日本エネルギー会議

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【北村俊郎】 復興計画のリセットを(その八)

双葉郡の自治体は廃炉、除染、廃棄物管理以外に、双葉郡の地理的条件、人口の少なさを活かせる産業にはどのようなものがあるのかを考える必要がある。   

双葉郡は福島県の東部を占め、太平洋に沿って南北に細長い。海岸から10キロ程は平野となっている。川は何本もあるが大河はなく、洪水は少ない。阿武隈山系からの地下水は豊富だ。気候は東北地方としては温暖で、冬季でも雪はほとんど降らず、一年を通して晴天が多い。台風は少ないが、夏季には平野で霧が発生し低温となり、昔の農業技術では農作は難しかった。地盤は河口以外概ね強固である。大きな都市はなく、人口密度は低かったが、原発事故で今後は、より低い人口密度となる可能性が高い。原発周辺に限れば、昼と夜の人口が極端に違う地域となるはずだ。景観としては、平坦な土地が続き、海岸も崖となっているため変化は乏しく、国定公園などに指定されているところはない。

距離的に東京や仙台に比較的近く、国道が南北に走り、並行する常磐高速道路も来年には双葉郡内が完成し、東京~相馬間が完全に結ばれ、数年後には仙台ともつながる予定だ。太平洋に面していくつかの漁港と発電所のための港湾がある。首都圏までの大規模な送電線があることも他に見られない特徴と言える。人口が少ないため、地産地消型の産業ではなく移出型の産業に適している。

このような条件に適した産業が原発と火発であり、実際、双葉郡には首都圏のための電源基地として二つの原発サイトと広野火力があったのである。(さらに双葉郡に隣接する地域には相馬火力、原町火力、勿来火力などがある)

ここから容易に想像出来ることは、火力発電所の増設である。原発2サイト10基を代替する火力発電所の建設は十分に可能であり、首都圏の電源確保の観点からも建設が望ましい。東北電力が原発用に確保していたが、このたび建設計画を撤回した浪江小高地点の土地もある。廃炉によって遊休設備となる首都圏までの送電線も活用できるので経済的メリットは大きい。

火力発電所が出来れば、電源三法による地元への交付金も期待出来る。温暖化対策も考えると従来の石炭火力ではなく、LNGやシェールガスによる最新鋭の高効率の火力発電所とすべきであり、このための燃料の受入施設、貯蔵施設、パイプラインなども併設となる。平坦な土地、風の強い海岸沿い、豊かな日照、少ない人口密度、国定公園ではない、とくれば、双葉郡は風力やソーラーなど自然エネルギーによる発電基地にも最適な場所である。青森県の下北半島には石油備蓄基地があり、海岸には風車が林立しているが、福島県の双葉郡は青森よりは消費地にも近く、より条件が良い。 

福島第二原発の沖合には現在国内初で世界最大の浮体式風力発電1基が完成したばかりであるが、双葉郡の沿岸の地上式も有望だ。人口が少なければ騒音の問題なども少ない。火力発電所は、原発と同様に定期検査があるがそれに必要な技術者、作業者は廃炉関連とプールすることが可能だ。かつて私がいた茨城県の東海原発では、構内の作業を請け負っていた那珂湊(東海村の南にある)の企業が、一般廃棄物のリサイクル業も行なっていた。原発の定期検査中、リサイクル業は廃棄物の受入のみとし、作業者を東海原発に回すことでピーク人数の確保と被ばく量の分散を図っていた。今後、双葉郡内でも、このようなことが、廃炉、除染、廃棄物管理、火力発電所などの間で十分に出来ると考える。

地元の土地のほとんどは、今もここから避難した人たちが所有するものだ。東京電力は不動産の賠償が行われた後も、所有権はそのままであり、住民はこの土地を国や企業に貸し賃借料を受け取ることが出来る。そうであればさまざまな土地活用に対する住民も承諾も得やすい。

さまざまな地域復興のための企業誘致案があることは承知しているが、今までの経緯や地理的条件などを勘案すると、双葉郡が廃炉ビジネスと電源基地としての地位を確立し、これまで以上に財政的に豊かで住民サービスの良い地域として復活するのがもっとも現実的であり、国土の使い方として望ましい。

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