の被災者支援の基本方針を決定している。そこには「原子力政策は国策として進めてきたもので、被災者はいわば国策による被害者。最後の最後まで国が前面に立ち責任を持って対応する」と明記されている。さらに、当時の海江田万里経済産業相(現・民主党代表)は決定後の会見で「原発は安全と信じて共存してきた皆様の、今回の事故で裏切られた、との強い思いに国は正面から向き合う。必ず事故を収束させ、皆様が再びふるさとに立ち、懐かしい我が家に帰るまで、国として支援に全力を尽くす」と語った。

その後、1年半、民主党政権はこの基本方針をどれだけ実行しただろうか。今回、安倍政権は改めて国が前面に出ると表明した。これに対して、民主党の海江田代表は党を挙げて全面的に支援するのが筋ではないか。決して背を向けることなく、安倍政権の現実的、建設的な福島復興、福島事故収束に協力を惜しまぬ姿勢を求めておきたい。

2013.9.3
日本エネルギー会議事務局

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter