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【北村俊郎】 復興計画のリセットを(その二)

アンケート結果で「戻らない」が増えていることは何を意味しているか。多くの住民が避難当初、「早く戻りたい」と言っていた。だが、現実は帰還の環境条件は整わず、いたずらに2年半の月日が流れていった。

この間に、避難住民たちが体験したことは、計画通りに進まない除染、福島第一原発の事故処理における困難さ、汚染水の海への漏洩、一時立ち入りの際の町の様子、ねずみなど野生動物に汚される我が家、避難指示が解除され戻れるようになったが一向に住民が戻らない川内村、広野町の状況だ。さらには避難によって初めて体験した都会の生活の利便性、狭く窮屈だが家賃のいらない仮設住宅、すこしゆとりのある消費生活を支えてくれる精神的損害に対する月10万円の賠償金、いままで見たこともないような土地、家屋に対する多額の賠償金。嫁いだ娘と同居することにしたという知人の話、誰それがいわき市に家を建てた、会津に中古の家を買ったという話が聞こえてくる。

若い世代は持ち家ではなく、アパート暮らしだったので、住む場所に対する執着は少ない。幼い子供のいる世帯は放射能汚染のある場所にわざわざ帰らない。学生のいる世帯は、卒業するまで、今通っている学校を変更させてまでの移動は考えにくい。復興景気の県内では就職先が探せないということもない。  

古い世代は圧倒的に持ち家が多いが、親の代からの古い家で、いずれにせよ建て替えが必要だ。それには不動産の賠償金だけでは不足だ。自分たちが老人施設に入るまでは建て替えなくとも直せばなんとか住めそうだ。建て替える為には、古い家を壊さなくてはならず、100万円以上の余計な金が掛かり、瓦礫を処分するあてもない。避難している間にさらに年を取り、何年かすれば車の運転も出来なくなる可能性が高い。そうなれば、車なしの田舎暮らしは大変だ。都会にいれば、病院も近いし買い物も不自由することはない。

双葉郡でも福島第一原発から遠い地域は、ぎりぎり生活が成立するが、10キロ圏内の地域は、今から3年後でも生活していくことは難しいだろう。少なくとも中間貯蔵施設の周辺は無理だ。

状況は避難住民の「戻らない」との判断につながるようなものばかりだ。これを決定的にしたのは、皮肉なことに各自治体が懸命に努力した不動産の賠償結果なのだ。区域再編に当たっては、自治体は国との交渉において不動産の賠償問題を絡めて交渉をし、もっとも線量の高い帰還困難地域については、原則として土地や建物の固定資産税を計算する根拠となる評価額を基に一定の係数を掛けて賠償額を算定し、その全額を支払うことを国に約束させた。居住制限区域や避難解除準備区域に対してもこれを基に一定率を割引した金額にした。居住制限区域の場合、帰還が遅れれば帰還困難区域と同じく全額を支払うことにした。

不動産の賠償は今年の夏頃から始まり、既に多くの住民が賠償金を手にしている。また、家財についても既に世帯の人数に応じて一括支払いが済んでいる。その結果、自宅を置いて避難している住民の多くが新たに家を購入出来る程度の現金を得ることが出来たのである。これで避難先などでの新築意欲に一気に火がついたのは間違いがない。

住民たちが戻ってくれなければ、自治体の掲げた帰還、復興に係る計画は当然に計画倒れとなる。では、自治体はどうすればよいのだろうか。

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