日本エネルギー会議

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安倍首相は自信を持って福島復興に取り組むべし

2020年夏のオリンピック開催都市に東京が正式決定した。1964年以来実に56年ぶりの開催となるが、前回のオリンピック開催が日本経済の戦後復興からの脱却、高度成長期へ向かう大きな節目となった歴史を振り返ると、好転の兆しが見える我が国経済にとっても画期的なニュースといえよう。

アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会を前に、福島第1原発における汚染水漏れが判明、国際的にも東京開催の「マイナス材料」とされたが、自ら現地に乗り込んだ安倍晋三首相がプレゼンテーションの場で「汚染水の状況は完全にコントロールできている。東京には今までも、これからも何のダメージもない」と発言、懸念を払拭したのが開催決定の決め手になったのは間違いない。汚染水漏れ問題には、首相はすでに「国が前面に立つ」との決断を下して政府全体も動き出しており、これを機会に安倍首相には自信を持って国主導による本格的な福島復興対策を進展させることを望みたい。

◆専門家の声を改めて吸い上げる努力を
東京開催決定を歓迎する報道の一方で、メディアには首相発言が「国際公約」となり、実現できない場合の影響を指摘する論調もうかがえる。しかし、汚染水問題を解決することは「国際公約」よりも次元の高い日本の「国際責務」であり、現段階で実現不可能性を論じるのはあまりにもレベルの低い「減点探し」の論理でしかない。

汚染水問題は福島事故直後から専門家の間で、早期の本格的対応の必要性が指摘されていた。さらに、対策に関する具体的な提言も政府に出されている。ところが、こうした提言者の多くが原子力分野の専門家、電力会社と関係がある研究者などの理由を作り上げられ、いわゆる「原子力ムラ」のレッテルを貼られてしまい、当時の民主党政権において貴重な意見が採用されていないという現実を改めて指摘しておかなければならない。

こうしたレッテル貼りが、どれほどまでに事故の収束、福島復興への対策のスピードを鈍らせてきたか。さらには、今なお遅らせているかを政府はもう一度、根本からチェックし直し、見直すべきは見直す必要があると主張したい。

事故後に様々な提言を行い、「原子力ムラ」のレッテルを貼られてしまった専門家のほとんどは表舞台から離れたが、それぞれの問題意識を抱きつつ、小さな懇談会などを通じて真剣な議論を続けている。私どもも、出来得る限りこうした会合に出席、声や想いを受け止めてきたつもりである。全てに共通するのは、現実的かつ建設的、さらには具体的な話し合いが続けられていることだ。

政権も変わり、前政権の「原発ゼロ戦略」を見直す方針を掲げ、安倍首相自らが対応に乗り出したわけだから、レッテルを貼られた専門家も信念を持って、具体的な対策を改めて提言していくべき段階を迎えていると考える。政府もこうした声を率直に受け入れて、事故収束、福島復興に役立てていくべきではないだろうか。

◆福島復興に欠かせない放射線影響対応
福島復興対策で最大の課題として挙げられるのは、いまなお避難生活を強いられている約15万人にも及ぶ福島県民の方々への対応ではないだろうか。なかでも、対応が進まない最大の要因として専門家が挙げているのは、民主党政権下で定められた「追加被ばく線量、年間1ミリシーベルト以下」という基準。それに加えて、除染目標とされる年間1ミリシーベルトの見直しを指摘する声が多い。

後者の除染に関しては、当初から「1ミリシーベルトまでの除染は技術的にも不可能だ」との指摘があったが、この除染方針は変更されることなく、「今や福島復興の足かせになっている」というNPO法人関係者もいる。さらに、今年7月、産業技術総合研究所が「除染費用は最大5兆円」という試算を公表し、その費用対効果を問題視する専門家も多く、「除染目標を引き上げて、長期にわたって帰還できない地域の方々のためのニュータウン作りに活用したほうが建設的だ」との主張もある。

被ばく線量基準を見直せば帰還可能な県民も増える。健康上不安が残るという方々にはニュータウンを造って、そちらに住んでもらうというのも具体策の一つであろう。いずれにしても、放射線の健康影響に関する専門家の知見や地元県民への正しい説明が欠かせない。こうした問題は、日本国内のみならず世界的にも問題となっている、福島県産農産物などの風評被害を払拭することにもつながってくる。福島復興を果たすためには、放射線問題は避けて通れない。ここにこそ、政治決断が求められているのではないだろうか。

廃炉も含めた福島第1原発事故対応、福島復興の具体化といずれも困難な課題が山積している。ブエノスアイレスで見せた安倍首相の覚悟と決断なくして、こうした問題を前進させることはできない。それを実感させたオリンピック東京開催決定の9月8日早朝であった。

2013.9.10
日本エネルギー会議事務局

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